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産業カウンセラーの手島将彦による新連載『こころの本〜生きづらさの正体を探る、産業カウンセラー手島将彦のオススメ本』。

『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』(2016年/リットーミュージック)、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』(2019年/SW)の著者であり、音楽業界を中心にメンタルヘルスの重要性を発信し続けた手島がオススメする本を不定期連載で紹介していきます。

Vol.18『オチツケオチツケこうたオチツケ こうたはADHD』

メンタルヘルスや心理学などに関して比較的読みやすい本を紹介しているこの連載、18回目に取り上げるのも前回同様に絵本で『オチツケオチツケこうたオチツケ こうたはADHD』(文・さとうとしなお/絵・みやもとただお/岩崎書店)です。タイトルにある通り、ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)に関するお話で、作者のさとうとしなおさんは、当時絵本作家であると同時に山形県立養護学校の教員でもあった方です。

ADHDは不注意・落ち着きのなさ、衝動性などが生まれながらの特性としてあって、それが生活上になんらか悪影響を及ぼしている状態が6ヶ月以上続いていることと定義されます。詳しくは以前別の連載「不注意? 落ち着きがない? 周囲に求められるADHDという特性の理解」にも書きましたのでご参照ください。

絵本の一節を紹介します。

ぼくは ADHDなんだって
さんすうの にがてな 車
おんがくが にがてな 車
みんな いろんな 車にのっている
ぼくが のってる ADHDごうは
ブレーキが にがてな 車
ぼくが じょうずに のれば
この車は けっこう すごいらしい

お話の中でADHDのこうた君自身だけでなく、その保護者の方が悩まれる描写などもありますが、そうしたことも含めて、ADHDのことをあまり知らない人に届いて欲しい内容です。巻末に児童精神科医の佐々木正美先生が「決して聞き分けの悪い子どもでも、わがままな子どもでもないのです」ということをよく理解して欲しい、そして「この絵本に描かれているような『やさしさ』を子どもたちは求めているのです」と書かれています。

そもそも発達に関して何らかの特性を持っていない人は誰一人としていません。それぞれがそれぞれの特性を持って生きています。ただ、少数派であるがゆえに、置かれている環境と折り合いのつけにくい人がいる場合があるということを理解することで、お互いに尊重しあって、生きやすい世界に近づいていけるのだと思います。


「こころの本〜生きづらさの正体を探る」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』
Vol.2 「発達障害」に関する基礎知識を得るための2冊
Vol.3 『ニューロダイバーシティの教科書』
Vol.4 『ジェンダーと脳〜性別を超える脳の多様性』
Vol.5 『はじめて学ぶLGBT〜基礎からトレンドまで』
Vol.6 『ポップスで精神医学〜大衆音楽を“診る”ための18の断章』
Vol.7『世界一やさしい精神科の本』
Vol.8『居るのはつらいよ〜ケアとセラピーについての覚書』
Vol.9『野の医者は笑う〜心の治療とは何か?』
Vol.10『心理学[第5版]』
Vol.11『情報を正しく選択するための〜認知バイアス事典』
Vol.12『サブカルチャーの心理学』
Vol.13『うつ病と双極性障害に関する2冊』
vol.14『統合失調症がやってきた』
Vol.15『相方は、統合失調症』
Vol.16『疾風怒濤精神分析入門』
Vol.17『すずちゃんののうみそ』

手島将彦(てしま・まさひこ)
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライヴを観て、自らマンスリー・ライヴ・ベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。アマゾンの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり産業カウンセラーでもある。
https://teshimamasahiko.com

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