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StoryWriter

暑い。暑すぎる。

梅雨が明けたのか、猛暑日がこんなにも続くと、いつも食べ物のことで頭がいっぱいの私もつい、冷たい飲み物を楽しみたくなる。

カランコロンと音を立てるカフェオレも、スカッとする辛口ジンジャエールも、アイスがのったクリームソーダも、どれも最高。

「とりあえず、生で」

なんとなく言ってしまいがちなこの台詞も

「生を、生を、お願いします !!!!!」

と全力で言いたくなるくらい、この時期の生ビールは特においしい。

そして、この季節になると飲みたくなる忘れられない梅ジュースがある。

あれは、たしか数年前の夏。

都内からロケバスに乗り、2時間ほど車を走らせて向かった、とあるお宅でのこと。

撮影は楽しく進んだが、ジリジリと日差しが降り注ぐなか、太陽を長時間外で浴び続けた身体は、少しぐったり。

無事撮影も終わり「本日はありがとうございましたー!」と、お世話になったお家の方に挨拶したら奥の方から

「暑かったでしょう。よかったら梅ジュース飲んで〜」

と、私とスタッフさんの分をお盆に乗せ、優しい笑顔で運んできてくれた。

透明のグラスに、まあるい梅。そこに炭酸が注がれ、耳をすませばまだシュワシュワ〜と音が聞こえてきそうなくらい、キラキラの泡が浮かんでいた。

「そ、そんな〜。いいんですか?」

お言葉に甘えて、まずは一口。

「……ん〜 !!!」

シュワっとしたなかにほんのりと感じる酸味と甘さが、身体に染み渡っていく。

そして、なかなかの存在感を放つ大きな梅を一口。すると、あまりの美味しさに、一緒に食べたスタッフさんと目を合わせて笑ってしまった。

撮影の疲れはどこへやら。

「これ、どうやって作るんですか !?」

興奮気味に質問する私に

「すっごく簡単よ〜。梅シロップを炭酸で割っただけ。まずね、梅を冷凍するのがポイント。そして……」

と作り方を教えてくれた。

「う、梅シロップ? 梅を冷凍 !?」

気になりすぎる話の掴みに心奪われ、細かいポイントを聞き逃さないように集中して聞いていたら

「あ、ちょっと待っててね」

とお家の中まで入っていき

「これよかったら、レシピ。持って帰って」

と手書きのレシピを渡してくれた。

こんなにもうれしいプレゼントはあるだろうか。

ありがたくいただき、鞄に忍ばせて、家まで帰った。

それからスーパーで梅を見るたびに、この出来事を思い出して手を伸ばすが、「そういえば、ちょうどいい瓶がないなぁ」「ちゃんと美味しくできるかなぁ」と、言い訳ばかり並べて、作れていなかった。

が、しかし。

今年こそ!と思い立ち、先日、人生で初めての梅シロップ作りに挑戦することに。

レシピの材料には

梅(500g)
砂糖(400g)
水(400cc)

と書いてあったので、梅を買いにスーパーへ。

青梅ではなく、黄色に少し赤が出てる梅だったので、似てるのを見つけて、購入。

まず、梅を綺麗に洗って、水分をしっかり拭き取ってから、冷凍させる。

こうすることによって細胞が壊れ、すぐにエキスが出るため、短い時間で作れるらしい。

なんと。せっかちのわたしには、うれしいレシピ(常温では保存できないので注意)。

そして、鍋に水と砂糖を入れ火にかけ、沸騰したら凍った梅を加える。2〜3分火にかけ、粗熱がとれたら、煮沸させた瓶に入れて、冷蔵庫に入れたら完成!

もうできちゃった !!

と、喜びも束の間。

なんだかシロップが想像した色と違う。

「……あ! てんさい糖を使ったからだ!」

と、すぐにほんのり茶色く色づいた原因が分かった。

白いお砂糖はもう何年も買っていないのと、てんさい糖を買ったときのパッケージに“お腹に優しい砂糖”と書いてあったので、わざわざ新しく買わなくても、まぁ大丈夫だろう…とあまり深く考えず作ってみたが、やっぱり白いお砂糖の方が見た目はよかったかもと、少し反省。

「まぁ、でも肝心なのは、味よね。」

と、ドキドキしながら3日間ほど待ち、炭酸で割って飲んでみることに。

すると、

「!!」

我ながらその美味しさに、にんまり。

あの忘れられない梅ジュースの味には届かないけど、ヘタを黙々ととったり、待ってるあいだコロコロと蜜を回したり、そんな過程も含めて、初めての梅仕事。いい経験でした。

ちなみに「ビールと割っても美味しい」という情報を見つけ、お家でカクテルを作ったり、「豆乳を加えると、タンパク質が反応してとろみがつき、ラッシーみたいになる」という情報も見つけ、真似してみたら本当にラッシーみたいになって、新しい発見も、これまた楽しい。

調べてみると、梅シロップもいろんな作り方が無限に出てきて、はちみつで作るレシピも、火にかけず、常温でじっくり作るやり方も気になってくる。

来年は、どんな作り方をしようかな。

あの時メモを渡してくれたお母さん、元気かな。

連絡先も何も知らないけど、あのお母さんの優しい笑顔を思い出して、毎年梅ジュースを作ろう。

岡田ロビン翔子(おかだ・ろびん・しょうこ)

1993年生まれ。2006年から2018年8月2日の解散まで、チャオ ベッラ チンクエッティ(THEポッシボーから改名)のリーダーとして活動。 頭の回転の良さからくるトーク力には定評があった。解散後はラジオDJを中心に、MC、モデル、自身のアコースティックライブ「ロン喫茶」など、マルチに活動中。 様々なジャンルに興味を持ち、多方面にアンテナを張りめぐらせ、スキルアップのために努力を欠かさない向上心の持ち主。

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