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【LIVE REPORT】浮と松井文、築100年のビルの一室で歌う──ベーグル屋発の音楽イベント<after bake>初めての夜

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取材&文:西澤裕郎
写真:堀清香

ベーグル専門店「SONOHI BAGEL」を運営する「合同会社その日」が主催する音楽イベント<after bake Vol.01>が2026年9月27日(日)、東京・本郷三丁目のECHISO204にて開催された。記念すべき初回の出演者は、米山ミサによるソロプロジェクト・浮と、シンガー・ソングライターの松井文の2組。

会場のECHISO204は、本郷通り沿いに建つエチソウビルの2階にある一室。同ビルは糸物商・越惣商店の自社ビルとして大正期に建てられた鉄筋コンクリート造3階建ての建物で、2023年に国の登録有形文化財となっている。窓上のアーチや頂部の装飾を残した外観は、本郷三丁目交差点のそばで約100年、通りの風景の一部であり続けてきた。

その204号室に並べられた椅子は30席ほど。演者と客席の間に、距離はほとんどない。機材はマイクとスピーカーを中心とした最小限のもので、高い天井に歌とギターの音がそのまま上っていく。

主催の川瀬拓

開演前、主催の川瀬拓が客席の前に立つ。同じビルの1階で店を営んでいること、大正期に建てられたこの古いビルがもともと好きで、ここで何かイベントをやりたいと考えて企画したことを説明。「天井が高くて独特の雰囲気があるので、なるべくその雰囲気が出たらと思って」と話し、今後も続けていきたいと述べて、1組目の松井文を呼び込んだ。

松井文

ギターを抱えた松井は、開演前の場内に、のろしレコードの仲間である折坂悠太の曲が流れていたことを受けて「折坂悠太と申します」と無邪気におどけると、「松井文です」と言い直して歌い始めた。自作曲に加えて、昨年カバー作品を発表した下田逸郎の「小さな舟」も披露。曲が終わるたびにひと言ふた言を挟み、また次の曲に入っていく。

序盤のMCで話題にしたのは、共演の浮のことだった。2人が一緒にやるのは久しぶりで、かつては沖縄で対バンをしたり、互いのホームと呼べる店に呼び合ったりしたという。

この日の松井が歌ったのは、どこか遠くへ行きたいという気持ちや、知らない街で見上げる月、会いたい人に会えない日々、調子の出ない一日のことなど。張りつめた空気にはならず、客席は椅子に体を預けて聴いている。

終盤のMCでは、主催への感謝を伝えたうえで店名に触れた。「『SONOHI』っていい名前のお店だなと思って。そういう曲あるかなって、今日歌いながら考えてたんですけど、思いつきました」。

話はそのまま自身の暮らしに及んだ。ライブのない日はほとんど家にいること。子どもが生まれてからは大人と話したくて仕方がなく、外に出ると陽気になってしまうこと。「(子どもが)毎日これができるようになったり、あれができるようになったりして、あっという間に過ぎていく。何もできてないなって思うときもたくさんあるんですけど、歌いたいときに歌いに行き、呼ばれたら歌いに行く生活を今も変わらず続けられている」と続けた。

「せっかくなので、これ、生音でちょっと歌ってみてもいいですか」

そう言ってマイクの前を離れ、松井は歌い出した。スピーカーを通さない声とギターが、部屋の広さのまま届く。最後はギターを弾きながら椅子の間を歩き、客席をひと回りして、歌い続けたまま扉の外へ出ていった。「どうもありがとう」の声を残して、松井のステージは幕を閉じた。

浮

転換を挟んで浮が歌い始めると、客席から物音が消えた。30人ほどの観客は身じろぎをせず、弦に触れる指の音や息継ぎまでが聞き取れるようだ。

浮は言葉を多く挟まない。山や水、風、光といった風景を歌う曲を、短い「ありがとうございます」だけでつないでいく。曲が終わるたびに、少し間を置いてから拍手が起こった。

「松井さんとご一緒するの、少しぶりで」と切り出して高田渡の「おなじみの短い手紙」を歌い、そのあとで選曲の理由にあたる話を始めた。毎年4月16日、高田渡の命日に開かれているライブイベント(<高田渡歌まつり>)に、若手として呼ばれたこと。松井は以前からその会に出演していること。

「すごいメンバーなので、他の出演者の皆さんのテーブルにつけなかったんですけど、松井さんが話しかけてくれて。ありがとうって思いました」

後半も同じ静けさのなかで演奏が続いた。最後の曲の前に、浮は客席へ礼を述べた。「たくさんの方にご覧いただいて、ありがとうございます。もっとたくさん続いていくことを願っております」。イベントの初回に向けた言葉を添えて、自身のステージを締めくくった。

浮はそのまま松井を呼び込み、2人並んだ。共演曲について、浮は「家で、お風呂で練習をした」と明かし、松井は「練習してくれてた」と応じる。「自分で歌いながら聴くのが楽しみですね」「まだまだ一緒にやった曲、結構あるので。またこの組み合わせで誰か呼んでください」と、微笑ましいやりとりが続いた。

話は再び高田渡の会に戻った。「(高田渡さんの会にお呼びいただいたことを)誇りに思って生きていきましょう。ね」と松井が言い、浅川マキの「港の彼岸花」へ。2人は交互に歌い継ぎ、最後のフレーズを繰り返して曲を終えた。拍手のなか、初回の「after bake」は終演した。

「after bake」は今後も回を重ねていく予定で、Vol.2にはthe band apartの荒井岳史と木暮栄一の出演が発表されている。


■ライブ情報

after bake Vol.01
日時:2026年9月27日(日)
時間:17:30 OPEN / 18:00 START
会場:ECHISO204
東京都文京区本郷2-39-7 エチソウビル204号室
東京メトロ丸ノ内線 本郷三丁目駅より徒歩2分
出演:
浮
松井文

after bake Vol.02
日時:2026年11月8日(日)
時間:17:30 OPEN / 18:00 START
会場:ECHISO204(旧 珈琲FARO)
東京都文京区本郷2-39-7 エチソウビル204号室
東京メトロ丸ノ内線 本郷三丁目駅より徒歩2分
出演:
荒井岳史 & 木暮栄一(the band apart)

企画・主催:SONOHI BAGEL / 合同会社その日

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