お世話になっております。digる男・ヨコザワカイトです。
「辺境」。それはdiggerの心の中に存在する幻のオアシス。常にここではないどこかを目指し、誰もまだ知らない1枚に辿り着きたい、そんな謎の意志が今日も男たちをレコードショップへと駆り立てます。
分かるようで分からない辺境。なんと、僕の地元にもありました。まさに、灯台下暗しです。しかも、このお店、良質な辺境が揃っているんです。
PHYSICAL STORE
店内に入ると、入り口が一段上がりスリッパが並んでいます。靴を脱いでレコ屋に入ったのは人生初の経験でした(笑)。いきなり「おっ」と期待させるスタートで、靴を脱ぐと気分も涼しく切り替わり、若干digの気合も入ります。
日本では「ウチ」と「ソト」を区別すると良く言われますが、特別なウチに入っていく感覚を足元から感じながらレコード棚に目を移しました。
肝心のレコードのラインアップですが、これは辺境(笑)!
ニューエイジ〜アンビエント〜ワールドミュージック〜良くわからないものまで。ララージの『発光』があったり、Phewの1stがあったり、Guru Guru 『UFO』があったり…といくつか並べてみましたが、その他はほとんど分からないものばかりでした(笑)。
分からないというのは、それだけdigが楽しいということなわけで。思い切って言ってしまうともはや、困惑するほどの分からなさ。そこまで店内は広くないのですが、品数が足りないと思うことは一切なく、むしろ“時間が足りない”と思うほど。
しかも状態が良い盤ばかり並んでいます。試聴もお気軽にどうぞと言ってくださり、いくつか聴かせていただきましたが、その間店内のスピーカーの音量を下げてくださるという気遣いも。なんて良いお店なんだ…
店内にはレコードだけではなく、Tシャツなどのアパレル、アート、本/古本なども置いてありました。お店で使われていたハンドメイドのスピーカーも売り物のようでした。オーガニックにもこだわっているとのこと。
というわけで、今回迷った末に持ち帰ったのがこちら。
Thierry Fervant『Seasons of Life』
これは、このお店じゃないと出会わないでしょう(笑)。スイスのシンセ奏者/プロデューサーThierry Fervantの82年作の1枚。
本作は、贅沢なまでのシンセサイザーミュージック。左右を巡回するシンセベースに音場の広いシンセが幾重にも重なり、噛めば噛むほどいいなあと思える1枚。とにかく、ずっと聴いていたいシンセが十分に鳴り響いています。
ジャケット裏面には使用したシンセの名前も載っていました。Roland modular 700(System 700のことでしょうか?)、prophet 10、Polymoogなど往年の名機/当時の最新鋭の機材の数々。音を楽しむという意味でも隅々まで楽しめるアルバムとなっています。
解説には「The Seasons of Life start before the Before and continue after the After.(このアルバムは、以前の前から始まり、以降の後にも続きます。)」とありましたが、不変的なストーリーを目指して作られたのでしょう。曲はかなり壮大な物語を描いており大雑把といえば大雑把なのですが、余計なことを考えずに良い音に集中できます。プログレ好きにもオススメできる1枚でしょう。
ちなみに、調べてみると、スイスはプログレの穴場らしくいくつかバンドの名前がヒットしました。
スイス、今度からチェックするようにします!
そして、何よりこのギョッとするアルバムジャケットですよ。これは、買わざるを得ないでしょう(笑)。
聴き終わり部屋に飾って、「ああ、買ってよかったあ」と改めて思うのでした。
とにかく、こんな出会いを作ってくれたPHYSICAL STOREには感謝です。これからも地元の辺境、行かせていただきます!
気になった方は、めっちゃオススメなので、是非足を運んでみてください! 下井草駅(西武新宿線)南口より徒歩3~4分です。荻窪から歩くならレコード店『月光社』に寄ってからでもよいですね。Webストアもありますので、まずはそのチョイスを覗いてみてください!
PHYSICAL STORE
営業時間 15:00~21:00
定休日 毎週木曜日
※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。
1997年生まれ、千葉県出身。大学では社会学を専攻している。StoryWriterで連載を担当しながら就職活動中、そして迷走中。最近は、密かに音源も制作している。