産業カウンセラーの手島将彦による新連載『こころの本〜生きづらさの正体を探る、産業カウンセラー手島将彦のオススメ本』。
『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』(2016年/リットーミュージック)、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』(2019年/SW)の著者であり、音楽業界を中心にメンタルヘルスの重要性を発信し続けた手島がオススメする本を不定期連載で紹介していきます。
Vol.13『うつ病と双極性障害に関する2冊』
メンタルヘルスや心理学などに関して比較的読みやすい本を紹介しているこの連載、13回目は2冊まとめてご紹介。『新版・入門―うつ病のことがよくわかる本』と『新版・双極性障害のことがよくわかる本』(ともに野村総一郎監修・講談社)です。うつ病や双極性障害に関しての書籍は書店等でもたくさん並んでいて、僕もその全てを読むというわけにはいかないのでどれが良いのか選ぶのが難しいのですが、日本うつ病学会理事長でもあった監修者によるこの2冊はイラストが豊富かつ文章量は少なめでとてもわかりやすく、しかし大事なところはしっかり解説されていて、新版なので最新の知見も紹介されているのでおすすめです。
なぜ2冊まとめて紹介するかというと、うつ病と双極性障害が違う病気であるにもかかわらず間違われやすいからです。このふたつの疾患については同時に知っておくべきだと思います。特に、なんでもそうですが具合が悪くなってから調べるというのはかなりの苦労しますし、症状が軽いうちに対処でき、可能なら予防できるに越したことはありませんので、調子が悪くない元気なうちにこそ、こうした知識を予防的に身につけておくことをおすすめします。
先述したとおり、うつ病と双極性障害は似ていますが違う病気です。そのために使用すべき薬も違ってきます。しかし、初診時にうつ状態で受信した場合にはうつ病と診断されたり、躁状態の時には調子が良いように見え、本人もそう思ってしまい、それが病気によるものだと気づきにくかったりすることも診断を難しくさせています。また、双極性障害の3分の2がうつからはじまるとされ、双極性障害の人に明らかな躁・軽躁状態が出てくるまで数ヶ月から数年かかるため、医師が正確な診断を下すことが困難だという事情もあります。うつ病と診断された人の約10%が双極性障害と診断が変わるそうです。
より詳しくは、僕が以前書いた記事の「心が弱いからうつになるのか? 『自虐的世話役』を美化する日本社会」でも取り上げていますので、こちらも参照していただければと思いますが、ここではこの本に書かれている、双極性障害の人が周囲に言ってほしくないこと、してほしくないことを紹介しておきたいと思います。
うつの時
- 以前したことを責められるのは辛い
- 「〜しなさい」「〜すれば良いのに」と命令しないで
- 「元気になれ」「やる気を出せ」「しっかりしろ」と言われてもそれができないから辛い
- 同情などしてほしくない
躁のとき
- 躁をさらに刺激するようなことはやめて
- 言うことすべてを信じないで
- 「困った人ね」「本当にできるならすごいけどね」「なにバカなこと言ってるの」なんてバカにしないで
- 腫れ物に触るようにおそるおそる接しないで
- 躁の状態を利用しないで(欲しいものを買わせるなど)
うつ・躁共通
- 「がんばれ」と言わないで
- 家族どうしで責めあわないで
- からかわないで
- 無視しないで
「こころの本〜生きづらさの正体を探る」のバックナンバーも合わせてチェック!!
Vol.1 『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』
Vol.2 「発達障害」に関する基礎知識を得るための2冊
Vol.3 『ニューロダイバーシティの教科書』
Vol.4 『ジェンダーと脳〜性別を超える脳の多様性』
Vol.5 『はじめて学ぶLGBT〜基礎からトレンドまで』
Vol.6 『ポップスで精神医学〜大衆音楽を“診る”ための18の断章』
Vol.7『世界一やさしい精神科の本』
Vol.8『居るのはつらいよ〜ケアとセラピーについての覚書』
Vol.9『野の医者は笑う〜心の治療とは何か?』
Vol.10『心理学[第5版]』
Vol.11『情報を正しく選択するための〜認知バイアス事典』
Vol.12『サブカルチャーの心理学』
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担
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