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【連載】アセロラ4000「嬢と私」第12回(シーズン1 最終回)

StoryWriter

私は今、震える手でLINEのアイコンを開き、嬢をブロックした(2カ月ぶり2度目)。

緊張から解き放たれ、ベッドに倒れ込み、天井を見つめる。数か月間にわたり広がっていた私の世界は、ついに閉ざされた。静寂が部屋を包み込む。

気怠い昼下がり、全身の脱力感。うつろな瞳、そして巨乳。

そう、目に浮かぶのは嬢のFカップ。いや、Fカップゴールドとでも呼ぶべきあのゴージャズ・ボディ。もしも叶姉妹に末っ子がいたならば、嬢がそのポストを射止めていたはず。それくらい、超絶怒涛のわがままボディ。しかし、今となってはそれも遠い過去の記憶。

嬢と出会ってから約1年。雨ニモマケズ風ニモマケズ、嬢の所属するキャバクラに通い、1日に鏡月のボトル1本とアセロラを飲み少しの柿ピーを食べ、嬢のドリンクは予定の勘定に入れズ……そんな日々とはもうおさらばしたのだ。

私は、今ここで再び嬢との関係を断ち切ることで、社会復帰しようと誓った。そう、今ならまだ間に合うはず。毎日一生懸命働いて、K資金(※結婚するための軍資金)を貯めよう。ここから始まる私の物語に、きっと嬢とは違う新しい女性が現れるはず。職場での出会いもあるかもしれない。

新しくやって来た派遣社員の女の子。溌剌とした仕事ぶり、初々しい表情。はにかんだ笑顔、そして巨乳。いや、巨乳とは言えない。せいぜいDカップだろう。嬢とは2ランクは違うはず。そんなランクで、巨乳を名乗ってほしくない。ほしくないのだ。

「アセくん、またボーっとして! しっかりしてよ?」

川野マネージャーの声で、我に返った。あれから半年。私の世界はすっかり様変わりした。毎日地道に働き、夜は自宅で少々晩酌をし、ときには仕事仲間と飲みにでかけるという、健全な過ごし方をしている。飲み仲間には、打ち解けたお気に入りの女性もいる。前途洋々、人生上々。私は今、生まれて初めてかもしれないというほど、充実した毎日を送っている。

さようなら、嬢。愛しき日々よ。決して忘れはしまい。

季節はめぐり、年が明けた1月。平凡ながら楽しい毎日を送っていた私。明日も、仕事が早い。もう眠らなければ。目覚ましをかけ、ベッドに潜り込み、眠りに落ちる。

……どこからか、けたたましい音が鳴っている。

私の浅い眠りを覚ましたのは、スマホの着信音。深夜0時すぎ。こんな時間に電話してくるとは、なんという非常識。画面を見ると、見知らぬ携帯番号が表示されている。いったい誰からの、なんの電話だろうか。私は、六分の恐怖と四分の好奇心で、電話に出た。

聞こえてきたのは、懐かしいあの声だった。

〜シーズン1・完~

アセロラ4000「嬢と私」のシーズン1はこれで一旦終了です。
現在、シーズン2に向けて、アセロラ4000は絶賛執筆中です。
次週からは番外編として、サブ企画をお届けします。
シーズン2の再開をお楽しみにお待ちください!

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※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。

アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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