産業カウンセラーの手島将彦による新連載『こころの本〜生きづらさの正体を探る、産業カウンセラー手島将彦のオススメ本』。
『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』(2016年/リットーミュージック)、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』(2019年/SW)の著者であり、音楽業界を中心にメンタルヘルスの重要性を発信し続けた手島がオススメする本を不定期連載で紹介していきます。
Vol.10『心理学[第5版]』
メンタルヘルスや心理学などに関して比較的読みやすい本を紹介しているこの連載、ちょうど10回目になりましたが、「少し心理学全般を勉強してみたいのだけど、何か良い本ありますか?」というご質問をいただきました。そこで、『心理学[第5版]』(鹿取廣人・杉本敏夫・鳥居修晃編・東京大学出版会)を紹介します。
これはズバリ、大学などで教科書としても使われている本です。調べてみたら「補訂版」が2020年に出版されていましたので、もし購入されるという方はそちらの方が良いと思います(というか自分も買います)。心理学の概要を掴みたいという初学者にも、大学院受験のためにポイントを復習したい、という人にも対応できるような内容になっています。
個人的に、何か勉強したいと思ったときには、もっともオーソドックスな教科書的なものをまず読むようにしています。ちなみに僕は保育士資格も持っているのですが、なぜ資格を取ろうと思ったかというと、子どもが生まれて育児をするようになり、育児について何か学ぼうと思った時に、何が一番信頼できて教科書的なものなのだろうかと考えて、「保育士になるためのテキストが一番良いんじゃないか」と思ったからなのです。そして、どうせ読むなら試験も受けよう、ということで、資格を取得した、という経緯です。
少し脱線しますが、僕はいまだに高校の時の教科書を開く時もあります。特に「倫理」の教科書は思想などに関してかなりわかりやすく簡潔にまとまっているので便利です。最近は高校の音楽の教科書も買ってみました。スピッツの『楓』が載っていたり(ちなみにスピッツは4曲も教科書に採用されているそうです)、ロックやJ-POPの歴史なんかも載っていたりして、なかなか面白いです。
話を戻しますが、育児や教育、そして心理学などは、良くも悪くも様々な「〇〇理論」「〇〇メソッド」みたいなものがあります。それらの中には科学的根拠に乏しいものも含まれます。そうしたものに翻弄されないためにも、まずはごく基本的なところの知識を身につける方が良いと思います。その意味でもこの本はおすすめです。取り上げられている内容に関しては、以下に目次を引用しましたので、参照ください。
Ⅰ部 こころのありか
1章 心理学の視点 2章 行動の基本様式 3章 発達―遺伝と環境
Ⅱ部 こころの働き
4章 学習・記憶 5章 感覚・知覚 6章 思考・言語 7章 動機づけ・情動 8章 個人差 9章 社会行動
Ⅲ部 こころの探求
10章 心理学の歴史
「こころの本〜生きづらさの正体を探る」のバックナンバーも合わせてチェック!!
Vol.1 『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』
Vol.2 「発達障害」に関する基礎知識を得るための2冊
Vol.3 『ニューロダイバーシティの教科書』
Vol.4 『ジェンダーと脳〜性別を超える脳の多様性』
Vol.5 『はじめて学ぶLGBT〜基礎からトレンドまで』
Vol.6 『ポップスで精神医学〜大衆音楽を“診る”ための18の断章』
Vol.7『世界一やさしい精神科の本』
Vol.8『居るのはつらいよ〜ケアとセラピーについての覚書』
Vol.9『野の医者は笑う〜心の治療とは何か?』
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担
https://teshimamasahiko.com