【連載】テラシマユウカ「それでも映画は、素晴らしい。」Vol.12『時計じかけのオレンジ』

皆さんには、トラウマ映画はありますか?

人生で初めて観たホラー映画『仄暗い水の底から』が、私にとってのトラウマ映画です。

小学一年生くらいの頃にテレビで放送されている所をたまたま観てしまって以来、ずっと最悪な記憶として残っています。ストーリーの流れはほぼ覚えていませんが、クライマックスの特徴的なシーンは頭から離れません。

この作品を観てしまって以来、しばらくはお風呂とエレベーターにビクビクしていました。幼いながらに、母親と娘が引き離される恐怖を感じた記憶があります。

今ちゃんと観返してみるとそうでもないのかもしれませんが、トラウマすぎて絶対にもう観れない気がします。。

日本のホラー特有のジメッと湿っぽい感じが存分に出ていると思うので、ホラーが好きな人にはオススメです!

こんなトラウマ映画がありつつも、実は私はホラー大大大好き人間です。

『仄暗い水の底から』のトラウマから苦手意識はあったのですが、恐いもの見たさで友達と一時期ホラーばっかり見ていたら、色んなものを通り越して悟りを開くことに成功しました。。

『POV〜呪われたフィルム〜』という川口春奈さんと志田未来さんが出演する作品を観ている真っ最中に、怖すぎてホラーへの悟りが開かれます。

それ以来、恐怖を楽しめるようになり、親に嫌な顔されるレベルで馬鹿みたいにどハマりしてしまいました。絶叫マシン好きな人の怖いけどスリリングな爽快感、みたいな感覚に近いかもしれません。

私の映画好きは、実はホラー映画から来ています。

基本ホラーは洋画ばかり観ていますが、特にパラノーマル・アクティビティ、死霊館、ソウなどシリーズものが好きです。

私は映画館で観るより実家という安心な環境で観るホラー映画が好きなので、帰省したタイミングで何か観たいな〜と思っています!

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ということで、

今週はBiS・ムロパナコのトラウマ映画をご紹介します。

Vol.12『時計じかけのオレンジ』

 

喧嘩、盗み、歌、タップ・ダンス、暴力。山高帽とエドワード7世風のファッションに身を包んだ、反逆児アレックスには、独特な楽しみ方がある。それは他人の悲劇を楽しむ方法である。アンソニー・バージェスの小説を元に、異常なほど残忍なアレックスから洗脳され模範市民のアレックスへ、そして再び残忍な性格に戻っていく彼を、スタンリー・キューブリックが近未来バージョンの映画に仕上げた。忘れられないイメージ、飛び上がらせる旋律、アレックスとその仲間の魅力的な言葉の数々。キューブリックは世にもショッキングな物語を映像化。

私が好きな胸糞悪い空気感の作品でした。

まず初めに、何故『時計じかけのオレンジ』という独特なタイトルがつけられたのか。理由が気になったので調べてみました。

元々ロンドン東部の労働者階級が使っていた俗語、「表面上はマトモに見えるが、その中身はかなりヘン」という意味で、「Queer as a Clockwork Orange」(時計じかけのオレンジのように奇妙な〜)という言い回しがあったそうです。表面上は治療によって更生したアレックスですが、中身はただの洗脳状態、という皮肉として使われているということでした。

思わずなるほど〜と声が出てしまいました。

そして、ゾワッとさせられる驚愕のラストシーンは原作小説の出版ミスが原因だそうです。書き上げた当初は、”アレックスが暴力性を取り戻す”という映画と同じラストだったのですが、出版社の意向により”更生したアレックスが温かい家庭を築こうとする”というラストシーンを付け加えさせられます。

ところが、アメリカで出版された『時計じかけのオレンジ』はこの、後から付け加えた部分がごっそり抜け落ちてしまっており、それを読んだスタンリー・キューブリック監督がそのままのシナリオで進めてしまったことにより誕生した作品、ということになります。

更に、この作品に影響され殺人を犯した少年が現れてしまいイギリスでは上映中止にまでなっています。

鑑賞後も、調べれば調べる程、面白い情報が溢れ出てきてどんどん沼にハメられます。まだ2月に入ったばかりですが、今年観た映画で今のところ一番惹き込まれる作品でした。

アレックス含む少年4人組ドルーグは、いわゆる”若者言葉”を日常的によく使っています。その若者言葉を意訳する事なく進んでいくので何を言ってるか分からないところもありますが、今流行りのJK語とリンクする部分があり、いつの時代でも存在する特有の言葉は魅力がありました。

モラルという存在が完全に欠如しており、アレックスが歌を口ずさみながら女性に性的暴行を加えるシーンは、まるで暴力の楽しさまで表されている程にむごい。

描かれている人間性は最悪ですが、インテリアやファッション、音楽はとても素晴らしい。背景に映る部屋の素晴らしい美術作品達とのコントラストで更に暴力が際立っています。

そして何よりアレックスを演じるマルコム・マクダウェルの凶悪な顔つきが吸い込まれる程に魅力的。ニヤリと笑うアレックスの顔が脳裏にこびり付いています。洗脳後の終始気の抜けた表情との差が凄すぎて、同一人物とは思えません。途中で俳優が変わったと言われても信じれるレベル。

そして、ラストシーンの暴力性を取り戻した瞬間のアレックスの表情に虜になってしまい最後に何回か戻って見直しました。。私は圧倒的に悪い顔のアレックスが好きです。

性と暴力を表現したものはいくらでもありますが、これ程にぼかすことなく描かれていると最初から最後まで一瞬たりとも飽きる暇が無かったです。

1971年に公開された映画とは思えない程のズバ抜けたセンス。

この衝撃的な作品に面白い、と一言で済ませてしまうのは勿体無い程にある意味面白かったです。

最高の”トラウマ映画”でした!

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次回は宮城県女川町の笹かまぼこ屋、蒲鉾本舗高政の社長、高政さんオススメの映画をご紹介します!

それでは、また来週。

※「それでも映画は、素晴らしい。」は毎週火曜日更新予定です。

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テラシマユウカ


2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

テラシマユウカ Twitter

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