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【連載】こころの本〜生きづらさの正体を探る Vol.11『情報を正しく選択するための〜認知バイアス事典』

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産業カウンセラーの手島将彦による新連載『こころの本〜生きづらさの正体を探る、産業カウンセラー手島将彦のオススメ本』。

『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』(2016年/リットーミュージック)、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』(2019年/SW)の著者であり、音楽業界を中心にメンタルヘルスの重要性を発信し続けた手島がオススメする本を不定期連載で紹介していきます。

Vol.11『情報を正しく選択するための〜認知バイアス事典』

メンタルヘルスや心理学などに関して比較的読みやすい本を紹介しているこの連載、11回目は『情報を正しく選択するための〜認知バイアス事典〜世界と自分の見え方を変える「60の心のクセ」のトリセツ』(情報文化研究所(山崎紗紀子/宮代こずゑ/菊池由希子)著/高橋昌一郎監修/フォレスト出版)です。

認知バイアス(cognitive bias)とは、偏見や先入観、固執断定や歪んだデータ、一方的な思い込みや誤解などを幅広く指す言葉です。これを「論理学」「認知科学」「社会心理学」の3つの研究分野からアプローチして、わかりやすく解説しています。気になる項目から読んでいっても問題ない作りになっていますので、とても入りやすいと思います。監修者の前書きにはこのように書かれています。

・膨大な情報に流されて自己を見失っていませんか?
・デマやフェイクニュースに騙されていませんか?
・自分の頭で論理的・科学的に考えていますか?

本書を読み終えた読者は、これら3つの質問に「イエス」と答えられるはずである!

「イエス」と答えられるようになるということと同時に、実際そのくらい自分たちは「情報に流されて自己を見失い」「デマやフェイクニュースに騙され」「自分の頭で論理的・科学的に考え」られていないのだという自覚を持てるようになる、ということかも知れません。

論理学的アプローチの章では「二分法の誤謬」「お前だって論法」「藁人形論法」など、SNSでもしばしば見受けられる現象が多数取り上げられていて、日頃SNSでのやりとりにモヤモヤしたものを抱えている人にはとても腑に落ちることが多いかもしれません。

認知バイアスの章では、僕たち人間の認知、感覚、記憶などは結構曖昧なものだということに驚くかもしれません。ただ、そうした仕組みや現象があるということを知っておくだけで、もしかしたら自分が特定のものの見方に捕われているのではないかということに気づき、適切な選択と行動を取れるかもしれません。また、単純に話のネタとしても、とても興味深い話が多いと思います。

社会心理学的アプローチの章では、この社会で生きていく中で誰もが一度は感じたことがあるであろう、「なぜ人はこんな不合理な行動をしてしまうのだろう?」という疑問が解決することが多くあると思います。

これらの事実や現象の仕組みを知ることで「生きづらさの正体」がわかり、僕たちはもう少し生きやすくなるかもしれません。そうした意味でもおすすめの一冊です。

「こころの本〜生きづらさの正体を探る」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』
Vol.2 「発達障害」に関する基礎知識を得るための2冊
Vol.3 『ニューロダイバーシティの教科書』
Vol.4 『ジェンダーと脳〜性別を超える脳の多様性』
Vol.5 『はじめて学ぶLGBT〜基礎からトレンドまで』
Vol.6 『ポップスで精神医学〜大衆音楽を“診る”ための18の断章』
Vol.7『世界一やさしい精神科の本』
Vol.8『居るのはつらいよ〜ケアとセラピーについての覚書』
Vol.9『野の医者は笑う〜心の治療とは何か?』
Vol.10『心理学[第5版]』

手島将彦(てしま・まさひこ)
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライヴを観て、自らマンスリー・ライヴ・ベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。アマゾンの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり産業カウンセラーでもある。
https://teshimamasahiko.com

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