私は今、ホラン千秋が、好き。
黒髪ショートカット、太い眉毛。勝気な態度、そして巨乳。
いや、ホラン千秋は、巨乳ではない。しかし、私の瞳には、ニュース番組の中で淡々と事件を報じるホラン千秋の姿は、巨乳に映っている。
その理由は、地元のキャバクラ「キャンドル」で出会った嬢、アキちゃんが巨乳だったから。「アキ」と「千秋」。名前が近いという、奇跡。
もしかしたら、「アキ」とは、本名ではないのかもしれない。本名で嬢になる女性など、いるだろうか。いや、いない。きっと、源氏名だ。アキちゃんの本名は、「千秋」に違いない。もちろん、「千秋、愛してるぞ」の方の千秋では、ない。ちあきなおみのちあきでも、ない。コロッケの物真似も関係ない。大好きなホラン千秋の、千秋。だから、アキ。そう決まった。
東京に戻った私は、毎日録画した番組内のホラン千秋をアキちゃんに重ねて見つめている。思い出す、アキちゃんとの出会い。
身長がそこそこ高く、サイズはEカップ(※アセロラ4000調べ・本人確認済)。朗らかで純朴な笑顔が、まぶしい。アキちゃんをアキ嬢と言ってしまうと、あき竹城を連想してしまうため、私はあえてアキちゃんと、呼ぶ。
「今日は飲んできたんですかー?」
嬢らしい、ファーストコンタクト。アキちゃんも例にもれず、キャバクラの教科書通りの接客を身に付けていた。もしかしたら、キャバクラ養成学校でもあるのだろうか。吉本の芸人養成学校「NSC」(New Star Creation)ならぬ「CSC」(Cabaret Star Creation)が存在するのかもしれない。
となると、CSC1期生には、ダウンタウンレベルのレジェンド的キャバ嬢がいるに違いない。会いたい、ダウンタウン嬢に。すべてのキャバ嬢は、「ダウンタウン嬢以前」と「ダウンタウン嬢以後」に分けられるのかもしれない。
「キャバクラ養成学校? あるわけなくない~!? ウケる、超ウケる!」
私の純粋な疑問に、爆笑するアキちゃん。両足を広げバタバタとしながら、両手をチンパンジーのおもちゃのように叩きながら、いつまでも大笑いしている。
そんなに面白いかといえば、たいして面白くない。しかし、その素朴なリアクション、純真無垢な接客態度に、私は自らの原点を見た。
ここは、はじまりの地。キャバクラという見果てぬ夢を見ながら歩く、キャバクラウォーカーたちにとっての宿場町なのかもしれない。
感慨深くなった私は、めずらしくマイクを握った。曲はもちろん、カルロストシキ&オメガトライブの「君は1000%」。
情感を込めてたっぷりと歌うと、うっとり聴き入っているアキちゃん。
「すご~い! 知らないけど、昔の曲だよね。いい曲だよね、知らない曲だけど」
私の中のカルロスが、自尊心をくすぐられる。リクエストに応え続いて「アクアマリンのままでいて」へ進もうとする私に、ボーイが近づいてくる。もしかして、カルロストシキ&オメガトライブと1986オメガトライブの違いについて、ひとこと言いたいのだろうか。
「まもなくお時間ですが、ご延長、いかがですか?」
丁寧に、ひざまずきながら私にお伺いを立てる、ボーイ。だまって私を見つめるアキちゃん。延長を促したりしないところが、慎ましい。
私は、とりあえず現在までのお会計の開示請求を行った。すかさずレジに向かい、現時点でのお会計、30分延長した場合、60分延長した場合、の3パターンを提示するボーイ。
現時点でのお会計金額を見て、私は目を見開いた。
「お会計 7,000円」
安い。
60分セット、サービス税等コミコミで5,000円。そこに加えて、アキちゃんの場内指名料が2,000円。
安い、安すぎる。
私は迷うことなく、60分の延長を、コールした。
〜シーズン3 第14回へ続く〜
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第1回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第2回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第3回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第4回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第5回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第6回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第7回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第8回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第9回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第10回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第11回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第12回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第13回
※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000