真っ当な生き方ってなんでしょうか。
そこそこいい大学を出て、そこそこの会社に就職し、順当に結婚して…… そんな生き方が言わずもがな”普通”とされている現代。
ちょっとでも人と違うことをして生きれば、外れ者として扱われる。
自分が本当にやりたいことを追い求める生き方なんてそうそう出来ないのかもしれません。
だからこそ映画の中でハチャメチャに生きているキャラクター達に想いを馳せてしまうのかもしれません。
映画『止められるか、俺たちを』に出てくる、「映画だったら人をいくら殺したって何したって自由だ」「俺たちは何からも自由であることを証明する」というセリフ。
私が映画を好きな理由がこの言葉に全て詰まっていて感動しました。
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今週はそんな映画だからこそ見られる、ハチャメチャな”生き方”のある作品をご紹介します。
宮城県女川町の笹かまぼこ屋、蒲鉾本舗高政の社長、高政さんオススメ。映画館で20回、家では50回以上観たという作品です!
Vol.13『トレ インスポッティング』
ヘロイン中毒のレントンは不況に喘ぐスコットランドのエディンバラでヤク中仲間と怠惰な生活を送っていた。人のいいスパッド、モテモテでジャンキーのシック・ボーイ、アル中で喧嘩中毒のベグビーらと悲惨な現実を前にしてもドラッグやナンパ、軽犯罪やクラビングを繰り返す毎日。そうこうするうちスパッドが受刑者となりレントンは何度目かのドラッグ断ちを決意。必死の麻薬治療を受けた彼は、ひと旗揚げようとロンドンで仕事を見つけ真っ当な生活を目指す。しかし、未だ更生しないベグビーらがそんな彼を追いかけてきた。
ドラッグ、友情、セックス。スマートなストーリーの中にレントン達のメチャクチャな生き様が描かれていました。
まず強烈なキャラクター性。
ヘロイン中毒だったがヤク断ちを決意し、まっとうな生活を目指そうとする主役のレントン。
薬はやらないがアル中で重度の喧嘩中毒、すぐカッとなり誰彼構わず喧嘩を吹っかけるベグビー。
レントンと同じくヘロイン中毒であり、007の大ファンである女好きのシック・ボーイ。
またまた同じくヘロイン中毒者、ヘロインの金のために盗みを働き逮捕される。小心者だが根はいいヤツで最後にレントンから1人だけ分け前を貰えたスパッド。
薬には手を出していないが、彼女とのセックスをビデオに残す性癖。猫のウンコの中で死んでしまったトミー。
未成年でありながらタバコも吸い、レントンと肉体関係を持つ見た目によらずイかれているダイアン。
主要人物だけでおなかいっぱいになる程、濃い個性の登場人物たちが見所です。
そしてなんと! 『トレインスポッティング』は、つい先週ご紹介した『時計じかけのオレンジ』へのオマージュとなっているシーンがあるそうです。
登場人物たちが地元のクラブへ訪れるシーン。大音響の音楽が流れる店内の美術には”コロバ・ミルク・バー”の影響が溢れています。そしてダニー・ボイル監督はキューブリックの撮影手法も真似ていたそうです。
『トレインスポッティング』と『時計じかけのオレンジ』。薬物や暴力の”中毒性”という面に置いて共通点があり、このふたつの作品の関連性に感動しました。
私が1番に衝撃を受けたのは”スコットランドで最悪のトイレ”です。座薬を入れトイレに駆け込んだレントンが、尻から出した”ヤク”を拾おうと糞だらけの便器に体ごと突っ込み水中へ潜るシーンは今まで見た何よりも衝撃的でした。
私も印象的だった、高政さんの好きなシーンのひとつでもある、ドラッグによる幻覚が見えるシーン。幻覚というものが巧く表現されていて、死んでしまった赤ちゃんが天井を張っている場面は正直めちゃくちゃに怖い。映像もなんだか目が回りそうになる妙な違和感があり、変な気持ちになりました。
この映画のスタイリッシュなお洒落さ。イギー・ポップの「Lust For Life」から始まり、UnderworldのBorn Slippyで終わる音楽。冒頭とラストで繋がる台詞は圧倒的名シーンでした。
ロクでもない社会のクズの話。ドラッグに溺れたレントンの様子は私達が体験し得ないものばかりで。ドラッグによる絶頂の快楽や、そこからの苦しみ。共感できない部分は多いですが、ただそれだけでストーリが進んでいくのではなく、”人生の疾走感”を見事に映し出しています。
何も変わっていないのに最後には清々しい気持ちになっていました。
自分の生き方に疑問を抱いている人は観てみてはいかがでしょうか
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次回は私がいつもお世話になっている美容室、code+LIMのワタローさんオススメの映画をご紹介します!
それでは、また来週。
※「それでも映画は、素晴らしい。」は毎週火曜日更新予定です。
【連載】Vol.1『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.2『ライフ・アクアティック』(推薦者:渡辺淳之介)
【連載】Vol.3『そこのみにて光輝く』(推薦者:ココ・パーティン・ココ)
【連載】Vol.4『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(推薦者:沖悠央/SCRAMBLES )
【連載】Vol.5『ライフ・イズ・ビューティフル』(推薦者:GANG PARADE マネ 辻山)
【連載】Vol.6『ヘアスプレー』(推薦者:花柄ランタン ぷき)
【連載】Vol.7『はじまりへの旅』(推薦者:ランタン 村上真平)
【連載】Vol.8『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(推薦者:松隈ケンタ)
【連載】Vol.9『シカゴ』(推薦者:ユイ・ガ・ドクソン)
【連載】Vol.10『トイ・ストーリー3』(推薦者:T-Palette Records 古木智志)
【連載】Vol.11『青春の殺人者』(推薦者:岩淵弘樹)
【連載】Vol.12『時計じかけのオレンジ』(推薦者:BiS ムロパナコ)
テラシマユウカ
2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。