湯気って、人を幸せにしてくれる。
改めてそう思ったのは、京都の鴨川沿いで食事をしたときだった。
今年の10月中旬。
「京都はもう、紅葉してるらしい!」
そう興奮気味に伝えてきた母の言葉を信じ、急遽決まったおよそ8年ぶりの京都親子旅行。
着いた瞬間、
「こ、こうよう……?」
という感じで、ほぼ緑一色でしたが、それまた思い出(母、CMを見てもう紅葉してると思った様子)。
昼間は真夏のような暖かい日差しに包まれながら、少しひんやりとした優しい風に背中を押され、足取り軽く街をお散歩。
夜はせっかくだからと、川床でご飯を食べることにした。
鴨川沿いには私の名前、ロビンという名前の和食屋さんがある。正確には「先斗町 魯ビン」
母と行く旅行だもの。産まれたときにつけてくれた名前のお店に行くのもいいなぁも、足を運ぶことに。
お店の方に聞くと、普段は9月までしか解放していない川床だが、今年は暑い日が続いていたので、特別に10月まで開けてるとのこと。
何も調べずにふらりと来てしまった私たち。
「ラッキー!」
と、ビールで乾杯し、夕陽を眺めていたら突然冷たい風が襲ってきた。
昼間との気温差が激しく、一気に体が冷え、お店の方にブランケットを持ってきてもらうことに。
「……鍋でも食べる?」
母が大好物だという鴨鍋を注文し、目の前で火をつけもらい、待つこと10分。
「そろそろかな?」
蓋を開けると、期待してた姿とは真逆な、静寂な鍋たち。そう、風が強く、火が弱まってしまったのか、なかなか具材に火が通りずらい様子。
体はどんどん寒くなり、普段あまり頼まない熱燗を飲みながら待つことにした。空腹のせいか、いつもよりお酒が回るのが早い。
ほろ酔いになりながら、さらに待つこと10分。再び蓋を開けると、ふわっと、あたたかい湯気が私たちを包んだ。
予想外に寒い川床ご飯になったが、寒いときに、温かいものを食べられる。これ以上の幸せがどこにあるのか。そう本気で思ってしまうほど体に染み渡った。
(ちなみに、私たちの後ろの席にいた外国のお客さんは、半袖半ズボンでごくごく生ビールを飲んでいたけど)
まだ冬を迎えていないが、この日以来「野菜も摂れて、あたたかくて、美味しいから」という理由で我が家では鍋の回数が増えたのだが、最近鍋以外で、湯気で盛り上がる瞬間がある。
そう、ずっと欲しかったせいろ蒸しを、ついに購入したのだ!!
「なんだか難しそう」
「いろんな種類があるから何を買っていいかわからない」
そんな理由で1年以上悩んでいたが、どうせなら専門店に行ってお店の人に直接聞こう。
そう思い立った日、一人で横浜の中華街に行き、せいろ専門店「照宝」さんに足を運んだ。
まず悩むのが、大きさ。
かわいらしい15cmから、大家族でも使えそうな30cmとたくさんあったが、用途を伝え、話し合いを重ねた結果、21cmを2段買うことに。
そして次に悩むのが、素材。
竹にするか、杉にするか問題。
お店の人に聞くと
「どっちも美味しく蒸せますよ〜」
と笑顔で言われ迷ったが、竹は杉よりも硬いので耐久性があり、杉は蒸してるときも木の香りに包まれるとのこと(食材に木の香りが移る心配はなし!)。
少し迷ったが、杉にすることに。
その日以来、せいろが大活躍。
じゃがいもや焼売はもちろん、パン屋さんで買ったベーグルなんかを温め直すだけで、もうフワッフワのホワッホワ。なんといっても、蓋を開ける瞬間がちょっとしたイベント感覚でワクワクする。
適当にキャベツをポイポイ。もやしを入れて、豚バラを入れて蒸したらそれだけで絶品。そして、油を使わないので炒めるよりも、ヘルシー。うれしー。
今年の冬は、湯気に癒されることにする。
ちなみに、初めて行って大好きになり、早くもう一度味わいたいと思っているズバリ「湯気」というお店の話はまた今度。
岡田ロビン翔子(おかだ・ろびん・しょうこ)
1993年生まれ。2006年から2018年8月2日の解散まで、チャオ ベッラ チンクエッティ(THEポッシボーから改名)のリーダーとして活動。 頭の回転の良さからくるトーク力には定評があった。解散後はラジオDJを中心に、MC、モデル、自身のアコースティックライブ「ロン喫茶」など、マルチに活動中。 様々なジャンルに興味を持ち、多方面にアンテナを張りめぐらせ、スキルアップのために努力を欠かさない向上心の持ち主。
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