BiSHや豆柴の大群が所属する音楽プロダクションWACKの中で、最もキャリアの長かったGANG PARADE(以下、ギャンパレ)が2つに分裂して生まれたアイドルグループ「GO TO THE BEDS」と「PARADISES」。メンバー衣装には「老」と「若」という文字が入るなどキャリア順に2つに分けられ、コンセプトもまったく違ったグループとしてスタートを切った。
PARADISESは、ギャンパレでキャリアの短い4名――テラシマユウカ、月ノウサギ、ナルハワールド、キラ・メイで構成されたフレッシュなグループだ。2020年5月23日には、WACKの研修生グループWAggから昇格したキラ・メイが加入し本格的に始動した。
第3回目となる個別インタビューは、2020年3月に開催された「WACK合宿オーディション2020」にWAggのメンバーとして参加し、見事昇格を勝ち取り、PARADISESのメンバーとしての活動をスタートさせたキラ・メイ。2月の初ステージから合宿、PARADISESでの活動と、怒涛の4ヶ月について訊いた。
取材&文:西澤裕郎
写真:外林健太
嬉しい気持ちと、申し訳ない気持ちと半分半分ぐらいだった
──活動を始めて、まだ4ヶ月弱くらいしか経っていないんですよね。信じられないくらい、いろいろな出来事が凝縮した日々だったんじゃないですか。
キラ・メイ(以下、メイ) : 本当にあっという間です。むしろ、まだ全然1、2ヶ月しか経ってないぐらいのスピード感で、気がついたら全部がトントントントンと過ぎていた感じです。もう4ヶ月経っていたんだっていうぐらい(笑)。
──初舞台が〈WACK TOUR 2020〉初日、WAggの新メンバーとしてステージに立った女川でした。事前告知なしで、サプライズでステージに登場したわけですけど、今振り返ってみてどうでしたか?
メイ : 死ぬほど緊張していました。最初、WAggのみんなが出ていって、後から私と(同じく新メンバーの)アイナスターが出て行ったんですけど、ずっと足がガクガクで。ライヴ中はいっぱいっぱいだったので、緊張どころじゃなくなったんですけど。1番緊張したのは歩いていく時ですね(笑)。
──あははは。新型コロナウィルスの影響により、初舞台のステージを踏んだあと、数回のライヴをしただけで、出演予定だったライヴが中止になってしまいました。なかなか活動ができていない状況でしたが、WAggの中でも特に親しくしていた人はいますか?
メイ : やっぱりアイナスターですね。同じ時期に入って、同じ状況で、お互いわからないことだらけなので、1番話しやすかったです。ボイトレの行き帰りで、あそこができないって話をしたり、全然関係ない話もしたり、その時間にすごくいっぱい話したなって思います。
──2020年3月22~28日にかけて、所属事務所WACKの合宿型合同オーディション「WACK合同オーディション2020」が開催され、WAggの一員として参加しました。1年前にナルハワールドさんがWAggからGANG PARADEに昇格したり、合宿を経て昇格もありうる中、どんな気持ちで臨んだんでしょう?
メイ : 最初は昇格することよりも、合宿でどれだけ頑張るかという意識でいたんです。初日の面談の時、渡辺(淳之介/WACK代表)さんに「候補生はみんな合格を目指して来ているんだから、お前も昇格を目標にしてやれ」って言われて。候補生のみんなが合格を目標にしている中で、私が昇格以外の目標を持っていたら気持ちの面で負けてしまうなと思って。合宿に参加してから、臨む気持ちや心持ちはちょっと変わりましたね。
──活動1ヶ月半くらいで教える立場になるというのは、なかなかない経験ですもんね。しかも、ほとんどライヴもできていない状況だったから。
メイ : 行くまでは、教えることが不安だったんです。活動歴で考えると、私は候補生に立場が近いので。でも結果的に、一方的に教えるというよりは助け合いながらできたらなと思っていて。2日目の「STUPiD」の振りを考える時、私主体で考えるより、みんなで意見を出し合って、ここはもっとこうしようみたいな感じで、協力して作っていこうということを意識してやっていました。
──自分が先輩だ! みたいな感じじゃなく。
メイ : はい。候補生の子たちがみんな、想定していたよりちゃんとできるというか。むしろ、私ももっと頑張らなきゃという意識にはなりました。
──WAggメンバーとのエピソードで、印象的なことはありましたか。
メイ : 初日と2日目のダンス発表をWAggチームでやったんですけど、最初2位で本当に悔しくて。自分たちは普段、お金をもらってステージに立っているのに、候補生の子たちに負けていたら絶対にダメじゃないですか。だから、練習の時とか、夜寝る時とかに、自分たちの心持ちとか、どうやったら1位を取れるかとか、カメラに映っていないときも、めっちゃ話しました。
──日が経つにつれWAggのメンバーからも脱落者が出てきてしまいました。仲間が脱落していく中、どんな気持ちで合宿に臨んでいたか覚えていますか。
メイ : 敗者復活で脱落してしまったメンバーがスクワットした後、残っているメンバーはマラソンを走っていて。最後、本当にあと曲がり角を曲がるだけのところで転んだんですよ。悔しくて、そこで涙が溢れてきてしまった。戻った時、アイナスターとウタちゃん2人がすごく声をかけてくれて。2人ともスクワットで頑張ったけど落ちてしまって。むしろ私が支える立場でいなきゃいけないのに、すごく励まされてしまった。すごく嬉しい気持ちと、申し訳ない気持ちと半分半分ぐらいだったのを覚えています。
人に好かれるためには、まず自分が好きになろうと思っている
──合宿ではコント審査もありました。メイさんは、豆柴の大群のナオ・オブ・ナオさんと一緒に、あるある探検隊をモチーフにしたネタを長めにやっていました。かなり肝が据わっているなあと思いました。
メイ : ネタが完全に完成したのが、発表のちょっと前ぐらいで。通して練習したのは1回ぐらいなんですよ。ネタが飛ばないか心配しながらやっていたので、言い回しは台本とは違ったと思います(笑)。
──全然そんなふうには思わないぐらい堂々とやっていましたよ。人前で何かをすること自体、動じないんですか?
メイ : いや、結構あがり症です。例えば、授業で当てられて発表するだけで、めっちゃ顔が赤くなるし、パニックになるぐらい苦手で。それとは場所が違うので若干スイッチは入るんですけど、それでもかなり緊張します。
──学校のテストって明確な採点基準があると思うんですけど、合宿オーデでの採点基準は明確にはわからないと思うんですね。そういうルールの中での生活というのは、どんな気持ちで過ごしていたんでしょう。
メイ : 毎日、どうしたらいいんだろうと頭を捻らせて考えていたんですけど分からなくて。だから、やってみてダメって言われたなら、とりあえず変えてみようと思っていて。同じことをしても意味がないじゃないですか。だから、分からなくても、とりあえず変わる意識というか、何かを変えるという姿勢を見せなきゃダメだと思ってやっていました。本当に難しかったです。何を求められているのかを考えるのが。
──WACKオーデでは毎年、「周りにいるスタッフさんに好かれないと、お客さんにも好かれない」ということが候補生に伝えられます。そういう意味で、メイさんはスタッフに対しての挨拶だったり対応を1番気持ちよくしていたと思いました。そこらへんは意識していたんですか?
メイ : 自分が好きじゃないと相手も好いてくれない、というのはずっと思っていることで。人に好かれるためには、まず自分が好きになろうと思っているんです。挨拶も、嫌いな人にしようと思うと「あ、おはようございます……」みたいになっちゃうじゃないですか? だから、まずは人のことを好きになって、好きな人に挨拶しようと思うとすごく楽しくなるので。人を好きになるみたいな部分は合宿中だけじゃなく、ずっとそう思ってやっています。
予想外すぎて、理解が追いつかなかった
──合宿が進み、候補生も少なくなっていく中、もしかしたら昇格できるかもしれない、みたいな気持ちはどこかで湧いてきたりしませんでしたか?
メイ : 1日残るごとに最終日まで近づいていくので、いけるかもしれないという気持ちも浮かぶときはあったんですけど、本当に毎日落ちるかもしれないので油断だけはしないように、私もいつ落ちてもおかしくないんだぞってと思いながらやっていました。
──どこのグループに入りたいとか、そういう願望はありましたか?
メイ : もともとはっきり昇格を目指して合宿に参加していなかったので、どのグループに入りたいという具体的な目標がなくて。入ってほしいと思えるように頑張らないといけないなと思いながらやっていました。
──最初のインタビューの時、活動を通して自分を変えるというよりも、自分らしくいることを大切にしたいと話してくれました。合宿を経て、自分らしくいられたのか、変わった部分があると思うのか、そのあたりはどうでしょう。
メイ : 限界を超えるみたいな部分では、それまでの自分から一皮むけたというか、良くなれた部分はたくさんあると思うんです。でも、苦しい顔を見せすぎると、観ている人もうわーと思っちゃうかなと思って、デスソース入りのご飯が当たっても、楽しそうに見えるようには結構意識していました。
──合宿最終日、合格発表でGANG PARADEに昇格と言われた時はどんな気持ちでしたか?
メイ : 合宿中のダンス審査で、月丿ちゃんと1回もペアを組んでいなかったんです。だから、GANG PARADEの発表がされたとき、私はないかなと思いながら待っていたら名前が呼ばれて。予想外すぎて、理解が追いつかなかったというか。あれ? 呼ばれた? って。たぶん、すごく放心していました(笑)。
──嬉しいという気持ちの前に、放心状態だったと(笑)。
メイ : びっくりが大きくて。だんだんと嬉しさもこみ上げてきたんですけど、最初は「え! 」みたいな感じで、頭がいっぱいでした。
──さらにその後、GANG PARADEがGO TO THE BEDSとPARADISESに分裂することが発表されました。どんな心境だったんでしょう。
メイ : 私はどうしたらいいんだろう…… みたいな感じでした。メンバーごとに左右に分かれて、私はどうするべきなんだろうと思ったんですけど、なんとなく本能でPARADISESのほうに寄って(笑)。
──本能で(笑)。昇格したグループが、いきなり分裂してしまうことに関してはどういうふうに思いましたか。
メイ : 正直、これからどうなるんだろう…… という気持ちはありました。ギャンパレは歴史のあるグループなので、分裂することで、それぞれのグループがどうなっていくのかって。どういうグループかもまだ全然分からなかったし、この先どうしていくんだろうみたいな不安はちょっとありました。
──PARADISESの中でのメンバー間の話はグループ全体のインタビューでも聞いたんですけど、なかなか敬語が抜けないと。そのあたり、距離感は変わってきましたか。
メイ : 近づいたと思います。加入が決まってから一緒にいる時間が増えたので。敬語はなしにしようって決めてからも、敬語で話しちゃうみたいな感じだったので、敬語を言ったらスクワット20回するってことになって(笑)。
──そんなルールができたんですね(笑)。
メイ : 今のところ、私は1回もスクワットをしていないんですけど、初日に月丿さんが「ユユさん」って呼びまくって100回ぐらいスクワットをすることになって(笑)。きつすぎて、途中で15回になりました(笑)。
──あはははは。そこからみんな敬語はなくなってきました?
メイ : かなりなくなってきました。最初の方は、名前に「さん」をつけちゃいそうだから、もはや誰も名前を呼ばないみたいな(笑)。でも最近は、私もナルハちゃんも、「ちゃん」付けで呼べるようになってきました。
──他の3人と少しずつ距離が近づくにつれて、それぞれどんな部分が見えてきたか教えてもらえますか?
メイ : 月丿ちゃんは、合宿前までは全然喋ったことがなくて。すごく真面目な人なのかなと思っていたんですけど、喋ってみると距離感も近いし、いっぱい話してくれるので、いい意味で全然印象が違いました。ユユちゃんは、お披露目のときから顔が似ているとよく言われるんです(笑)。それもあって姉妹感を感じるし、いっぱい話してくれます。ナルハちゃんは、PARADISESの中では1番歴が私と近いじゃないですか。だから、すごくいっぱい話しかけてくれて。みんなが先に話しかけてくれるので、こっちも話しやすくなるというか、すごく嬉しいです。
まずは全部やってみることが大事だなと思う
──カミヤサキさん脱退のニコ生放送も行われました。そこでメイさんの加入式も行われましたが、どんな気持ちで番組に臨んでいたんでしょう。
メイ : すごく緊張していました。私だけじゃなくて、サキさんの大事な日でもあったので、粗相をしないようにというか。最初はサキさんがメインだったので楽しく聞いていたんですけど、自分の番になったら緊張してきて(笑)。
──番組の中で、カミヤサキの歴史を振り返っていったわけですけど、どんなことを思いましたか。
メイ : 年表を見ても分かるんですけど、すごくたくさんのことが起きていて。サキさんの話している姿を見ていて、気持ちがいっぱい伝わってくるというか。サキさんのすごさをあらためて感じました。
──WAggのメンバーもリモートで出演しました。あれがWAggメンバーとの最後の活動になったわけですけど、どうでしたか?
メイ : みんなの顔が画面に出た時、ちょっと安心しました。元気そうでよかったなと思って。
──Twitterで、WAggメンバーに手紙を書いているのをアップしていましたよね。どんなことを手紙に書いたのか、教えてもらえますか。
メイ : 出会った時のこと、合宿の時ここがすごく嬉しかったとか、どういうところが好きとか、どういうところに救われたとか、そういうエピソードを書いて。WAggは卒業するけど、WACKにいることは変わらなので頑張ろうねっていうことを書きました。ワッキーちゃんへの手紙も書いたんですけど、いっぱい気持ちが溢れてきました。合宿中のことを書いたんです。あのときはこうだったねって、想いがいっぱい溢れてきました。
https://twitter.com/KMAY_PARADISES/status/1264183517614764032
──ニコ生中継で、新衣装の袖通しの儀も行いました。
メイ : まだ発表してない衣装だったので、みんなびっくりするかなって気持ちがあったんですけど、みんなの前で衣装を披露して、改めて心が切り替わったというか、これから頑張るぞっていう気持ちになりました。
──番組後に取材させてもらったとき、メイさんは「エースになる」と語ってくれましたよね。
メイ : それぐらいの気持ちで頑張らないと、どんどん落ちていってしまうというか。常にエースを目指す気持ちで頑張ること1番大事だと思っていて。エースは1番実力があって、みんなが認める存在だと思うので。そうなれるために頑張るという意味で目標を立てました。
──現在、アルバムの中から「TWINKLE TWINKLE」と「青い春」が先行配信されています。「青い春」は甘酸っぱい楽曲で、「TWINKLE TWINKLE」はグループを象徴するような疾走感のある楽曲になっていますよね。
メイ : アルバムの中でも特に、PARADISESを表す曲というか。〈私絶対キラメくさ〉っていう歌詞があるんですけど、そこを全部歌わせてもらっていて。そういう部分でも私のイメージをアピールできると思うんです。すごく明るくて夏っぽい感じがするので、PARADISESというグループの代名詞になる曲になると思います。
──PARADISESは、WACKがこれまでやっていなかったグループでのインスタグラム開設や、恋愛バラエティ番組への出演など、新しいことに挑戦しているグループだと思います。PARADISESを今後、どんなグループにしていきたいと思っていますか?
メイ : PARADISESはフレッシュさが出ているグループだと思うんです。「TWINKLE TWINKLE」もフレッシュで夏っぽい感じで明るい曲だし、見ることで元気を出してもらえるグループだなって。今はコロナでみんなの気が滅入ってると思うんですけど、元気になれる曲が揃っているし、そういうグループだと思うので、まずはコロナ明け、一発目どれだけみんなに楽しんでもらえるかが大事だなと思っています。
──グループ初となるフル・アルバム『PARADISES』はどんなアルバムになりそうですか?
メイ : 「TWINKLE TWINKLE」みたいな明るい曲がいっぱいあります。雰囲気もまた違うんですけど、全部すごくいい曲です。フレッシュな感じがすごい出ているので楽しみにしていてください。
──メイさん個人的な夢とか、目標があれば教えてください。
メイ : PARADISESを知ってもらう入り口になってもらうために、私自身、いろいろなことに挑戦していきたいと思っていて。まずは全部やってみることが大事だなと思うんです。その後のことはやってみないと分からないので、やれることがあったら全部やっていくようにしたい。それを通して、いろいろな人に見てもらえたらいいなって思います。
──これまで200kmマラソンなど、いろいろ挑戦してきたグループなので、挑戦に関しては事欠かないのかなと思います(笑)。
メイ : そこに挑戦する覚悟はできています(笑)。
PARADISES PROFILE
テラシマユウカ、月ノウサギ、ナルハワールド、キラ・メイの4人からなるアイドルグループ。読み方は“パラダイセズ”。
2020年3月、所属する音楽事務所WACKが主催するオーディション合宿「WACK合同オーディション2020」最終日に事務所代表の渡辺淳之介より「GANG PARADE」を2つに分ける形で結成がアナウンスされた。
2020年4月1日に同日結成した「GO TO THE BEDS」とのスプリットアルバム『G/P』を発売!!
同年7月22日に初のフルアルバム『PARADISES』をリリース!!