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StoryWriter

皆さんこんにちは。

実は今卒業旅行で1人でマレーシアと台湾をプラプラしております。

マレーシアは兄夫婦が住んでおり訪ねてみたのですが、特に見たいものもなくただ散歩したり面白そうな店があったら入ってみるくらい。マレーシアという国は年間を通して30度前後と気温も高く湿度も高いのですが、ほのぼのとした国でありました。加えてマレー系の人から中華系、その他世界各国から出稼ぎに来ている人も多くて正に多民族国家という感じです。だからどこでも色々な国の物が食べられるし、街中の看板も色々な言語が書いてあって面白いなあと。言語や国際関係・事情を主に学ぶ大学の人間として本当に興味を惹かれました。

僕自身は日本が住みにくい国だとは思いませんが、少なくとも多種多様な思想やスタイルを受け入れられる国ではないと思っていたので、どうにかもう少し寛容になれればいいなあと思います。

以前紹介した遠藤周作氏の「沈黙」という僕が一番好きな作品では、鎖国下の日本で禁教令を出して教徒やその布教を弾圧してキリスト教を拒む様子に対して「沼地に草木は育たない」と比喩するシーンがありますが、どんな沼地でも整備して良い土壌にする必要はあるんじゃないかなあとか思ったりしてます。

今日から台湾は高雄という南部の都市に来てますが、ここで僕は何を思うかな。

さて、今回お話ししたいのはかの有名なブランドを取り上げたドキュメンタリー映画「イヴ・サンローラン」です。

イヴ・サンローランという映画は2つあって今回取り上げるのは2010年のドキュメンタリー映画の方です。この映画はサンローランの最高のビジネスパートナーでもあり、プライベートでも同性の恋人として公私共に支え続けてきたピエール・ベルジュが、サンローランの死後に彼と共に集めてきた美術品や芸術品を競売に出すことにするのですが、その準備をしながら彼との人生を振り返るというものになっています。恋人としての関係は1976年に破局を迎えてしまいますが、イヴ・サンローランがディオールでオートクチュール(パリ・クチュール組合の加盟店で注文により縫製される一点物の高級服)のデザイナーを担当していた頃から共に付いてまわり、ブランドとしての「イヴ・サンローラン」を立ち上げて、かの有名なブランドロゴを冠した香水やバッグなどを作りあげるなどビジネスの面ではサンローランの死ぬ間際までブランドを牽引し続けた人です。

今回の映画で特に僕が印象に残ったのはブランドの立ち上げとなる瞬間を語る、ピエール・ベルジュの言葉です。当時イブは既にディオールでコレクションを数回開いていたのですが、ところがアルジェリア戦争が激化した為に運悪く逃れ続けていた兵役に就くことになったのですが、不適合者として病院に収容されました。ディオールの経営者マルセル・ブサックは戦争支持者だった為に、サンローランを恥じてクビにしてしまいます。せっかくデザイナーとして輝かしい道を歩んでいる時にその道を奪われてしまって、普通なら絶望するところだと思います。でもその場面をピエールは、次のように語りました。

ある日、ディオールの幹部に呼ばれた。ブサックの意向により、サンローランは解雇、後任を雇うという。私はこの朗報を”イヴ”に知らせに行った。

ー彼は少し考えてからこう言った。”やるべきことはひとつ”。君と一緒にメゾンを立ち上げよう。

この状況を”朗報”と言い切れるのは、現在の結果があるからなのか、それともはたまた当時から自信があったからなのかは字幕では分かりません(音声もフランス語)。でも少なくとも、そこでサンローランの素早い決断があって、それに嬉しくなり全てを投げ打って彼を支えることを即座に決めたピエール・ベルジュの気持ちがあったからこそ朗報に成り得たのでしょう。

他人の話を聞いているだけなのに、どうして物事の一歩踏み出す瞬間ってこんなにソワソワしちゃうんだろう。今のWACKでのインターンを始めてから、結果如何に関わらず他人が何かを変えようとか一歩踏み出そうとする瞬間ってものすごく尊いものなんじゃないかなって敏感に思うようなりました。人生って狂い始めた時が一番面白いと個人的には思っているのですが、それをできる、もしくはやりたい人って本当に少ないと思います。

そしてサンローランは自分が絶望的な状況になって、普通なら途方にくれる、どうしたらいいんだろうと思ってしまう場面でも、やるべき事はひとつ。と素早く割り切る事ができる人間でした。そして、ピエール・ベルジュも同様に彼の為に生きる事をその場で決められた人。何かを成し遂げられる人って、どんな劣勢の状況でも素早く次の道を決められる人なんだろうなあ、と改めて思いました。なんでも飛び込んでみなきゃなあ……。

僕も何事にも物怖じしないようにしないと。

今週はこの辺で。

また来週、ひとつよしなに。

※「【連載】なにが好きかわからない」は毎週木曜日更新予定です。

エビナコウヘイ(えびな・こうへい)
1993年生まれ、青森県出身。進学を機に上京し、現在は大学で外国語を専攻している。中国での留学などを経て、現在では株式会社WACKで学生インターンをしながら就職活動中。趣味は音楽関係ならなんでも。

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