※2019年7月1日編集部追記
本連載は、メンズ・アイドル「others」(※2019年7月3日にRoyal小生に改名予定)を運営しているプロデューサー、ゴン・チョクによる連載です。これまで、ゴンチョクを含め全員がメンズ・アイドル未経験者で、0からアイドルを学び、ダンス、歌、特典会などを実際に経験する中で成長していく様子を記録してきました。そんな中、「いまメンズ地下アイドル業界で何が起きているのか」(http://plus14.hateblo.jp/entry/2019/03/16/044428)という記事を書いているめりぴょんさんの存在を知り、対談をオファーし話した内容が下記記事となります。メンズ地下アイドル運営をしているゴン・チョクと、お客さんとしてメンズ地下アイドル現場に通っていためりぴょんさんによるそれぞれの実体験を元にした内容であり、メンズ地下アイドル業界すべてを内包して結論づけることを意図したものではないことをご了承ください。
年を取ると1週間が非常に早いですね。
学生時代あんなに早く終わって欲しかった1日が今は何とも愛おしい。
それは置いておくとして。
どうも、ゴン・チョクです。
この間も書かせて頂いたのですが、先日めりぴょんさんと対談させて頂きまして、今回から3回に分けて模様をお届けさせて頂きます!
メンズ地下アイドルの本質というか、そんな感じのお話しです。
是非読んでみて下さい。
メン地下のオタクって超絶利己主義なんですよ
──先日行ったインタビュー(「髪の毛より大切なものを探しに」vol20)で、ゴン・チョクさんは、それまで培ってきた女性地下アイドルでの常識が、メンズ地下アイドル(以下、メン地下)では通用しない苦悩を話してくれました。例えば、女性アイドルの現場では楽曲でお客さんが盛り上がるけれど、メン地下アイドル現場ではライヴ以上に特典会の接触の方が熱意を持って参加するお客さんが多いなど、やっていることが響いていないことに気づいたと。
ゴン・チョク:そう、それもあるし……。すごい閉鎖された空間だから、別に誰もメン地下の世界を広げようと思っていないし、もしかしたら演者側さえも動員を増やして人気になりたいと思っていないんじゃないかなっていう。
めりぴょん:メン地下のオタクって超絶利己主義なんですよ。接触にお金を使えば使っていくほど自分が良い思いすることが最優先なので、会場のキャパシティが大きくなって自分が最前列にいられないのが嫌だと思うんですよ。以前ブログでLIQUIDROOMでTRANPがライヴをすることについての記事を書いたんですけど、ファンの感動はそんなに無くて。それより大きい会場だから、後ろにいっぱい人がいてレスを横取りされたら嫌だっていう気持ちの方が強くある。
ゴン・チョク:(爆笑)
めりぴょん:それは多分ありますよね? 他のファンの数が多くなってくると自分とメンバーの接触の時間が短くなるので嫌だなと思って更にファンが少ないグループに流れていくっていう。
ゴン・チョク:その流れは見ていて感じる。
めりぴょん:そういう現象があるので、純粋に女性地下アイドルと同じ手法で動員を増やしていきたい、音楽を聴いてもらいたいっていうやり方をすると、それまでお金を使ってたオタクが離れていくわけで。それは辛いですよね(笑)。
ゴン・チョク:その苦しみを味わうことになる。どうやってもお客さんがライトに見に来てくれないんですよ。皆がどうしたいのか分かんないっていうのもあるけど、一生ワンマンライヴができない。ワンマンやっても対バンやってもお客さんの数が一緒っていう。
めりぴょん:ワンマンライヴだから行くっていうお客さんって、女性地下アイドルなら曲がいっぱい聴けるとか、ワンマンだからこそ聴けるレア曲みたいなのがあると思うんですけど。メン地下の場合は、ライヴそのものにそういうお得感っていうのが特に無いんで。
ゴン・チョク:ない(笑)!
──結局は、物販があればメンバーと話せる時間があるんだし別にいいや、みたいな?
めりぴょん:ライヴに対するオタクの感情が非常に軽い。メン地下特有の文化に、ライヴをせずチェキを撮るだけの撮影会があるんですよ。オタクの感情が満たされる比重で言うと、多分その撮影会の方が大きい。で、ワンマンライヴをオタクはあまり喜ばない。なぜかと言うと、お客さんが多いとチェキを撮る時間が短くなるから。ここでも究極的な利己主義が出てくるんで、自分の接触の時間が短くなるのが嫌だっていう。
ゴン・チョク:すごいよね。
──ライヴに対する感情が薄いって話で言うと、ゴン・チョクさんは以前、オリジナル曲って分かったら誰も聴かないで、むしろ出て行っちゃうって言ってましたよね。
ゴン・チョク:対バンに出たとき、知らない曲が流れたら皆「あっ」みたいになって。皆トイレの前とかでおしゃべり。逆に、そこで知ってるカバー曲をやったら、まあ盛り上がってやるくらいの雰囲気に見受けられます。
めりぴょん:あるあるですね。それも、パッと見でイケメンが、自分の知ってる曲を歌い踊っているっていう事実があるだけで、別にothersそのものに興味があるわけじゃない。本質じゃないんで。
ゴン・チョク:確かに。
めりぴょん:女性アイドルのオタクって、盛り上がる現場を見て興味を持ってくれる人もいると思うんです。例えば、天晴れ! 原宿は曲が盛り上がれるっていうイメージもあるから、対バンになると見る人がいっぱいいる。でもメン地下では、ライヴもなんとなく見はするけど、そこで興味を持つって段階に入っていかない。結局、お金を落とすのは接触の段階になってくるんで。
ゴン・チョク:なるほどね。
めりぴょん:接触でお金を落とすからには、メンバーが女性に手慣れている方が、オタクも満足感が得られるじゃないですか。童貞感があると「こっちはお金払ってるのに、なんでお前は気の利いた事の一つも言えないの?」って思われる。
ゴン・チョク:ハイハイ、なるほど。
めりぴょん:そこがたぶん、元ホストとかのアイドルがメン地下の世界で人気になる要因でもあると思うんですけどね。
ゴン・チョクさんの心はたぶんずっと満たされない?
──メン地下ファンってコールとかMIXとかって入れるんですか?
めりぴょん:入れられればするんですけど、なんか気の抜けた感じがないですか?
ゴン・チョク:(笑)。ちょっと語尾が伸びる感じね。あと演者が基本的にコールを誘導する。
めりぴょん:自然発生的にミックスが発生するっていうよりは、演者が煽ってそれにオタクが反応する形で起こっているので。
ゴン・チョク:うんうん、マイクを向けて。グループによってはコール担当みたいな人もいて。
──そういうので盛り上がるんですか?
めりぴょん:ただその盛り上がりって、女性地下アイドルファンの盛り上がりとは違って。基本的にメンズのオタクっていうのは、自分の固定のパーソナルスペースから一切動かずにライヴを見るので、見た目の盛り上がりにはだいぶ欠けるんですよ。それは、ジャニーズとかでもたぶん一緒じゃないですかね。フロアの盛り上がりという観点で見たら、メン地下と女性地下アイドルでは大きな差がある。だから、ゴン・チョクさんが女性地下から参入してきても、心はたぶんずっと満たされない(笑)。
ゴン・チョク:本当に鬱病になるかと思いました。たまに自分の会社のやつとかライヴに呼んで「どうだった?」って聞くと「よく心病まないっすね」って(笑)。
めりぴょん:葬式みたいですよね。
──やっぱりファンのMIXとか声の大きさも、演者側のモチベーションになってくるわけじゃないですか。逆にメンズだと、接触だけ頑張ればいいでしょって思っちゃうんじゃないのかなって。お客さんの多い少ないはモチベーションに繋がらないんですか?
ゴン・チョク:そもそも、女の子のアイドルみたいに客が多いっていう事がほぼ無くて。
めりぴょん:othersとかの規模で人がいっぱいいるっていうのは、多分、代アニLIVEステーションの無銭フェスぐらい…。
ゴン・チョク:もし前の演者の時は人いっぱい居たとしても、俺ら出てきたら誰もいなくなるから。昔うちが出たあるライヴイベントは意識しないと聞こえないくらい、ちっちゃい音でライヴをやっていて。
めりぴょん:あのイベントはボーカルが何言ってるか分からないくらい(笑)。
ゴン・チョク:ほんまに! 何に言ってるか全然分からない(笑)。PAどうなってんの? って。
めりぴょん:草生えるっていうのはああいう状態なんですよ(笑)! オタクも言ってますよ、このグループ何歌ってんのか全く分かんねえなみたいな(笑)。
ゴン・チョク:(爆笑)。会場の後ろの方では、暗闇の中で並行物販しててね。
めりぴょん:それもすごくて。そのイベントでは物販の為にステージの音量を絞っているんです。会話に差し支えない程度の音量に絞ってるんですよ。
──会場や運営も、ライヴより接触を重視しているという。
ゴン・チョク:そうそう。「接触で会話聞こえないんだけど!」って言われちゃったら、それはもう音量下げるしかない。すいませんでしたって(笑)。
めりぴょん:最初は衝撃的でしたね。「え!」っと思って。
ゴン・チョク:初めて行った時に、真ん中より前にいないと音が聞こえなくて。マイクもたぶん最小まで下がってる。本当に聞こえない。凄い。
めりぴょん:あれはもう一周回ってめちゃ面白い。
ゴン・チョク:そのイベントに2days出ていて、1日目出た時にもう面白すぎて。2日目に会社のやつ5人くらい「来い来い来い! すげえぞここ!」って呼んで(笑)。最前にお客さんが荷物を置いて場所取りしてどこかに行くから会場がお花見みたいになってる。
めりぴょん:(爆笑)。そうそう! 本当に! JILL STUARTとかSamantha Vega、MCAのバッグがいっぱい置いてあって。オタクは適宜、取りたい時に荷物を取りに行くんですよ、キンブレとか。ライヴも見ずにトイレの前で溜まっておしゃべりしてる時に「化粧ポーチ取ってくるわ!」って言って、ササッと最前列行って化粧ポーチ取ってトイレ戻ってきて、おかえりーただいまーみたいな(笑)。
何よりも権力が強いのは客っていう
めりぴょん:メン地下あるあるに、荷物の放置にキレる演者っていうのがたまにいるんですよ。なんだっけなあ、前にあるグループのメンバーがフロアの最前に放置してる他のグループのオタクの荷物を勝手に投げてめっちゃ叩かれてたんですよ(笑)。
ゴン・チョク:(笑)
めりぴょん:その論理も、客の方が偉いというか。オタク側の秩序がもうそれで成り立っているから、別に場所取ってもいいじゃんみたいな。逆に秩序があるんですよ。最前管理とかも、オタク内の法律でやっいてるんだからから演者にどうこう言われたくない、お前らがなんか言ってくんじゃねえよっていうくらいの(笑)。
ゴン・チョク:うんうん、なるほどね。
──女性アイドルの男性ファンだったら、演者が場所取りの邪魔な荷物投げたとしても、「そこに置いておく方が悪いだろ」って擁護する他のファンが現れますよね。
ゴン・チョク:「おめえが悪いだろ!」みたいなね。
──メン地下だと、むしろファンが「演者のくせに荷物に手を出してんじゃねえよ」みたいになっちゃうわけですよね。
めりぴょん:うん、最前管理とかに対して言ってくる演者もいるんですけど。そういうのに対して「お前は私の推しでもないのに何を言ってるの?」っていう。
ゴン・チョク:強い(笑)!
──推しに言われるんだったらいいんですか?
めりぴょん:推しだったら言う事聞かないと関係が悪化しちゃうから。さっきの場合だと人間関係が無いわけですよ、そこに。
ゴン・チョク:なるほどねえ。客が男だったら「もうお前帰れ!」とか最前管理とか注意できるのにね。一方メン地下では、ファンの方が立場が上っていう秩序が成り立ってる。だから他の運営は口うるさく言わないんだろうなって思った。だってお客さんがいなくなっちゃうから。っていうのと、根本的に男は女の子が好きだから強く言えない(笑)。嫌われないように、女性客に色々言われても「じゃあ分かった」って言うこと聞いちゃう。
めりぴょん:ファン同士でも推し被りとかで争いは起きますけどね。女性アイドルのオタク同士の争いの熱量が。掲示板で叩き合うとかそういう次元じゃなくて、現場で普通に怒鳴りあったりする(笑)。
ゴン・チョク:(爆笑)
めりぴょん:相手の働いてる風俗を特定して掲示板で晒したりとか……。 憎しみの熱量が強い。パワフルなんですよ(笑)。
ゴン・チョク:確かに強いよね。メン地下の現場は本当にすごい。運営よりもライヴハウスよりも何よりも権力が強いのは客っていう。
めりぴょん:そうですね。お金を使ってるからこそ、大声で不平不満を言えば道理が通るっていうのを皆知ってるんで。オタクに喚き散らかされたことあります?
ゴン・チョク:現場ではないけど、ネット上では「あんな奴いるところには一生行かねえ」みたいな事はよく言われる。
めりぴょん:憎しみの量強いですよね?
ゴン・チョク:強い、パンチが強い。最後の鍵閉めに命をかけてる子が多いの。誰もいなかったから「じゃあもう終わりね〜」って言った後に、「あ! 私も最後に一枚だけ!」って誰か来ると、その前に撮っていた人が「いや私が鍵閉めだったんだけど!」みたいな。いや、知らん知らんって(笑)。
──それを運営に言ってくるんですか?
ゴン・チョク:うん、言われて。で、「申し訳ないけど知らん」って言ったら、次からライヴ来なくなった。
──あー……。
めりぴょん:「帰れ帰れ!」って言えないのは、客をコントロールできないとか、お金をめちゃくちゃ使っているから、お客さんに逃げられるのが怖いからで。客と運営、スタッフのパワーバランスがおかしくなってるんですよ。私も自分の本の中で「メンズ地下アイドルの社会は男尊女卑なのか、究極的な女尊男卑なのかよく分からない」って書いたんですけど。そう書いたのはこういうところです、女性客のパワーが強いんですよね。男尊女卑とか言われたりしますけど、こんなパワフルな女がまだいたのかって思う(笑)。
はい! 第1回目でした! 第1回目でこの文字量。おしゃべり好きすぎやろ。ってなりますよね。そうなんです。私、子供の頃からのおしゃべりクソ野郎なのです。1%の真実と99%の嘘で構成されたお話が大好きです。
私の嗜好は置いておくとして。
メンズ地下のお話しどうでしたでしょうか?
来週、再来週と、あと2回あるので、お楽しみにして頂けると幸いです。
ちなみにですが次回は「対談のメイン、メン地下に流れる2つの源流について〜」です。マジで一読の価値アリです。
ではでは。また来週〜。
https://www.youtube.com/watch?v=zeWrbUD3pn0
ゴン・チョクが運営するothersのMV
■イベント情報
無限の夜。
2019年7月3日(水)新宿レッドノーズ
時間:OPEN 19:00 / START 19:30
入場無料。酒無料。再入場可。ライブ中の撮影可。
出演:others / ROYAL小生
予約:https://leadi.jp/15395
整列順入場
※マネージャーより泥酔したら退場。
※「【連載】ゴン・チョクの「髪の毛より大切なものを探しに」」は毎週金曜日更新予定。
ゴン・チョク
満31歳のおじさん。関西にてプラニメの現場マネージャー、イベント制作などを経て、何でも屋として上京。タレントの送迎、チェキ撮影、音響、ステンレスの溶接などを経験し、このたび株式会社リーディよりメンズ・アイドルをデビューさせることとなった。気になるグループ名は「others」。音無奏翔、山下修、立花類、夢野続輝の4人で構成されており、ゴンチョクを含め全員がメンズ・アイドル未経験者。0からアイドルを学び、ダンス、歌、特典会などを経験する中で成長していくことが期待される。
・ゴン・チョク Twitter
https://twitter.com/yajinokano73
・ROYAL小生 official site
https://others-idol-official.amebaownd.com/
・ROYAL小生 official Twitter
https://twitter.com/others_staff
某哲学塾在学中。ライター、ブロガー。山野萌絵としても活動。若手俳優の元オタクであり、現在はマイナー乙女ゲームのショタの夢女子。個人企画PLUS14を立ち上げ、地獄のオタク女オールジャンルトークライブ〈外道ナイト〉の不定期開催を行っている。現在、日刊サイゾーにて記事を執筆中。