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産業カウンセラーの手島将彦による新連載『こころの本〜生きづらさの正体を探る、産業カウンセラー手島将彦のオススメ本』。

『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』(2016年/リットーミュージック)、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』(2019年/SW)の著者であり、音楽業界を中心にメンタルヘルスの重要性を発信し続けた手島がオススメする本を不定期連載で紹介していきます。

Vol.17『すずちゃんののうみそ〜自閉症スペクトラム(ASD)のすずちゃんの、ママからのおてがみ』

メンタルヘルスや心理学などに関して比較的読みやすい本を紹介しているこの連載、17回目に取り上げるのは絵本で『すずちゃんののうみそ〜自閉症スペクトラム(ASD)のすずちゃんの、ママからのおてがみ』(文・竹山美奈子/絵・三木葉苗/監修・宇野洋太/岩崎書店)です。

絵本ですので、これまで紹介してきた中では最もわかりやすい本と言えるかもしれません。ライターであった作者の竹山美奈子さんがASDの長女の卒園の際にクラスメートに向けて「感謝の手紙」としてわかりやすく伝えようと書いたもので、それをイラストレーターの三木葉苗さんらが協力して紙芝居仕立てにしたのが始まりです。それを元に、大人向けの注釈や解説などを加えて絵本として出版されたのですが、その内容が評判を呼び、台湾や韓国でも翻訳されて出版されています。

ASDが生まれつきの脳の機能の特性で、育て方の問題などではないということ、なので「治る・治す」ということではなく、どう活かすか、補うかと考えること、多数派の人たちとは仕組みの違いや感覚の過敏・鈍麻などがあることなど、とてもわかりやすく、専門的な注釈も簡潔につけられていますので、同じくらいのお子さんがいらっしゃる方はもちろんですが、そうでない人にもおすすめできる絵本です。単純に絵本としても素晴らしいので、絵本好きの方にもおすすめです。

詳しい内容に関しては絵本で分量も少ないためあまり触れるのは控えておこうと思いますが、監修者の宇野洋太さんの言葉を引用して紹介しておきたいと思います。

ASDのある方々と接し、その文化を学ぶ中で、ASDに留まらず、人としての多様性と尊厳というものを教わっているように感じています。すずちゃんと園の子どもたちの交流の様子から、ASDの理解はもとより、お子さん、家族、そして日常会われている大切な方々との異文化交流が、より豊かなものとなるための手がかりを探していただけるのではないかと思っています。

「人としての多様性と尊厳」は誰しもが無関係ではありません。多様性自体は良いものでも悪いものでもなく、事実です。ただその事実を多く知っていくことで、皆がより生きやすく豊かな人生を送れる方法も見つけられるのだと思います。


「こころの本〜生きづらさの正体を探る」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』
Vol.2 「発達障害」に関する基礎知識を得るための2冊
Vol.3 『ニューロダイバーシティの教科書』
Vol.4 『ジェンダーと脳〜性別を超える脳の多様性』
Vol.5 『はじめて学ぶLGBT〜基礎からトレンドまで』
Vol.6 『ポップスで精神医学〜大衆音楽を“診る”ための18の断章』
Vol.7『世界一やさしい精神科の本』
Vol.8『居るのはつらいよ〜ケアとセラピーについての覚書』
Vol.9『野の医者は笑う〜心の治療とは何か?』
Vol.10『心理学[第5版]』
Vol.11『情報を正しく選択するための〜認知バイアス事典』
Vol.12『サブカルチャーの心理学』
Vol.13『うつ病と双極性障害に関する2冊』
vol.14『統合失調症がやってきた』
Vol.15『相方は、統合失調症』
Vol.16『疾風怒濤精神分析入門』

手島将彦(てしま・まさひこ)
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライヴを観て、自らマンスリー・ライヴ・ベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。アマゾンの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり産業カウンセラーでもある。
https://teshimamasahiko.com

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