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StoryWriter

『チワワちゃん』

 

この連載のVol.1でもご紹介した、私がナンバーワンに大好きな作品『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』の監督でもある二宮健さんの最新作が公開されたので観に行ってきました。

二宮健さんの作る映画は、一本のミュージックビデオを観ているかのような感覚になります。

映像の色彩も音楽も全てがどタイプ。予告編でも使われている爆音のEDMやチワワちゃんが踊り出すシーンもワクワクが止まりません。

現代社会の象徴的なInstagramなどが出てきますが、そんなもの関係無いかのような眩しい青春の様子が映し出されていて、憧れてしまいます。

清々しい程歪んだ青春映画でした。

そして主題歌、Have a Nice Day!さんの「僕らの時代」もめちゃくちゃに良い。

まだまだ言いたいことはありますが、永遠にネタバレを書き続けてしまいそうなので、この辺にしておきます。。

とにかく皆さんも観に行ってください!!!

* * * * * * * * *

ということで、今週はこちらの映画をご紹介します。

映画監督の岩淵弘樹さんオススメ映画です。

Vol.11『青春の殺人者』

 

千葉県の空港近くでスナックを営む若者・斉木順は、ある日自身が普段乗っている車を勝手に持っていった両親から車を取り返しに実家に訪れる。順は、父から自身の恋人・ケイ子の悪口と共に「ケイ子と別れなければスナックを辞めてもらう」と言われてしまい激昂する。順は父を包丁で刺殺してしまい、直後に帰宅した母はその状況に悲観して息子から包丁を奪い無理心中を図ろうとしたため、彼は母をも殺めてしまう。

スナックに戻った順は、ケイ子に「オーナーである両親と大喧嘩したから今日限りで店を閉める」と言って車で彼女を家に送り届け、一方的に別れを告げて去ってしまう。夜遅く再び実家に戻った順は、懐中電灯の明かりだけを付けて両親の遺体を毛布で包んでロープで縛っていた所、ケイ子が家に来てしまう。遺体を見つけたケイ子は血で汚れた風呂場を洗うのを手伝い、順と2人で遺体を車に乗せて夜明け前の港に訪れ2つの遺体に重りを付けて遺棄する。

順はケイ子とドライブして数時間後、海水浴場でアイスキャンディーを食べていると、自身が子供の頃に両親と過ごした海辺での思い出に涙する。その時ふと順は、何事もなかったようにもう一日だけ真面目に働いてみることを思い立ち、ケイ子と2人でスナックに戻ることに。しかしスナックまであと少しと言う所で、空港建設の反対デモ取締りのため機動隊の検問に遭った順は、自責の念にかられて両親を殺したことを自供してしまう。

この作品は、簡潔に表すと”愛憎”という言葉が当てはまると思いました。

開始から約30分でクライマックスかのようなシーンが続きます。残りの1時間半、その余韻を引きずってしまいそうなくらい壮絶。

前半は完全に市原悦子ショー。恐ろしく狂っている市原悦子さんの鬼気迫る演技に全て持っていかれます。本当に凄い、としか言いようがない。

私の中の市原悦子さんのイメージとは違った”女”の部分が醸し出されていて艶やかでした。息子へ放った「ねえ、ふたりでアレしようよ」という言葉。そして息子に刺し殺される直前、シーツに包まれながら「痛くしないで……」というセリフにはゾワっと鳥肌が立ちます。

家族という関係から逃れられず、子離れできない母、親離れできない息子。

そして両親を殺したその後、どうしていいか分からず困惑する順は自分の意志も持てずフラフラとやる事が変わっていく。優柔不断で身勝手で情け無くも、何故かギラギラと生きている感覚が伝わってきます。

そんな役を演じる水谷豊さんは、相棒のスマートな印象が強かったので今よりも目つきも演技もギラギラと男臭く、若いエネルギーを感じます。

衝動のまま殺してしまった過ちの青春。過ちを犯し、ろくに生きることも死ぬこともできない中、衝動的であるからこそ何を起こすか分からない恐怖と面白みがありました。

『青春の殺人者』、文字通りの作品でした。

* * * * * * * * *

次回は、BiS・ムロパナコのトラウマ映画をご紹介します!

それでは、また来週。

※「それでも映画は、素晴らしい。」は毎週火曜日更新予定です。

【連載】Vol.1『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.2『ライフ・アクアティック』(推薦者:渡辺淳之介)
【連載】Vol.3『そこのみにて光輝く』(推薦者:ココ・パーティン・ココ)
【連載】Vol.4『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(推薦者:沖悠央/SCRAMBLES )
【連載】Vol.5『ライフ・イズ・ビューティフル』(推薦者:GANG PARADE マネ 辻山)
【連載】Vol.6『ヘアスプレー』(推薦者:花柄ランタン ぷき)
【連載】Vol.7『はじまりへの旅』(推薦者:ランタン 村上真平)
【連載】Vol.8『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(推薦者:松隈ケンタ)
【連載】Vol.9『シカゴ』(推薦者:ユイ・ガ・ドクソン)
【連載】Vol.10『トイ・ストーリー3』(推薦者:T-Palette Records 古木智志)

テラシマユウカ


2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

テラシマユウカ Twitter

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