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【連載】テラシマユウカ「それでも映画は、素晴らしい。」Vol.22『湯を沸かすほどの熱い愛』

StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

私が所属する、GANG PARADEは4月17日にワーナーミュージック・ジャパンからメジャーデビューシングル『ブランニューパレード』をリリースします!

この4月という新しい生活が始まる時期にぴったりな前を向きたい人の背中をぽんっと押せる、そんな曲です。

ミュージックビデオも映画の様な、面白いストーリー仕立てになっているので映画好きのあなたに。

 

そしてカップリング「Dreamer」を作詞させて頂きました。

挑戦したい事へ踏み出せなかったり、建前を気にしてしまったり。一生懸命に何かを成すことをプライドが邪魔してダサく思えてしまったり、笑われるんじゃないかと躊躇う事って少なからずあると思います。そんな葛藤の中で戦っていく様を書きました。

始まりの4月、いい感じに楽しんでいきましょう。

今週はBiSH、セントチヒロ・チッチさんオススメの映画をご紹介します!

Vol.22『湯を沸かすほどの熱い愛』

 

夫の一浩とともに銭湯を営んでいた双葉は、夫の失踪とともにそれを休み、パン屋店員のバイトで娘の安澄を支えていた。ある日職場で倒れた彼女が病院で検査を受けると、伝えられたのは末期ガンとの診断であった。2~3カ月の余命しか自分に残されてはいないと知り落ち込む双葉だったが、すぐに残されたやるべき仕事の多さを悟り立ち上がる。

まずいじめに悩み不登校寸前に陥った安澄を立ち直らせ、級友たちに言うべきことを言えるようにさせること。そして行方不明の一浩を連れ戻し、銭湯を再度開店するとともに家庭を立て直すこと。双葉は持ち前のタフさと深い愛情で次々と仕事をこなし、一浩とともに彼が愛人から押し付けられた連れ子の鮎子をも引き取って立派に家庭を立て直した。その上で、彼女は夫に留守番をさせて娘たちと旅に出る。彼女の狙いは、腹を痛めて得た娘ではない安澄を実母に会わせることだった。道すがら出会ったヒッチハイク青年拓海の生き方をも諭し、義務を果たそうとした双葉だったが、やがて力尽きて倒れる。だが、彼女の深い思いは家族たちを支え、そして拓海や、安澄の実母・君江、夫の調査に当たった子連れの探偵・滝本の心にも救済をもたらすのだった。静かに眠りについた彼女に導かれるように、新たな繋がりを得て銭湯で行動しはじめる人々。彼らを見守る双葉の心が、煙となって店の煙突から立ち上った。

とても素晴らしい作品だと心の底から感動しました。

ガンによる余命を宣告された母親、双葉。ストーリーが進むにつれどんどん病状が悪化していきますが、それが物語の主軸という訳ではなく、残り僅かな命で家族に惜しみなく愛情を注いだ母の姿が描かれています。

自分が死んでしまう前に、娘にいじめに立ち向かう力を教え、蒸発した夫を連れ戻し、夫が連れてきた子どもを受け入れ、銭湯を再開し家庭を建て直します。母親が自分の事を顧みずに、家族の為に生きる。そんな死に直面している中でも母親の強さというものをひしひしと感じました。

宮沢りえさんの演技が素晴らしく、次第にガンによって弱っていく姿のリアルさが怖かったです。

そんな母親ですが普段はとても明るい性格で、「湯気のごとく、店主が蒸発しました。当分の間、お湯は沸きません。」と閉店した銭湯に貼り紙をするユーモアの持ち主。ただただ病気に苦しみ泣かせてくるだけの映画ではなく、笑いの要素も入れこまれています。なので悲しい気持ちで鑑賞する時間は思ったよりも少なく楽しく観れました。

個人的に王道泣かせ映画で泣くことは滅多にないのですが、この作品では病気と戦う姿と明るく生きようとする姿のコントラストや、周りの人間が双葉によって変わっていく姿に思わず涙が溢れてきます。

オダギリジョーさん演じる頼りない父親の一浩。こういうダメンズ役のハマり方が凄い。新婚の時に交わしたピラミッドを見にいくという約束をどうにか果たす為にみんなに協力してもらい作った人間ピラミッドのシーンは印象的で。

頼りが無くなかなか約束を果たせない一浩、お母ちゃんのように強くなれない父親の性格に似たところがある安澄、孤独と戦う連れ子の鮎子、妻を亡くし娘にその真実を打ち明けられない探偵、母親に会いたい探偵の娘、行き先も目標も分からないヒッチハイカーの拓海。登場人物それぞれが皆何かを抱え、双葉を通して自分の問題に立ち向かっていくというストーリーがあった上での双葉に捧げる人間ピラミッドは涙腺が大崩壊してしまいました。

そして要所要所に伏線が張られていることで、次第に明かされていく安澄の実母など様々な真相にとても見応えを感じます。

ラストにドーンッと『湯を沸かすほどの熱い愛』という文字を入れてくるシーンは最後まで観たからこそ、このタイトルに帰ってくる、しっかりとこの物語が締めくくられる演出だと思いました。

この作品を通して、”死”を意識したからこその”生きる”人間の強さを知りました。

久しぶりに邦画をご紹介しましたが、どこか心に寄り添ってくれる様な空気感のある映画でした。

* * * * * * * * *

そして次回は、特別編!

映画公開前に先行試聴させて頂いた作品のレビューを書かせて頂く事になりましたので、お楽しみに!

それでは、また来週。

※「それでも映画は、素晴らしい。」は毎週火曜日更新予定です。

【連載】Vol.1『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.2『ライフ・アクアティック』(推薦者:渡辺淳之介)
【連載】Vol.3『そこのみにて光輝く』(推薦者:ココ・パーティン・ココ)
【連載】Vol.4『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(推薦者:沖悠央/SCRAMBLES )
【連載】Vol.5『ライフ・イズ・ビューティフル』(推薦者:GANG PARADE マネ 辻山)
【連載】Vol.6『ヘアスプレー』(推薦者:花柄ランタン ぷき)
【連載】Vol.7『はじまりへの旅』(推薦者:ランタン 村上真平)
【連載】Vol.8『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(推薦者:松隈ケンタ)
【連載】Vol.9『シカゴ』(推薦者:ユイ・ガ・ドクソン)
【連載】Vol.10『トイ・ストーリー3』(推薦者:T-Palette Records 古木智志)
【連載】Vol.11『青春の殺人者』(推薦者:岩淵弘樹)
【連載】Vol.12『時計じかけのオレンジ』(推薦者:BiS ムロパナコ)
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テラシマユウカ


2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

テラシマユウカ Twitter

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