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甲田まひるが語る、2nd EP『夢うらら』に込めたポジティブなメッセージ──ヴォーギングやエキゾチックさ感じるサウンドを徹底解剖

StoryWriter

シンガー・ソングライターの甲田まひるが、2nd Digital EP『夢うらら』を9月16日(金)にリリースする。

昨年11月にリリースしたデビュー曲「California」は、ポップス、ヒップホップ、K-POPと、1曲の中で目まぐるしく展開しながらも、一貫してキャッチーで、エモーショナルで、クールという衝撃的な楽曲で音楽好きたちの度肝を抜いた。最新曲「夢うらら」も1曲の中で複合的に展開していくサウンドプロダクションで構成され、エキゾチックかつダンサブルなビートに、ポップに解き放たれる歌メロと、妖艶なラップのフロウ、さらにヴォーギング(マドンナの「Vogue」のMVで世界的に知られるようになったダンサーの腕の動きが特徴的なダンススタイル)をイメージしたドロップパートも組み込み、これぞ甲田まひるといった楽曲に仕上がっている。

8歳でジャズピアノを弾き始め、2018年には石若駿と新井和輝(King Gnu)を迎えたトリオ編成でジャズ・アルバム『PLANKTON』をリリース。ファッションアイコンとして雑誌連載やモデル活動も行い、映画『サマーフィルムにのって』にも俳優として出演するなど多彩な活躍を見せる甲田まひるに、『夢うらら』のことをたっぷり語ってもらった。

取材&文:西澤裕郎
写真:Jumpei Yamada
ヘアメイク:MIKI
スタイリング:甲田まひる


前向きになれるような曲を書きたいなと思っていた

──前作「California」ぶりの取材になりますが、リリース後の反響はいかがでしたか?

たくさんいただきました。同い年のファンの子とかからも「めちゃめちゃよかったです」って反応があって。他にも「毎日聴いています」とか「出勤中に聴いてテンション上げてました」とか、そういう感想が多かったです。

 

──1曲の中に何個もセクションがあって、ジェットコースター的な展開が特徴の楽曲でしたが、今作『夢うらら』も1曲の中でさまざまな展開を見せていきます。タイトル曲の「夢うらら」は、どういう着想から作っていったんでしょう。

「夢うらら」って、言葉としては聞いたことがないじゃないですか? 私自身、今後こうなっていきたいとか、こういう歌手になりたい夢とか目標が自分の中に強くあって。この曲を書いていたのが春前ぐらいで、学校だったり仕事も新生活が始まるタイミングだったので、ちょっと前向きになれるような曲を書きたいなと思っていて。キャッチーな「うらら」っていうフレーズだったり、キラキラした感じをイメージしてタイトルを作っていきました。

──ちなみに「うらら」ってどういう言葉なんですか?

まず、ちょっと陽気な感じの英語の“ooh la la”が浮かんで、そこに麗しいっていう意味の“麗”も思いついて。夢がキラキラしたり、麗しいっていうイメージがぴったりだなと思って、英語の“ooh la la”のテンションで「うらら」って歌っています。3回以上、最後まで出てくるので、この言葉がちょっと頭に残ってもらえたらいいなと思ったんです。

──前向きな曲が書きたかったということですが、甲田さんは普段思い悩んだりされることもあるんですか?

普段から不安も楽しみもあるし、そういうことを一日中考えているんですよ。将来どうしようとか。ポジティブだったりネガティブだったり、どっちの感覚もあるので、それを題材に書きたいなってずっと思っていたんです。そういう時期だったのもあるし、テーマとして一番今伝えたいことかなって。

──それは、世の中の雰囲気とも関係している?

「何も将来することがない」とか「うまくいかないです」みたいな投稿が私の質問箱にすごく届いて。それを読むと、めちゃめちゃ考えちゃうんですよ。どうやったらこの子は、この状況でうまくいくのかって。すごく考えて返信をするのが日常的になっていたんです。自然とそういう子たちにどうやったら伝えられるかは自然に思っていたのかなって。

──そういう悩みにもちゃんと向き合って返事をしていたんですね。

もし自分だったら答えて欲しいと思うんです。状況も全然わからないのでうまく言えないんですけど、ちょっとした返信でも「勇気が出ました」って言ってくれる人がすごくいたので。ちゃんとその立場になって考えてみようって思って返答していました。

──メンタルヘルス的に、身の回りに肯定してくれる人が1人でもいることがすごく大切だということも言われていますよね。

誰かから「こうした方がいいと思うよ」って言われても、若干受け入れられないときってあると思うんです。曲の中の歌詞にもあるんですけど、悩んでいる側にしか絶対わからないことはあるなと思って。

ヴォーキングで一番戦闘心が湧くみたいなイメージ

──甲田さん自身、自分の自己肯定感はどうやって維持しているんでしょう。

褒められることも自己肯定感が上がる一つだと思うんですけど、自分1人でもどうにもならないときは、作品を作ったとか、いっぱい練習したとか、何かしら自信をつける体感する行動をしないと、私は進めないですね。何かしら成し遂げたり、やったっていう結果を自信に繋げるってやり方で、ずっと昔から保ってきています。

──曲を作る理由の一つにはそういう気持ちもあるんですね。

それは大きいです。自分でも納得する曲が書けるといい状態に戻れる感じがしますね。自信がなくなってしまったときは、自分はこのぐらいできたと思うことでしか自信を持てないときもあって。でも、そのために頑張るのって大変で。ネガティブなのになにかを作るのはすごく大変なんですけど、乗り越えないとなかなか自己肯定感は上がらないです。

──完成した楽曲を聴くことで、あのとき頑張っていたなって自信に繋がると。

それはあります。完成したら、ずっと聴いちゃいますね。

──甲田さんの心境や、そのときのムードも曲とリンクしていると思いますか?

そうですね。ただ、曲作りってなると意外とロジカルというか。楽曲的にここは落とした方がいいなとか、ここで上がった方がみんな聞くだろうと考えて作っちゃいますね。

──今回、最初のイントロと歌の入り出しでだいぶ雰囲気が変わりますよね。

元々イントロもベルの音がついていたんです。最初はもうちょっと1Aとか2Aのようなテンション感だったんですよ。ずっと明るくて、ラップで急に落ちるというか、暗くなったりして。成田(ハネダ)さんがアレンジャーで加わってくださったときに、イントロが一気にちょっと暗めになったので、後から差がついてきたっていうのはありました。

──「California」のときは、楽曲の構成を入れ替えたりいじったって言っていましたよね。今回は、そういうパズルみたいなことはなく?

今回もジェットコースターみたいにしようと思っていなくて、割とまとまっている方だと思うんですけど、一つの軸として「夢うらら」ってワードが力を持っていると思っていて。最初は孤独の「夢うらら」から、2Aでだんだん前向きになっていって、3Aで確信して、最後はみんな引き連れて合唱しているみたいな(笑)。「夢うらら」4部構成みたいな感じなんです。

──ドロップの部分はどういうイメージして作ったパートなんでしょう。

あそこがヴォーグっていうパートになっていて、ヴォーギングっていう腕の動きが特徴的な踊りがあるんですけど、ダンスレッスンで1回習ったことがあって。そこからヴォーグの曲を作りたいと思って制作したんです。それを「夢うらら」に入れてみようって。ちょっと夢を見つつも、あそこで一番戦闘心が湧くみたいなイメージで持ってきましたね。

──この曲にヴォーグを入れるアイデアと発想が、甲田さんならではですよね。

テンポが一緒だったっていうのと、試しにいれてみたら結構はまったっていうのもあります。

──逆にちょっとサイケデリックな感じの展開にもなっていきます。

大サビですよね? そこは、とにかく明るい曲だったなと思ってほしくて。ここがなかったら全体的に格好いい感じで終わると思ったんですけど、あえて最後のわかりやすいハッピー感みたいなところで、ちょっと聞き馴染みのあるメロディを意識して、とにかく盛り上がるイメージで作りました。割とデモの段階からこういうテンション感でしたね。

──「California」のときも、どことなく異国情緒感みたいなものを感じていたんですが、今作では東洋っぽい感じのニュアンスを感じました。

初めて東洋っぽいって言われたかもしれない。うららのせいなんじゃないかな(笑)。

──歌詞というよりはサウンドの感じが日本っぽくないというか。

自分はJ-POPを作りたくて作っているけど、サウンドはちょっとひねくれてないと落ち着かなくて。その中での今、自分が思うポップみたいな感じなので、そういう他国の雰囲気を感じてもらえるのは、すごく意図的というか、嬉しいですね。

──「California」は歌録りのとき、後ろを向いて壁に向かって歌ったとお話されていたと思うんですけど、今回歌入れでなにか印象的だったことはありますか?

今回は、叫び散らしたパートがあります(笑)。ラップの〈So tell me what your dream is la la la la la la like?〉の所はめっちゃマイクから離れて叫びました。ここが一番の問いかけ部分で「あなたの夢を教えて」っていう文なので強く叫びたいなと思って。あと、ラップに入る4拍前からマイクに向かって歩いていって歌って録りました。

──それは、どんな効果を狙ってのことだったんでしょう?

同じ場所で歌っていると世界がそこだけになっちゃうので、歩くだけで空気感が動きが伝わって、よりストレートに言ってる感じになるのかなと思って。いろいろ試しました。

──今回、アレンジャーで成田さんに依頼した経緯や理由を教えてください。

今回デモを作ってるときに「誰かアレンジャーがいた方がいいよね」って話になったんです。自分たちで思いつかないアイデアを取り入れてみたいっていうのもあって。っていうところで、スタッフさんが成田さんどうだろうっていう提案をしてくれて。音源を聴いたらイントロからすごく引き込まれて。ポップなんですけど、すごい変拍子をやっていたり、そういう部分ですごいわかってくれそうだなと思ってお願いしました。

──レコーディングにあたって他に印象に残ってることはありますか。

低音を足したくて深い声を出すように頑張って準備していたんですけど、それで歌ったときに、私の声を聞きたいから、何も作らないで、そのときに出る、話してるときのまんまでいいんだよって話をしてくださって。そう言われなかったらだいぶ違うものになっていたと思いますし、そういうディレクションがあったからこそ、「夢うらら」の世界観がしっかりできて、最終的にハッピーな感じも出たのかなって思います。

インストはまた違った面白さがある

──今回も前回と同じくピアノver.が収録されています。前回もおっしゃっていたみたいに、自分の表現の一つとしてピアノを大切にされてるからこそのアレンジですね。

今回、ピアノアレンジをしたら絶対いいなと思っていて。曲が大枠完成した段階でピアノでアレンジし始めました。昔クラシックを習っていたときに、湯山昭さんっていう、ちょっとジャズっぽい現代曲を作る作曲家の方の曲がすごく好きだったのを思い出して。そのときの楽しい感じが、ジャズとクラシックが混ざって表現されてるのがすごい印象的で。そういう世界観でアレンジしたいなと思ってやってみました。

──そこはあまりロジカルな感じではない?

今回はメロディをほぼ残しているんですよ。その上で拍子だけ7拍子にしていて。本当に思いつきで、その場で面白いかもと思ってやってみたんです。できるだけ原型が崩れないようにしつつ、こんなふうにもなるんだって。それがアレンジの楽しさだと思うんです。

──ちなみに、7拍子にすることで、どんな効果が生まれるんでしょう。

今回は、7拍子がはまるメロディだったんですよね。「夢うらら」とか、白玉が多いんですよ。伸ばす棒が多かったので、7拍子にすると、ちょっとギュってなるんですよ。もっとメロディの間隔を詰めなきゃいけなくなって、それぐらいがピアノだったらちょうどいいかなって。ベースラインも7拍子で思いついちゃったので、そのまま行こうかなってアレンジしていきました。

──トラックだけのインストも特徴的ですね。

今回はベースとかもクラブミュージック的なテンションがあるので、ビートとしても聞けると思っていて。個人的に結構それは熱いなと。逆にインストだけで聞いたときにまとまってるなと思うかもしれないし、逆にすごい意味わかんないって思うかもしれない。それこそどう聞こえるのか、みんながどう捉えるか、インストはまた違った面白さがあるんじゃないかなと思いましたね。

──めちゃ気持ちよく聴かせていただきました。ただ、情報量はめちゃめちゃ多いなって。

それはありますね。やっぱり歌があって成立してる感じはすごくするかもです。

「ごめんなさい」の本当の意味を伝えたいなと思って書いた

──2曲目の「ごめんなさい」。これはどういう着想のもとで作った曲なんでしょう。

毎回、自分の作る曲にはテーマがあって。これは、そのときにラテンの曲が書きたくて作っていたんです。デモの歌い出しの〈ごめんねばっかり言われてだんだん呆れてくるよね(それもごめんね)〉って歌詞がメロディと一緒に最初から入ってて。自分の中から、どうしてこういう言葉が出てきたのか考えたとき、すぐ謝っちゃうからかなと思って。それって逃げているというか、顔色をうかがったりして出てくる言葉だと思ったんです。それをいいと思ってるならそれで書いてもよかったんですけど、私はそれが嫌で。本当は謝りたくないのに何を謝っているんだって状況を頑張って抜け出せたらいいなと思って書きました。だから、「ごめんなさい」というワードを多用しているんですけど、本当は逆の意味で、謝りたくないんですよ(笑)。

──確かにその場を丸く収めるために、ごめんねとか言っちゃうときありますね。甲田さんも割と言っちゃう?

すぐ言っちゃいます。

──そこを抜け出したい?

それで正しいときもあるけど、自分のためにならないときもあると思うんです。例えば、恋愛で好きだからこそ嫌われたくないと思って謝っていたら、それが当たり前になっちゃうじゃないですか。それだと自分が成長できないし、気づいたら全部相手のペースになっていたり。それは違うと気づいた女の子を1個の例え話として、「ごめんなさい」の本当の意味を伝えたいなと思って書いたんです。

──歌詞を文字にしたとき、括弧で(それもごめんね)と括っていますが、これは心の声のようなイメージなんでしょうか。

そうです、心の声ですね。弱気な自分というか。ちょっと追加で語っているというか。

──コーラスもたくさん入っていますよね。

今回、めちゃくちゃ入れました。コーラスを作るのがすごく楽しくて。この曲の世界観を表現するためにも必要だったんですよね。ちょっとふわふわした感じとか不安な感じが、両方の耳から聴こえてきた方がゾクゾクするなと思って。とにかくいろいろなささやき声とかを入れました。シンプルだけどシンプルじゃないというか、ちょっと不穏な感じが出したくて、やりました。

──「夢うらら」のMVはどんな作品になりそうですか。

今回はNasty Men$ahさんにお願いしました。テーマが明確だったので、監督にこの夢はファンタジーではなく、強い意志なんですっていうことを一番に伝えて。割と映像はシンプルな感じなんですが、どこか違和感のある世界観になっています。

 

──「California」のときみたいなダンスシーンはありますか?

今回も踊ります。ヴォーグの部分と、フックの部分。元々フックはダンスの曲だと決めてたので、踊ります今回も(笑)。

──前回もライヴをやりたいとおっしゃっていましたが、ライヴだとまた違った雰囲気になるかもしれないですね。

こういう曲を書いて、実際に誰かの前で歌えるって絶対幸せじゃないですか。まだいまのスタイルではライヴをしたことがなくて、全然わからない感覚なので。やってみて勉強になる感覚があると思うので、がんばってライヴをやりたいと思っています。

──本作をリリースした先には、どんなことをやっていきたいと考えていますか。

もう次の制作に入っているので、まずはそこですかね。作品を出して、ライヴをして、また出してってやっていきたいですね。

──じゃあ、そんな遠くない未来に新曲を聴けると期待していてよいですか?

はい!

──最後に改めて、本作の聞きどころを教えてください。

今回は、とにかくポジティブなメッセージを込めていて。タイトル曲の「夢うらら」だけじゃなく「ごめんなさい」も一周回って自分の中では背中を押す曲なので、みんなの背中を押す曲になれたら嬉しいです。自分もネガティブになっちゃったりするんですけど、本当に考えてもしょうがないときもあると思うんです。特に今の世の中、考えても不安になることも多いのでポジティブにいきたいなと思って。そういう明るい未来とか夢の雰囲気を感じてもらいたいですね。


■リリース情報

甲田まひる 2nd Digital EP『夢うらら』
配信日:2022年9月16日(金)
先行配信日:2022年9月2日(金)
https://mahirucoda.lnk.to/yumeoohlala

EP収録内容(全4曲収録)
1、夢うらら(作詞作曲:甲田まひる、編曲:甲田まひる、成田ハネダ、Giorgio Blaise Givvn)
2、ごめんなさい(作詞作曲:甲田まひる、編曲:甲田まひる、Giorgio Blaise Givvn)
3、夢うらら (Instrumental)(作詞作曲:甲田まひる、編曲:甲田まひる、成田ハネダ、Giorgio Blaise Givvn)
4、Yume ooh la la.pf(作詞作曲編曲:甲田まひる)

2nd Digital EP 『夢うらら』Pre-Add/Pre-Save キャンペーンページ
https://wct.live/app/34691/yumeohlala_paps
※Pre-Add/Pre-Save 期間は9月15日(木)23:59までになります。

甲田まひるオフィシャルサイト https://mahirucoda.com/
2nd Digital EP『夢うらら』特設サイト https://mahirucoda.com/Yumeoohlala/

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