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トランスジェンダーアイコン“サリー楓“を描くドキュメンタリー映画公開

StoryWriter

新しい世代を代表するトランスジェンダーアイコン・サリー楓が誕生する瞬間を捉えたドキュメンタリー映画『息子のままで、女子になる』が、2021年6月19日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開する。

本作はパンテーンCM「#PrideHair」起用や「AbemaTV」コメンテーターをはじめ、多くのメディアへ出演し、 トランスジェンダーの新しいアイコンとして注目される、サリー楓のドキュメンタリー作品。建築家としての夢、息子として期待に応えられなかった葛藤、家族との対話など、彼女が楓として自分らしく、いまを生きようとする現在進行形の物語となっている。

『息子のままで、女子になる』は日本映画史上初、ロサンゼルス・ダイバーシティ・フィルムフェスティバルにてドキュメンタリー賞を受賞。監督は、ニューヨークで映画製作を学び、三宅洋平の選挙活動を撮った『選挙フェス!』(2015年)の監督・杉岡太樹がつとめた。さらには、ビューティー界のカリスマことスティーブン・ヘインズがエグゼクティブプロデューサーをつとめ、人生の先輩としてはるな愛が、かたく閉ざされた楓の心に寄り添う。

また、劇場公開を全国に拡げるための配給・宣伝費用を募るクラウドファンディングもスタートした。(玉澤香月)

■サリー楓 メッセージ:
2018年の夏、プロデューサーのスティーブンから「Could we film your documentary?(君のドキュメンタリーを撮らないか?)」と言われた。LGBTドキュメンタリーって嫌いなんだよな……と、心の中でつぶやいた。

――LGBTドキュメンタリーが嫌いな理由は明白だった。私にとって、LGBT当事者だということは、数あるアイデンティティの一つにすぎないからだ。私は20年以上の男子生活をコンプレックスに感じているが、誰しもコンプレックスの一つや二つはあるだろう。

辛いことを乗り越えてきたLGBT。理解してあげなければいけないLGBT。私はトランスジェンダーだよ、自分らしく生きてるよ。多様性が大事なんだよ、あなたらしく生きていいんだよ……LGBTを取り巻くステレオタイプな主張は、「嫌い」を通り超えて、虚しいとすら感じる。私のLGBTっぽい部分だけが取り上げられ、あたかもそれが私のすべてであるかのように見せられるのは御免だ……。
それでも私は「Of Course!(もちろん!)」と返事した。「Your documentary」という言葉が魅力的に聞こえた。二度とないオファーを断る勇気はなかったし、映画に出演することで目立ちたかったのかもしれない。

とにかく、私は、矛盾を抱えたままドキュメンタリーの撮影を承諾した。

撮影が始まってからの約一年半、私はカメラの前で日常を過ごし続けた。化粧に気合いを入れたり、格好をつけてみたりすることはあったが、ほとんど日常を過ごしたように思う。夢を追いかける一人の若者としてそれなりに努力し、それなりに挑戦した。それなりに失敗し、それなりに泣いた。そんな「日常を生きる女性」が映っているだけの、ホームビデオのような映画になると思っていた……。

しかし、ここに、すべての人たちに観てほしいドキュメンタリー映画が生まれた。
特に、「自分は“すべての人たち”に入らない」と思っている、すべての”あなた”に観てほしい。
当たり前だと思っていた「日常を生きる女性」を手に入れるために、トランスジェンダーである私が何と闘い、何を諦めてきたのか。私の知らない私が、スクリーンを通して見えてきた。

両親は、今でも私を出生時の名前(男性名)で呼び続ける。トランスジェンダーの世界大会は、集客のために「ニューハーフの世界大会」と自らを言い換えた。長年の夢が叶ったとき、ネットには「オカマ建築家、誕生」と書き込まれた。忘れ去ったはずの醜い思い出が、染みついた汚れのように拭えない。きっと、私に対する社会の理解はステレオタイプなところで止まっている。いっそのこと、「そうですよ、生まれたときは男ですよ。面白い人生でしたよ」と、開き直ってしまいたいが、そんな度胸もない。

「トランスジェンダーだ、男だ、女だ」
「トランスジェンダーだ、ニューハーフだ、オカマだ」
「トランスジェンダーだ、LGBTだ、ダイバーシティーだ」

世の中は私たちをステレオタイプに捉え、知っているカテゴリーに分類する。カテゴリーがあることで得られる理解もあれば、カテゴリーがあることで受ける苦痛もある。だから、やっぱり、私はLGBTドキュメンタリーが嫌いだ。
ところで、あなたに質問したいことがある。
「この映画は、LGBTドキュメンタリーだっただろうか」

You Decide.


■映画情報

『息子のままで、女子になる』
英題:You decide.
2021年6月19日(土)よりユーロスペースほか全国順次
(C)2021「息子のままで、女子になる」
サリー楓 Steven Haynes 西村宏堂 JobRainbow 小林博人 西原さつき / はるな愛
制作・監督・撮影・編集:杉岡太樹
エグゼクティブプロデューサー:Steven Haynes
監督助手:新行内大輝
撮影:新行内大輝、小禄慎一郎
リレコーディングミキサー:伊東晃
テキスト:舩木展子
ヴィジュアルデザイン:ヒノキモトシンゴ
宣伝:大福、大西夏奈子
音楽:tickles、yutaka hirasaka、Lil’Yukichi、Takahiro Kozuka、Ally Mobbs、ruka ohta
106分 / 日本語・英語 / カラー
©2021「息子のままで、女子になる」

【STORY】
男性として生きることに違和感を持ち続けてきた楓は、就職を目前に、これから始まる長い社会人生活を女性としてやっていこうと決断する。幼い頃から夢見ていた建築業界への就職も決まり、卒業までに残された数か月のモラトリアム期間に、楓は女性としての実力を試そうとするかのように動き始めた。
ビューティーコンテストへの出場や講演活動などを通して、楓は少しずつ注目を集めるようになる。メディアに対しては、自身が活躍することでセクシャルマイノリティの可能性を押し広げたいと語る楓だが、その胸中には、父親の期待を受け止めきれなかった息子というセルフイメージが根強く残っていた。社会的な評価を手にしたい野心的なトランスジェンダー女性と、父親との関係に自信を取り戻したいとひそかに願う息子。この二つの間を揺れながら、楓はどんな未来をつくり上げていくだろう。
これは、社会の常識という壁に挑みながら、自分だけの人生のあり方を模索する新しい女性の誕生ストーリーである。

■クラウドファンディング情報

映画『息子のままで、女子になる(英題:You decide.)』劇場公開支援プロジェクト
URL:https://motion-gallery.net/projects/youdecide

映画『息子のままで、女子になる』公式HP:www.youdecide.jp/

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