
取材&文:上村彰子
写真:Jumpei Yamada
6EYESは、2002年に名古屋で結成されたポストパンクバンドだ。地元インディーズシーンではその実力を評価されながらも、全国的なブレイクにはなかなか恵まれなかった。しかし2026年1月、音楽バラエティ番組『EIGHT-JAM』にて、川谷絵音が「2025年のマイベスト10曲」の第9位に6EYESの「日本人中年男性」(2025年11月発売)を選出したことをきっかけに、一躍注目を集めることになった。MVに登場する「おっさん」然とした風貌のメンバー、中年男性が抱える悲哀を描きながらも、かすかな希望のようなものを歌い上げる歌詞の強烈な印象。「ヤバい曲がある」と口コミが広がり、多くのリスナーの耳に届いた。
かくいう私も、そのひとりである。初めて6EYESというバンドの存在を知り、そのカミソリのようにギザギザと尖りながらも、耳を離さない独特の音楽性と歌詞に強く惹かれ、ライブに通うようになった。急速に夢中になる一方で、ひとつの疑問も生まれてきた。
フロントマンのツチヤチカらは私と同世代だ。ある程度のキャリアと年齢を重ねたミュージシャンであれば、時折話題になり、地元で安定してライブに集客できれば、それで十分なのではないか。ところが、今年彼らを追いかける中、ますます旺盛になる活動っぷりに驚かされた。「いい歳をしたおっさんたちなのに、いったいこれから、どこへ向かおうとしているのだろう?」と不思議に思ったのだ(大ファンなのに失礼)。
12月には初の東京ワンマンライブを開催する6EYES。その中心人物であるツチヤチカらに、思いもよらぬ追い風を受けたこの2026年と、年齢を重ねてもなお加速し続ける音楽活動のモチベーションについて話を聞いた。
うちも含め「ポストパンク」って言ってるバンドにポストパンクはいないですよ(笑)
──この2026年は『EIGHT-JAM』での紹介で話題になったところから始まりましたよね。あれは想定外のバズりだったんですか?
本当に突然でした。ちょうど去年の年末、メルカリでエフェクターが売れてヤマト運輸に発送しに行ったんですよ。利益なんて2000円くらいで、「自分は何をやってんだか」と思いながら帰り道をとぼとぼと歩いていたんです。そんな時に番組のスタッフから連絡が来たんで、最初は嘘だと思いました。微々たる売上での落胆から、一気に状況が変わった。
今まで俺らって、ミュージシャンからは異常なくらい評価が高かったんです。でも一般のリスナーや業界関係者にはなかなか届かなかった。それって一番よくない状態じゃないですか。同業者ウケだけしているという。でもテレビで紹介してもらったことで、本当に変わりました。ライブに来てくれる人が確実に増えたし、川谷さんには感謝しかないですね。
──それで今年はこのバズりの波に乗って、バンドをガンガン打ち出していこうとか思ったんですか?
もう54なんで、「今やらんと何にもねーな」という気持ちはあります。もちろん今さらメジャーを目指すとかそういう話ではないんですけどね。振り返ると、今までもチャンスみたいなものは何年かに一回くらいはあったんです。大手レコード会社のレーベルからリリースしたこともあったし。それが、昔からアクセル・ローズみたいな、全部ひっくり返してしまうような人に憧れがあって。せっかく人気が出始めても音楽性を変えてしまったり、いいレコーディングをさせてもらったのにそれを全部ナシにして、わざわざ粗い音にやり直したりしてました。

──え、もったいない。うまくいきそうなのをぶち壊すって、それってかなりのあまのじゃくですよね。
20代、30代の頃は、それがロックだ!かっこいい!みたいなのがあったんですけど、そういうの、もういいかなって思ってます。50歳を過ぎて、家族に負担をかけながらバンドを続けてきて、まだあまのじゃくでいるのもなんか違うよなと思ってきて。
自分の中では、バンド活動は「単なる趣味」じゃないとは思ってますけど、家族や世間から見れば、釣りやゴルフに熱中している人と変わらないのかもしれない。そう考えると、やりたいようにやってればいいだろう、という態度ではなく、もっとちゃんと人に届くかどうかを意識してやっていこうと思ってきました。バンドが3人になって、「ポストパンク」って名乗りだしたのも同じような変化の表れです。
──壊す美学を卒業したわけですね。そして、なんで「ポストパンク」って名乗ることにしたんですか?
便利だからです(笑)。言ってみりゃポストパンクって、ザ・フォールやワイヤーの流れから、極端に言えばバナナラマやスタイル・カウンシルまで含められるくらい懐が深いジャンルですよね。それまではバンドの音楽性を固定してなかったんですけど、2022年にアルバム『NVMD,FCkOF』を出した頃に、バンドのふたり(クワヤマヨシタカ(ドラム)/サトウレン(ベース))に「これからはポストパンクって名乗ることに決めた」って言いました。
何でもある店より、「中華料理屋です」って看板を出してる店の方が入りやすいじゃないですか。その上で「中華料理屋だけどパスタもありますよ」の方が伝わりやすいと思うんですよね。あと他に、自分たちを「ポストパンクです!」って名乗ってるバンドっていないなと思って。でも自分たちが言いだしてから、うちもポストパンクです、って言ってるバンドが結構出てきたなと思いましたけどね(笑)。
──「ポストパンク」という看板を掲げてみたことで、何か変わりましたか?
実際に「ポストパンクバンド」と言ってみると、自分たちが思っていた以上に「導線」として機能するんだなと思いました。俺自身は、何だかわからないものや定義されていないものに惹かれるタイプなんですけど、一般の人は違うんだとこの歳になって気づいたんですよ。「何でも作ります」という店より、「中華料理店」と看板が出ている店の方が安心して入れる。音楽も同じなんですね。
ただ、6EYESって基本「ロック」だと思うんですよ。ジョイ・ディヴィジョンやワイヤーやギャング・オブ・フォーとか、いわゆるポストパンクバンドって、クールというか血が通ってないようなところがあるように思うんですけど。6EYESは盛り上がると「血」が出てきてしまう。だから本当は自分たちは、俺の考える「ポストパンク」ではないと思うんですけどね。うちも含め「ポストパンク」って言ってるバンドにポストパンクはいないですよ(笑)。
本当に苦しみを抱えた子どもたちが、ブルーハーツに出会って救われることこそ本筋

──そんな風にジャンルを変えたり、メンバー変更があったりと紆余曲折を経ながらもバンドを続けて20年以上。音楽をやり続けるツチヤさんのモチベーションってなんなんですか?
根本にあるのが、中学2年生での経験なんです。当時、いわゆる日本のメジャー系のロックを聴いていたんですけど、ある日従兄から「チカらくんが聴いてるのは全部ニセモンだ」と言われたんです。愕然としました。その後その従兄が、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやらローリング・ストーンズやら色々な海外バンドが入ったカセットテープをくれました。それを聴いて、「これが本物か!」と衝撃を受け、今まで持っていたCDは全部捨てました。もっと音楽の真実を知りたくなって、古い音楽を掘り始めたんですよね。ピンク・フロイドやキンクス、スモール・フェイセスやガレージパンク。
そこから「本物とは何か」をずっと追い続けてきたんで、20代からしばらく、「俺は音楽をちゃんと勉強してきた」という自負がありました。それで同年代の売れ筋のバンドに対して、「お前たちは偽物だ」と、苦々しい思いを抱えてきました。自分もバンドを始めて、本物の音楽をやって世の中に認めさせたいという気持ちがあって、それがずっと動機になっています。
──中2から中年まで、ずっと従兄のお兄ちゃんからかけられた「ニセモン」の呪いに抗い続けているんですね。そして「中年男性」をテーマにした曲でバズったわけですが、6EYESのターゲットも中年男性なんですか?
この話長くなるけどいいですか(笑)。俺はザ・ブルーハーツに感銘を受けてますけど、ここ15年、反ブルーハーツ主義で、彼らの社会的地位を地にまで落としたいと考えています。実は中学校の同窓会でカラオケに行ってみんなでブルーハーツを歌ったんです。気づくと、当時いじめられてた子は来てなかった。それで考えたんです。
ヒロトやマーシーの言葉って本物で、聖人の言葉に近いレベルだから、どんな人間にも届いちゃうんですよね。本当は同窓会になんて来たくないような重症な傷を負った子たちを救済するためにあるはずなのに、かすり傷程度の陽キャにも好かれてしまう。だから本当に必要な子たちは「ブルハは陽キャの音楽」と嫌悪感を持って、聴けないかもしれない。だったら自分は人から石を投げられようと、反ブルーハーツ主義になり、彼らのCDがブックオフで50円で売られるくらいの地位にまで落としてやろうと。そして、本当に苦しみを抱えた子どもたちが、その50円になったブルーハーツに出会って救われることこそが、ブルーハーツの本筋だと思っています。
──というと、中年たちからブルーハーツを取り上げて、代わりに6EYESをあてがおうと思ったってことですか?
そうです。お前たちの傷はたいしたことないのに、まだブルーハーツを聴くのか。お前らぐらいの中年には、「おっさんは知らないおっさんのことが嫌い」くらいでちょうどいい。大人になってて味方もいないお前たちには俺がいるんだから、こっちを聴け、と言いたいですね。6EYESは人間のかすり傷しか歌いません。「ハーメルンの笛吹き」みたいにおっさんたちをこっちに連れてきて、俺たちは「中年のブルーハーツ」だと名乗りたいぐらいの気持ちでやっています。

──反ブルーハーツ主義、そして日本の中年の意識を改革するハーメルン計画まで考えているとは!! そういった人間の「かすり傷」を歌う6EYESの歌詞は、かなり独特ですよね。
歌詞は、ちょっと冷やかしている部分もあります。SNSでグラビアアイドルに向かって毎朝「おはよう」と言ってるおじさんとか、普通に社会生活もしてるんだろうにと思って。それで「発狂したまま生活出来てる」という歌詞を皮肉で書いたんですけど、歌ってると、まあ自分もそうだなと思ってくるんですよね(笑)。11月リリースの新曲は「頭のいいやつらが世の中をめちゃくちゃにしている」というタイトルなんですが、クレーマーのジジイとか他責の人のことを歌いながら、自分の中にもそういう部分はあるよなと思って。誰かを救おうとか、俺たち一致団結しようという歌詞ではないですね。
──6EYESの歌詞はシニカルで、風刺が効いてますよね。状況の切り取り方が巧みで、歌で映像も浮かんできますけど。何かねらいがあるんですか?
特にSNSで誰もが言語化して吐きだせるようになってから心の問題が大げさになってると思うんですよ。でも「そんなこと誰にでもあんだよ」みたいな気持ちがあります。歌で共感させたいとか、何かを成し遂げようということでなく、歌で状況をポンと出すことで陳腐にさせたいんです。酒の入った席で盛り上がってる中年男女とか、駅でこの世の終わりみたく抱き合ってるカップルとかいるじゃないですか。自分たちはロマンチックなドラマだと思ってるけど、本当によくある話で。6EYESは、そこに水をぶっかけるという感じですね。遠くから無責任にヤジ飛ばしてるのと同じですけどね(笑)。
──ほんとに6EYESは綺麗事とかまったく歌わないのがいいですよね。それなのに「血」が通ったロックになってるのが凄い。百聞は一見にしかずなんでライブを観てもらうのが早いと思います。12月5日の初の東京ワンマンライブに対する意気込みはありますか?
申し訳ないんですが、「曲をたくさんやるよ」しかないです。いつも通りでしかない。1回くらいじゃ何も変わらないじゃないですか。ただ「ワンマンをやる」でしかないんです。普段やらない曲をやったりはする。来てくれた人に「ああよかったな」とは思ってもらえるようにはやる。でも、「命削ってます」みたいなのはないというか、もちろん帰る力は残すじゃないですか。人間が生命を脅かすほどの力を出して命削ってライブやるとかは嘘だと思ってて。健康な人間がライブやったくらいじゃ死ねないです(笑)。でも、全力ではやります!

■ライブ情報

6EYES ONE-MAN LIVE
2026年12月5日(土)@新宿Marble
OPEN 20:00 / START 20:30
前売り¥3000(D別)/ 当日¥3500(D別)
予約 6eyesband@gmail.com
■リリース情報
6EYES
ニューシングル「他人の生活なんて一枚の絵だと思えばいい」
2026年10月20日(火)配信開始
https://linkco.re/9nRAQ07v
Profile
6EYES
2000年初頭に名古屋で結成。
20数年の活動を経て、現在はツチヤチカら(ボーカル/ギター)、クワヤマヨシタカ(ドラム)、サトウレン(ベース)からなる3人組のポストパンクバンド。名古屋を中心に活動しており、ラッパーの呂布カルマが主宰するレーベルJET CITY PEOPLEよりアルバム2枚をリリースするなど精力的に活動。メンバーも平均年齢40歳を超えた事により腹を括って中年男性の悲哀を歌うポストパンクバンドとして活動。2025年10月15日にゆらゆら帝国、OGRE YOU ASSHOLEなどのエンジニアの中村宗一郎のスタジオPEACE MUSICで製作した6曲入りニューアルバム『Vinculo』をリリース。孤独と狂気に取り憑かれた中年男性のメッセージと取れるが、そこには同じ中年男性達からの理解と協力を求める悲痛さもあり、世界でも稀なテーマを扱ったアルバムとなっている。
上村彰子
ライター・翻訳者。東京都浅草出身。カルチャー、教育、マーケティングに関する執筆、音楽・映画関連の翻訳。著書に『お騒がせモリッシーの人生講座』(イースト・プレス)、『大人は知らない 今ない仕事図鑑100』シリーズ(講談社)など。翻訳書に『モリッシー自伝』(イースト・プレス)。最新刊は『ザ・フォールの素晴らしき世界』(国書刊行会)。



