watch more

新進気鋭の店主2人が語る、ぱっと見では何の店かわからない古着屋「Seeds」を下高井戸にオープンした理由

StoryWriter

今、シティボーイの間で密かにアツいと話題になっている街、下高井戸。下町感漂うレトロな雰囲気を残しつつ、多様なライフスタイルに寄り添った、個性豊かな飲食店や古着屋が集まるスポットだ。

そんな下高井戸に新しくオープンした古着屋、Seeds。お店のスタッフはmizuki 、hiroto 、kaiya、maoの同世代4人。渋谷・神宮前にある古着屋、muddlerに続く2店舗目としてSeedsをオープンした。

ホワイトを基調としたカントリー風のおしゃれな外観は、思わず「なんのお店だろう?」と気になってしまう。店内には観葉植物が飾ってあったり、お客さん向けにイスが置いてあったりとリラックスして過ごせる空間となっている。古着はUSやヨーロッパから買い付けており、ヴィンテージからレギュラーアイテム、レディースまで充実のラインナップ。

今回、Seedsのスタッフであるmizuki とhirotoにインタビューを行い、お店の魅力やこだわり、おすすめのアイテムについてなどじっくりと話を訊いてみた。

取材&文 : 北村蒼生
写真 : 田中輝光


種を飛ばすように古着を循環させたい

──「Seeds」というお店の名前にはどういった由来があるんですか?

mizuki:種という意味から色々なことの根源になればいいなと思い付けました。俺が持っているバックに書かれた英字のプリントで「宇宙に種を飛ばそう」って言葉があって。そこから英語で種という意味の「Seed」を名前に入れたいなと思い、お店のスタッフが4人いるんで複数にして「Seeds」にしました。あとお店のロゴは、ヒノキの木をオマージュしたデザインになっているんです。

ガラス窓にはSeedsのロゴがイラストされている。窓から明るい光が差し込む開放的なつくりの外装。

──このロゴは地球の形にも似たデザインになっていますよね。

hiroto:種子って風に乗って色々な場所に飛んでいく。それと同じように、俺たちも古着屋という媒体の中で、世の中に古着を循環させていきたいなと思って。あと、なんとなく地球と種って形が似ているなってイメージから地球っぽいデザインにしました。

──お店がある下高井戸の街の雰囲気はどうですか?

mizuki:俺はすごく好きですね。商店街とか、街の雰囲気に下町感があって。古着屋として地域密着でお客さんを大事にして、街のみんなと一緒に下高井戸を盛り上げていけたらいいなって思いますね。

──muddlerがある原宿とは、場所柄、お店に来るお客さんはだいぶ違いますか?

hiroto:原宿と違って下高井戸を目指して訪れる人って中々いないんですよね。それよりも、この地域に住んでいる人が他のお店を見るついでにうちにも寄ってくれることの方が多い。住んでいる人が来てくれることが多いので、muddlerと比べてお客さんの年齢層は上ですね。

mizuki:お客さんの中で、何している人なんだろうって疑問に思うくらいおしゃれな人が多いですね。聞いてみたら学校の先生をやっている方だったり、漫画家さんやミュージシャンの方とか面白い人がお店に来てくれます。

──そういったお客さんとのコミュニケーションは、muddlerでの接客と同じように大事にしているんですね。

mizuki:そこは変わらず大事にしていますね。けどmuddlerは家っぽい雰囲気があるからラフにお客さんと話せるんだけど、Seedsはお店感が強いから最初は敬語になるし、接客もお店っぽくはなりますね。

古着屋感のない外観と居心地の良い空間

hiroto:mizukiからSeedsの内装・外装のデザインを任されてどうしようか考えた時に、この場所にコテコテの古着屋があるのはイメージ的に違うなと思って。だから、内装、外装含めて古着屋感がなくて目を引くようなものにしたいなと思ったんです。あと、ちょっと変わった空間にもしたかったから、店内に置く什器を異素材のものをにして、色使いや配置にもこだわってデザインしました。コンクリの壁や外装から全部自分たちでやったので、色々やっていく中で決めていきました。

──内装に関して特にこだわったところは何ですか?

hiroto:圧迫感のない空間にしつつ、そんなに広くないから沢山服を置けるようにしたくて。オーソドックスな壁付けのラックを置いて、お店のセンター、中心部分の作り方にはこだわりましたね。あとSeedsって名前から店内には植物を多めに取り入れるようにしました。あとスタッフみんなで話していて、試着室は絶対広い方がいいよねって一致しましたね。

mizuki:muddlerもあの雰囲気だから、試着室自体は狭いんだけどゆったりと試着できるし。逆にSeedsは綺麗目で一見入りづらい感じはあるんだけど、試着室が広いことで来てもらいやすくなるかなとは思いました。

hiroto:駅前にあってスケルトンの外観ではあるけど、居心地の良い空間にはしたくて。だから、カウンターの真向かいに椅子を置いたりだとか、お客さんの動線を色々と考えながら作っていきましたね。

白を基調とした店内は清潔感のある落ち着いた雰囲気

──場所的に人通りは多そうですよね。ぱっと見て外観で気になって入ってくれる人もいそうですよね。

mizuki:「ここ何屋ですか?」って聞かれることが多くて。さっきhirotoも言っていたけど、意図して古着屋っぽくない外観にはしましたね。

hitoro:コテコテの古着屋だと古着に興味ない人はまず入って来てくれない。Seedsでは雑貨とか、最近だと新品も置き始めたりしたから、あえて何屋か分からないようなギリギリなラインは意識してデザインしましたね。

──今後、hirotoさんは空間をデザインするような仕事もやっていきたいんですか?

hiroto:やっていきたいですね。あと今、家具にすごく興味があるんです。ヴィンテージ家具を結構コレクションしていて。今後、家具と内装デザインを上手く融合させた活動をしていきたいですね。

ニーズを意識する中でも好きなものをチョイス

──今回、どうしてmuddlerに続いて2店舗目を出そうと思ったんですか?

mizuki:それにはいくつか理由があって。単純にhirotoが海外から帰ってきてスタッフ4人が揃い、1店舗にそんな人いらないなと思って。だったら2店舗出して、みんなが各々力を発揮できる場を作りたいなと思いました。あと普段自分がよく行く古着屋は綺麗目なお店が多いので、自分が憧れている綺麗目の古着屋を一本作りたいと思いました。それと、2店舗経営していくことで信頼と実績を積んでいきたいって部分もありますね。

hiroto:多分、mizukiの性格的に常に動いてないとダメなんですよね(笑)。

mizuki:今頑張ることで、歳とってから楽な生活したいなと思いますね。

カメラマンとしても活動するSeedsスタッフのkaiya(右)、hiroto(左)。

──Seedsではどういったアイテムが多く置かれているんですか?

hiroto:世田谷という場所は自転車を乗る人が結構多くいて、テック系と呼ばれる機能性を求めた服がよく着られているんです。そこまでニーズを意識しているわけではないけど、muddlerよりファッショナブルさというよりは機能性を重視した服を多めには置いていますね。

mizuki:ニーズに寄せていく中でも俺らが好きなものをチョイスしています。

──具体的にどこ国のアイテムが多いとかはありますか?

hiroto:テック系っていうとアウトドアブランドになってくるからUSのものが多いいけど、俺らはヨーロッパにも買い付けに行っているので そこに関してはどこかの国に固執しているわけではないですね。

mizuki:この前4人でタイに買い付けに行った時は、USのヴンテージものが沢山手に入りましたね。

──バイイング(買い付け)する際は、muddlerに置くアイテム、Seedsに置くアイテムというように、明確に分けて買い付けているんですか?

mizuki:単純に好きなものを選んでいるので、どっちに置くかは感覚で決めますね。大体みんな意見一致するよね。

hiroto:若干お客さんの年齢層を考えたりもしますね。あと内装に合わせて、置くアイテムを分けていたりもします。muddlerは少し不思議な空間ではありつつ、こってりしているから、すごくヴィンテージなアイテムや、気持ち奇抜なものなどを置いています。逆にSeedsだと汚れが目立つヴィンテージものはあまり置かないですね。

mizuki:muddlerとSeeds、両方知っているお客さんからすると、お店の雰囲気も含めて全然タイプが違うなって思う人もいれば、共通する部分があるって感じる人もいると思います。外観や内装が違うだけで、服の見え方ってかなり変わってくると思います。

Seedsスタッフのmao。お店ではレディースアイテムも豊富に取り揃えている。

下高井戸を盛り上げられる一員になりたい

──Seedsで取り扱っている古着のサイズ感はどういったものが多いですか?

hiroto:うちでは体が大きいお客さんや、着方が大きいお客さんが結構多いので、muddlerに比べてSeedsの方が大きめなサイズ感のものを置いていますね。サイズ感はピックする上で重要なポイントだと思っています。

──前回、muddlerを取材した時と同じように、それぞれのお客さんにとってジャストなサイズ感の古着を提案するという意識ですか?

hiroto:ジャストって色々な捉え方があるなと思っていて。mizukiやkaiyaにとってのジャストサイズはタイトに着ることだし、俺にとっては少しゆったり目に着るのがジャスト。

mizuki:その人の着方、体格、スタイルに合わせたジャストサイズを提案できたらなと考えていますね。

──接客で意識していることはありますか?

hiroto:muddlerでの接客は割とフレンドリーな感じだけど、Seedsだとお客さんを見ながら最初は低姿勢で徐々にフレンドリーになっていくことが多いですね。Seedsに来られるお客さんは、既にその人のスタイルが完成している人が多い印象がありますね。あと地元の人が来ることも多いから、飽きさせないように常に新しいものを入れています。

mizuki:地元の人が週に1回来るぐらいのペースで来ても楽しめるように、店に置く古着は頻繁に新しいものと入れ替えていますね。

──そういう意味でもこの地域の人たちを大事にしていくようなお店になっているんですね

mizuki:下高井戸を盛り上げられる一員にはなりたいなと思いますね。この辺でお店やっている人たちがSeedsのこと知って宣伝してくれたりして、下高井戸の人たちはあったかいなって感じますね。そうやって良くしてくれた分、俺らも返したいなって思いました。

hiroto:地域に貢献みたいな硬い感じではないけど、一員になって盛り上げていきたいですね。

mizuki:下高井戸にある古着屋は、TOPSHOT、tempo、Shelly’s、Seedsの4つあって、それぞれテイストが違った
お店になっていて。楽しい街だなと思いますね。

衣食住のサイクルに合わせたイベント

──Seedsとしてローカルなつながりを大切にしていきたいって面があるとともに、下高井戸以外に住む人にも足を運んで来て欲しい気持ちもありますか?

mizuki:集客の面でSeedsに来て欲しいのはもちろんだけど、下高井戸の駅に沢山の人が降りて欲しいって思いますね。だから、Seedsで展示やポップアップとかのイベントを定期的にやっていくことで、多くの人が下高井戸を訪れる口実を作れたらなって思いますね。

左はラグアーティストのryo。maoがイラストした絵を元にryoがオールハンドメイドで制作したラグ。

──今後どういったイベントを組んでいきたいですか?

mizuki:衣食住の中で「衣」にSeedsで選んでくれている人の生活を豊かにできるようなイベントを組んでいきたいですね。例えば、Seedsで服買う人だったら「ラグ欲しいな」「コーヒー好きだな」「植物が家にあったらいいな」とか思う人がいるだろうし。そうやってSeedsに来てくれるお客さんの衣食住のサイクルを考えながら、イベントを組んでいきたいですね。

hiroto:お客さんから仲良くなった人が、そのつながりでポップアップをやってくれていますね。俺らが言うのもなんだけど、お世話になっている人たちに活動の場を提供できたら嬉しいし、一緒に下高井戸を盛り上げていきたいですね。

mizuki:最近思うのが、俺らがやっている古着とかアパレルの業界は3、40代の人がメインでやっていて、そこに囲いができている。それを見て、俺らが3、40代になった時にも同世代の輪っかを作れたらいいなと思ったんですよね。だから、本気で応援するから一緒に成り上がろうぜってスタンスでポップアップやイベントをやっていきたいですね。


ショップ店員によるおすすめのアイテム

“90s fruit of the loom” – design sweat

 

mizuki:これは、90s fruitボディーのスウェット。”私は 50 歳じゃない、18 歳と32 年の経験がある”といった歳を取ってもティーンの心を忘れない、みたいなメッセージ性の込められた遊び心くすぐる1着です。
また、配色にも気を遣った目を引くデザインになっています。

“80s EDDIE BAUER” – colorful border knit

 

mizuki:これは80s黒タグEDDIE BAUER、マルチボーダーのコットンニットになります。
たまに出てくるEDDIE BAUERの変化球的なデザインの1着で、カラーも素材も春先ぴったし。おすすめです。

“00s Berghaus” – softshell jacket

 

mizuki:こちらイギリスのアウトドアブランドBerghausのソフトシェルジャケット。イギリス現地買い付けだけあり、ヨーロッパ企業の刺繍があちこちに。ドローコードが付いていて丈の調節が可能だったり、ソフトシェルなので伸縮性もあって動きやすいので自転車などアクティブな時にもぴったりなアイテムです。


■ショップ情報

Seeds
東京都世田谷区赤堤4-45-13
営業時間:13時〜20時

公式Instagram:https://www.instagram.com/seeds__store
オンラインストア:https://seedsstore.theshop.jp

PICK UP