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StoryWriter

またひとつ、歳を重ねた。

「大人になったと思うことは?」

そう聞かれるといつも考えてしまうけど、今ならきっと

「大好きなbarがあること」

と、ドヤ顔で答える(子供か)。

今年の誕生日当日は、夜ごはんを食べたあと、そこに向かった。

とはいっても、予約ができないお店なので、行ってみないと入れるか分からない。恐る恐る扉を開けると、偶然2席だけ空いていて、座れることに(ラッキー!)。

裏道にあるこのお店は

「さりげないにもほどがある!」

と突っ込みたくなる感じの看板が置かれているが、足を踏み入れると、そこはもう別世界。

まるでヨーロッパの教会のような空間。計算された光と影。音楽。香り。綺麗に並べられたグラス。マスターの所作。

どれも素晴らしくて、たまたま足を踏み入れた2年前、興奮して鼻息が荒くなりかけたが、怪しいお客だと思われたくないので、平然を装ったことを今でも鮮明に覚えている。

それ以来「行きつけ」というにはおこがましいが、嬉しいことがあったときや特別なときには必ず来たくなる、大好きな場所なのだ。

席に座り

「マスター、いつもの」

なんて憧れの台詞を言ったことは一度もなく、いつも何を飲むか悩んでしまう。

隣の人の真似をしてみたり、季節のフルーツを聞いてみたり、素直にマスターのオススメを聞いてみたり。

ウイスキーのロックを頼んだときは、大きな氷を目の前で削りはじめ、その大胆かつ繊細な動きと、カクテルとは異なるシンプルな作りなのにもかかわらず、家で飲むのとは全く違う味に、感動。

去年の秋には突然

「栗は、好きですか?」

と聞かれ

「は、はい」

とふんわり答えたら、マスター特製の「栗の甘露煮」を使ったカクテルが出てきたときには、あまりの美味しさに言葉を失った。少し氷も入ってて、大人の上品なシェイク、みたいな。あの美味しさは忘れられない。

そして今回は、今が旬の「いちごのカクテル」を作ってもらうことに。

待ってるあいだ、マスター手作りのパンをいただくが、これがとっても美味しい。そして、お客さんに合わせたグラス選びも、見てるだけで楽しい。

偶然にも、ちょうど使ったのを洗って乾かし、今からしまうグラスたちが目の前に並んだので

「写真を撮っていいですか?」

と聞いて、一枚撮らせてもらうことに。

う、美しい……。

そんなことをしていると、横に座っている三人組の方が英語で何やら楽しそうにお話をしている。なんて言っているのかは分からないが、なんだか聞いたことのある作品の名前が聞こえてきた。

どうやらイラストレーターの方らしく、突然、コースターの裏にスラスラと絵を描き始めた。

あまりの上手さに、お店にいるみんなが驚いてる中、さりげなくマスターが私が誕生日だということを伝えてくれたのか

「名前はなんていうの?」

と聞いてくださり

「マイ・ネーム・イズ、ロビン! ROBIN!」

と伝えると

「OK!」

と名前を書いて、まさかの、プレゼントをしてくれた。

こんな素敵な出会いがあるなんて。

思いきりハグしたいくらい、嬉しかった(もちろんしてません)。

三人のうち一人は、英語も日本語もできる女性だったので通訳してもらいながら、少しほろ酔いで楽しく会話をさせてもらった。

もっと自分の言葉でもいろんな国の方とコミニュケーションを取りたい気持ちが芽生え、いちごのカクテルをグビッと飲み干しながら、英会話に通うことを誓った夜だった。

岡田ロビン翔子(おかだ・ろびん・しょうこ)

1993年生まれ。2006年から2018年8月2日の解散まで、チャオ ベッラ チンクエッティ(THEポッシボーから改名)のリーダーとして活動。 頭の回転の良さからくるトーク力には定評があった。解散後はラジオDJを中心に、MC、モデル、自身のアコースティックライブ「ロン喫茶」など、マルチに活動中。 様々なジャンルに興味を持ち、多方面にアンテナを張りめぐらせ、スキルアップのために努力を欠かさない向上心の持ち主。

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