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StoryWriter

「アウトドア派」か「インドア派」か問われたら、「たぶん、アウトドア派」と答える。

昔から休みの日に一日中お家にいることはほとんどなく、誰にも会わなくても、行く場所を決めていなくても、「一日一万歩歩く」と決め、街のあらゆるところに自分だけの秘密基地をこっそり作るのが趣味だ(どんな趣味だよ)。

かといって、自ら山登りをしたりキャンプをしたりするほどの行動力はないし、私はまったりゆったりお散歩をするのが好き(おばあちゃん)。

だから、たぶん、アウトドア派。

そんななか、テレビで「チェアリング」が流行ってるという特集を見て、俄然興味が湧いた。

チェアリングとは、簡単に言うとアウトドア用の折りたたみ椅子を持って出かけ、自分好みの場所を見つけてくつろぐこと。

たしかに、街を歩いていて「あぁ〜ここに椅子を置いてのんびりできたらなぁ」と妄想することも、しばしば。

いつか欲しいと頭で思い描いていたら、つい先日、運命的にそんな妄想にぴったりの“椅子”に出会ってしまった。

購入後、夕陽が綺麗な時間やお風呂上がりビールを楽しむため、せっせっとベランダに運び秋の空気を味わっていたが、つい先日、お気に入りの公園に持っていくことに。

誰もいない場所を見つけ、どきどきしながら広げる。素敵な木の下に置いてみたり、金木犀の香りに包まれる場所に置いてみたり。

簡易的な椅子に比べたら少し重さはあるが、広げるのは簡単で、慣れると10秒以内に完成するからうれしい。

しかも、この椅子のいいところは、背もたれが三段階に調節できるので、ご飯を食べるときは直角気味に、本を読むときはやや下げて、景色を楽しみたいときは、最大限に倒せることだ。

これが、人生で味わったことのない、快感(背もたれが高いので、頭もすっぽり包み込んでくれて、なんとも言えない安心感)。

ぷちピクニック気分を楽しんでると、この特等席で何か食べたくなる。

いちばんはじめは、準備する時間がなかったので家にあるもので楽しむことにした。小さめのおにぎりと頂き物のマスカットを少し。冷凍していたパンをトーストしてジャムを持っていき、その場で塗って食べる。

前日から計画を立てていたら、もう少しいろいろと張り切ってお弁当箱に詰めた気もするが、急遽決めた公園行きだからこそ許される雑さというか、自由さがとても心地よかったし、外で食べるごはんはやっぱり特別においしかった。

それから数日。

「次行くときは何をつくろうかな」と、ふと頭に浮かんだ。

「そうだ。前に本で読んで気になってた、きゅうりサンドを作ってみよう」

そう思い立ち、気づいたらスーパーできゅうりを買っていた。

なんてったって、きゅうりサンドというメニュー名がついてるんだから、きゅうりがないとはじまらない。夏野菜だけど1年中スーパーにいてくれる頼もしい存在。だけどいつも献立の端っこの方にいるきゅうり。

「今日だけは、君が主役だよ!!!!」

と、なかなかうざめなテンションできゅうりに語りかけ、まずは本に書いてあったレシピ通り、縦半分に切ってタネを取る。

「ん? タネを取る!?」

きゅうりにタネあったんだ〜。よく見たことなかったな〜と、マジマジと見ながら素直にスプーンで取る。そして、ひたすら斜めに薄切り!

いつもは大きく切って味噌につけたり、包丁の背で潰して梅と鰹節と和えてみたり、大胆に食べることが多かったので、こんなにもうすーく、丁寧に大量のきゅうりを切る日がくるとは。

でもここで問題が、レシピの半分の量で作ってるのに、きゅうり5本をひたすらに薄切りにしてると余計な力が入っているのか、手が疲れる。

「私はなんでこんなに大量のきゅうりを切っているんだろう」「やはりスライサーを使うべきだったか」と後悔してきた。

でもせっかく切ったんだからと、パンにバターを塗って、塩もみしたきゅうり達を端っこの方まで並べる。

が、しかし。これもきれいに並べようと思うとなかなかの集中力を使う。

「はて、私はなんできゅうりサンドをつくろうと思ったんだろう」

と、またまた後悔する始末である。

そして、出来上がったきゅうりサンドを一口。

バターを塗った甘いパンのその先に、ほんのりと塩気のきいたきゅうりがポリポリと音を立て絶妙なハーモニーを奏でてきた。私のさっきまでの後悔はどこへやら。新しい味と食感に、自分自身に大感謝。

これをつくって、今度はどこに行こう。

食にばっかり気を取られて肝心の椅子を持っていくのを忘れてしまいそうだけど、食べることのほうが大切だから、まぁいいか。

岡田ロビン翔子(おかだ・ろびん・しょうこ)

1993年生まれ。2006年から2018年8月2日の解散まで、チャオ ベッラ チンクエッティ(THEポッシボーから改名)のリーダーとして活動。 頭の回転の良さからくるトーク力には定評があった。解散後はラジオDJを中心に、MC、モデル、自身のアコースティックライブ「ロン喫茶」など、マルチに活動中。 様々なジャンルに興味を持ち、多方面にアンテナを張りめぐらせ、スキルアップのために努力を欠かさない向上心の持ち主。

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