【連載】ロビンの青い卵より 最終回「初めての一人旅〜恋する金沢〜」

冬の訪れは突然。
冷え込んだ身体を温めようと、カウンターでおでんを頬張っていると、ふいに声をかけられる。

「おひとりですか？」

そう、「人生のやりたいことリスト」に入っていた「一人旅」をしてきたのだ。

いつかがいつかのままで終わらないよう、思い立ったその日のうちに宿を予約し、翌朝には出発。目的地は、ずっと行ってみたかった金沢。

急に決めたので計画はほぼゼロ。新幹線に揺られながら、ぼんやり窓の外を眺めていると、富士山が見えてきた。

「あぁ、あの頂上まで登ったなぁ」

その時の記憶が鮮明に蘇り、思わずニヤニヤ（怪しい）。

好きな本を読んだり、今興味があることの勉強をしたり、ウトウトしているうちに、気づけば金沢到着。

まずは腹ごしらえ。駅近くの評判のいいお寿司屋さんでランチ。その美味しさに、この時点で旅の満足度は早くもピークに達する（しかもリーズナブル！）。

食後はぶらりと散歩。知らない街を歩くのはいつだって心が躍る。そんな中、外国人ご夫婦が迷っている様子を発見。英会話猛勉強中の私、「ここは英語を話すチャーンス！」と意気込み、鼻息荒く、

「Can I help you？」

と声をかけたものの、想像以上の質問攻めに、私がヘルプミー状態。

初めての場所で土地勘が無いため、ネット検索に頼りなんとか対応したが、思わず話しかけてしまう癖は完全に母譲りだなぁ、と内心苦笑い。

一泊二日の旅で一番楽しみにしていたのは夜ごはん。

ホテル近くのおでん屋さんを事前に予約しておいた。暖簾をくぐると店内は早くも満席。カウンターに座るとテレビで野球中継が流れ、店員さんの親しげな声が響く。

「なににするー？」と実家に帰ってきたかのような安心感につい頬が緩む。キラキラ輝くおでんたちに目移りしながら、大根、ぎんなん、タコ、貝を注文。

しみしみの大根をひと口、冷えた体にじんわり染み渡る。気づけば滞在時間15分ほどでビールとおでんを平らげていたけれど、ハシゴする予定を思い出し、お店を後に。

次に向かったのは、昼間訪れた家具屋さんで教えてもらった地元の人に愛されるお店。隠れ家のような雰囲気で、広々と落ち着いた店内には家族経営の温かさが漂っていた。

続きまして、ハイボールと車麩、たけのこ、ふきを注文。

はい。そうです。まさかの、おでん屋さんハシゴです（その日はそんな気分だった！）。

優しい笑顔で運ばれてきたおでんは、身体だけでなく心まで溶かしてくれるような味。先ほどのお店と味わいが異なり、それもまた楽しい。地元の人が教えてくれるお店にハズレはなし！

優しい出汁を堪能していると、隣に座っていた二人組から声をかけられる。地元の方と、大阪から出張で来ていた方だった。

地元の方は「僕、一人旅大好きなんですよ」と、韓国やハワイでの一人旅の話をテンポ良く話してくれる。その方は半年前に体調を崩してから毎朝5時に起きて運動を続けており、今は絶好調だそう。なんともパワーに溢れた方で、私まで元気をもらってしまった。

名前も年齢も職業も知らないあの方。元気にしているかなぁ、とたまに思い出す。

最後に訪れたのは、これまた地元の方に教わった新しくオープンしたばかりの「ニューロン」というお店。締めの白ワインにメロンとモッツァレラ。そしてデザートのチーズケーキを頂く。

半年前に東京から金沢に引っ越したというスタッフの方との楽しいお喋りと、帰り際、レシートに添えられた手書きのメモに癒される。

3軒をハシゴするのも人生初。それぞれ1杯ずつだったけれど、忘れられない味ばかりだった。

そのほかにも、金沢21世紀美術館や川沿いのガラス工房、気になっていた喫茶店、地元の方に教えてもらったカフェなど、限られた時間でたっぷり堪能。

書きたいことはまだまだありますが、その話はまたの機会に。

……と言いたいところですが、この連載も今回で最後となりました。

「好きなことを書いていいよ」と声をかけていただき、自由に書いたこの連載。
書くことで、今まで気づかなかった小さな感情や想いに出会うことができました。
「幸せとは探すものじゃなく、気づくこと」って、誰かが言っていた。

「ロビンちゃんの文章が好き」

そんな言葉をいただけたことも、とても嬉しく、励みになりました。

最後になりますが、ここまで読んでくださった皆さま、素敵な機会を与えてくれたスタッフの皆さま、本当にありがとうございました。

いつか、どこかで、続きのお話を。

それでは、また！