
取材&文:西澤裕郎
写真:すずき大すけ
BLUEGOATSが、最新EP『DAMN』タイトル曲「DAMN」のMVを公開した。
監督を務めたのは、これまでも数々のMVを手がけてきたプロデューサーの三川陸。「冤罪」というモチーフを扱い、これまでの作品群とは明らかに手触りが異なる本作。その背景には、ダイナマイト・マリンのSNS投稿をめぐる騒動があったという。制作のきっかけから、作品に込めた問いまでを三川本人に聞いた。
なお、本MVは“ダークヒーロー編”として位置付けられており、「さらば青春の光」などこれまでのMVで描かれてきた物語とは連動していない独立した作品であることを最初に記しておく。
何が悪で正義か、わからないなということに対して向き合わないとと思った
──「DAMN」のMVは、これまで三川さんが監督してきた作品の中でもシリアスなストーリーもので、だいぶ雰囲気が違いますよね。制作のきっかけから聞かせてください。
三川:きっかけとして、マリンの炎上があったんです。「アイドルが脱ぐなよ」というポストがめっちゃ炎上して、謝罪動画も出して。今回のEP『DAMN』の大きなテーマは「ひっくり返す」だったんですけど、そこからちょっと逸脱してでも、何が悪で、何が正義か、わからないなということに対して向き合わないとと思ったんです。
──というと?
三川:「アイドルは脱ぐべきじゃない」という正義を持っている人は一定数いるはずなんですけど、だからといって、水着グラビアをやっている側を叩くことも正義ではない。同時に、それに対して、マリンが度をこして叩かれるのも正義ではない。どこに正義があって、何に正しさを求めるのか。実際、あの炎上でファンが一定数離れたんですよ。
──そうだったんですね。
三川:「炎上商法だ」とか、「他を下げて自分を上げるな」とか。あと、オタク友達に「推しが炎上してるね」って言われるのが嫌でっていう理由で離れた人もいて。一部は戻ってきてくれていると思うんですけど、それくらい大きなインパクトがあった。

──それがMVのテーマにつながっていったと。
三川:その前に1個あって。僕自身、普通に生きてて、電車とか乗ってるじゃないですか。あまり意識してないけど、ふと自分を上から客観的に見る瞬間ってあるんですよ。その時に「これ、切り取られたら炎上するな」って思うことが何回もあるんです。やってる時は気づかなくて、途中で我に返った時に思う。自分自身が普通に生きているだけで炎上するような人間であるなと思った時に、これは自分を守るためのMVでもあるなって。
──決して、他人事ではないと。
三川:今回は「冤罪」っていう大きなテーマを扱ってるんです。ざっくり言うと、かいなが主人公的な女の子。回想シーンでは、親が作った借金をかいなが背負わされていて、借金取りにお金を取られて、払えないから搾取され続けているというところからスタートしています。それを他の3人がずっと見ていて。でも、かいなはニコって笑うんですよ。ぎこちない笑顔で。回想は5年前という設定なんですけど、その回想の中で、チャンチーの手を見ると、グーを握ってるんです。つまり、チャンチーが怒っているという事実がここにある。それで屋上のシーンになるんですけど、あれは借金取りの男が、かいなに「もうお前は死んで償え」「死んで生命保険で金を払え」と迫っている場面なんです。


──そういうシーンだったんですね。
三川:ここのカットが映像的に合わなくて本編に入れきれなかったんですよ。ルックの美しさを優先しちゃった。だからX(旧Twitter)でポッと補足的に出したんです。それで、チャンチーが「かいなが死ぬくらいなら、こいつを殺した方がいい」と、その男を殺してしまう。

──なるほど。
三川:かいなはチャンチーを犯人にするわけにはいかないから逃がすんです。そして、顔を見られていたかいなだけが指名手配される。ずっと追われるじゃないですか。でも、刑事は本当はチャンチーが犯人だとわかってるんですよ。

──最後のシーンで、刑事はチャンチーさんを見つめていますよね。
三川:だから、部屋でかいなに向けて銃を撃つ時に手が震える。追いかけるシーンでも本当はもう追いつきそうなんです。でも、追いつかないようにしている。つまりどういうことかというと、刑事はチャンチーが犯人だと知ってる。でも、世の中的にはかいなが指名手配されていて、かいなが「圧倒的な悪」という形で報道されている。でもこれ、裏から見たら、誰が悪いのか結構謎じゃないですか。チャンチーは人を殺してるから確かに悪い。けど、殺された男は、返さなくていい金をずっと搾取していた。この裏側の話は誰にも見えない。最後のニュースのシーンでは「このような残忍な事件が二度と起きないことを願います」って言ってる。実際は、かいなは殺してないのに、世の中には殺したように見えている。そういう、ちょっと入り組んだ構造にしています。
いつ戻ってきても居場所があるグループではありたい
──それが、冒頭の炎上の話と重なってくると。
三川:マリンが炎上した件もそうなんですけど、表面の発言だけを見て、裁いてる状態。これはおかしいなと思ったんです。
マリンは、言い方として良くなかった部分は確かにある。でも僕は、近くにいる人は抱きしめてあげるべきなんじゃないかって思ったんですよ。

──最終的には受け止めてあげる必要があると。
三川:僕やスタッフは、マリンが炎上しても、当たり前に味方でいる。僕は、それはファンも一緒だと思っていたんです。ただ今回、ファンであっても離れていくことはあるんだなと思ったと同時に、ここからが大事なんですけど、ファンもファンで、僕らの「抱きしめるべきだ」という主張に対して、「いや、そんなことはない」という正義があって、僕らに見えてない部分がある。見えない部分が多すぎて、それが見えるわけもない。だからお互い、ずっと表層的になっちゃう。つまり、何かを正義か悪かと決めるのは難しいって思ってるんです。それがこのMVの題材なんです。
──今までもBLUEGOATSには賛否が割れる出来事はあったと思うんですが、今回は質が違ったんでしょうか。
三川:それまでの炎上って、厳密に言うと炎上ではないんですよ。賛否両論なんです。正論を言ってるから叩くに叩けなかった。今回で言うと、明らかに否の割合が多かった。賛否両論ではなく、賛が1、否が9みたいな感じだったんです。もちろん、今回の騒動を経て、人を下げて自分を上げるのは確かに違うかもな、という自覚はあるんです。
──そうした考えのもと、MVという形に落とし込んだ理由は、他にもあるんでしょうか?
三川:例えば、借金取りのチンピラに視点を合わせたとき、実はかいなの親がめちゃくちゃ金持ちで、チンピラの親はその金持ちに潰されていたという背景があったとするじゃないですか。そうしたら、多分チンピラに感情移入するんですよ。
──確かに。そうなりますね。
三川:っていう話なんですよ、僕が言ってるのは。
──どこに焦点を置くかによって、正義も悪も変わっていく。それをこの作品に散りばめたかった。
三川:そうなんです。まさに。
──今回、ファンのみなさんも撮影に参加していますよね。そこにはどんな意図があったんでしょう?
三川:深い意図というよりも、ファンを置いていっちゃうなと思ったので、参加できる感じの方がいいなと思ったんです。あと、とにかくルックを大事にしようと思ってたので、ソナに王道のアイドル衣装を着せたり、という部分もありました。

──実際、MVを公開してみての反響はどうですか。
三川:思ったよりも理解されているんですよ。ただ、僕が炎上を受けて作ったこと、こういうメッセージが実はあることまで分かってる人は多分いないでしょうね。やっぱり、ファンに対して言いにくいんですよ。結論として言うと、離れたファンがいたというのがショックだった。ただ、今は動員自体は伸びていて、新規も入ってきている。ライブの調子もいい。それに、かいなが言っていることが、メッセージでもあるんです。「ただ抱きしめて」って。
──ショックではあったけれど、BLUEGOATSのスタンスは変わらない?
三川:僕らは僕らの正義を振りかざしちゃったんですけど、ファンにはファンの正義がある。お互いがお互いの正義を振りかざした結果、「もう行かなくていい」「応援することはない」となるのは仕方ないと言えば仕方ない。でも、いつ戻ってきても居場所があるグループではありたいと思っている。かいなやメンバーは、いつでも待ってるんだろうなって。それがメッセージですね。
──今回離れてしまった人に対しても、その人なりの事情や正義があって離れている、ということは理解している。
三川:だから、今回のMVは自戒を込めてなんですよ。僕の感覚で言うと、炎上って、身内から叩かれたら微妙なんですよ。あと、身内というかファンは叩かないだろうと思ってたところがあったんで、「身内から叩かれるパターンあるのか」と。でも、きっとファンにはファンの事情がある。僕が想像もしていない、分かり得るはずもないことがあるんだろうな、と。だから、それをちゃんと伝えられたら、という自戒も込めた作品です。
次は太陽編。ど真ん中ストレートの青春パンクアルバムを出します

──BLUEGOATSの炎上への落とし前という点でいうと、マラソンだったり肉体的なひたむきさを見せることで回収するパターンが多かったですよね。今回、作品でアンサーを出すというのは、BLUEGOATSのこの先への所信表明でもあると感じました。
三川:その視点はあんまりなかったけど、確かにそうですね。本来アーティストなんだから、スタンスではなく、曲とか表現物で解消すべきですもんね。ピカソが絵を描かないでマラソンやってたら意味わかんないですもんね。「お前、絵を描けよ」って。
──この経験はこの先の作品にも反映されていくと思いますか?
三川:次は青春パンクの真っすぐなところをやっていきたいと思っていて。炎上しちゃうことは多分この先もあるんですよ。その時は反省するしかないけど、音楽として、ライブとして、改めて真っすぐやる感じで行こうと思いました。このMVを出せて成仏したみたいなイメージですね。アルバムとしても、ダークヒーロー編はこれで終わりというか。
──EP『DAMN』は、「DAMN」(=くそ)で始まり、「DAWN」(=夜明け)で幕を閉じますもんね。
三川:次は太陽編。ど真ん中ストレートの青春パンクアルバムを出します。「BLUEGOATSってこれだよね」となるような、ゴリゴリの。『DAMN』はどっちかっていうとダークヒーロー感が強すぎた気がしていて。本当にバチバチの王道日本語ロックみたいなもので、ちゃんと音楽で所信表明していくのが大事だなと思って、1回それをやろうと思ってます。
──ちなみに、今回のMVは前作までのMVと連動しているのかなと思って見ていた人もいると思うんですが、そこは?
三川:連動してないです。設定の一部を便宜上使いやすかったので使っているだけで。これで「さらば青春の光」と繋がっていたら、チャンチーが殺人犯で物語の設定がやばいことになるんで(笑)。そこは「連動していない」と、はっきり書いておいてください。
──今の時代、SNS上での炎上は誰にでも起こり得ることではあります。決して人ごとではないテーマの作品だなと思います。
三川:だから僕が炎上した暁には、この「DAMN」のMVを思い出してほしい。答えは「ただ抱きしめて」です。大事なのは。

■ライブ情報

<BLUEGOATS ONEMAN LIVE “DAWN” -BAND SET->
2026年10月5日(月)東京・Zepp Shinjuku (Tokyo)
OPEN/START 18:00/19:00
チケット 超VIP30,000円/VIP20,000円/一般A席3,000円/一般B席1,000円/各+1D
チケットURL https://t-dv.com/bluegoats_dawn



