【連載】アセロラ4000「嬢と私」シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第16回

「おはー! 昨日はありがとう! また待ってるね」

地方の嬢、アキちゃんからのラブレター(LINE)を見つめながら、高速バスに揺られる私。

歌舞伎町に、エリカ嬢という本妻(本指名)を持ちながら、ついつい浮気(場内指名)をしてしまったことに若干の後ろめたさを感じながら、東京へと向かっていた。

4列シートのバスの中は、スキー帰りらしき若者たちで満席だった。早朝の出発ということもあり、乗客の多くは爆睡している。窓際に座った私の隣席でも、20代前半らしき女性がスヤスヤと寝息を立てていた。

ときおり、満員電車でよくあるように、首がカクンッとなり私の肩に顔を乗せてくる女性。さりげなく、寝顔を覗き見る。

清潔そうな黒髪ショート、鼻筋の通った顔。無防備な鎖骨、そして巨乳。

グラビア界の黒船、リア・ディゾンに、似ている。

そっと肩をずらし、体制を直す私。同時に、みなぎる股間のポジション調整も余儀なくされる。早朝の効果もあるとはいえ、不惑の40代にして、この活力。私にとって、前夜のアキちゃんとの出会いがいかに刺激的だったかを痛感した。

黒船こと、隣の女性が目を覚ます。すかさず目を閉じ、眠ったふりをする私。黒船は、起き抜けでハッと我に返ったようにスマホを取り出すと、なにやら猛スピードで文字を打っている。

薄目を開けて、その様子をチェックする私。どうやらLINEを打っているらしい。

「おぱよ。今日、同伴できる?」

まさかの嬢。ここにも、嬢。田村でも嬢、谷でも、嬢。

日本では、2030年には人口の約7割がキャバ嬢、もしくはガールズバー勤務になると予想されている(※アセロラ4000調べ)。

歌舞伎町の嬢から離れ、地元の嬢と出会い、そして今、高速バスの中で黒船嬢と出会う。『フォレスト・ガンプ/一期一会』を彷彿とさせる、私の数奇な運命。

キャバクラを愛し、キャバクラに愛された男、アセロラ4000だからこその、出会い。黒船嬢が、どこの嬢なのか、知りたい。思い切って話しかけようと思ったそのとき、私のスマホがLINEの受信を告げた。

「おはよん! アセちゃん、今週いつ来れる?」

歌舞伎町「ロザーナ」のエリカ嬢からの、ディナー(来店)の誘い。しばし返答に迷う、私。そこに、またしてもLINEが届いた。

「来週、東京行こうかな? でも、嵐が5人揃うときのが、いっか(笑)」

アキちゃんから、(自称)プロデューサーの私への、牽制中。嵐への道のりを、慎重に探っている様子が伺える。彼女は、本気で嵐に会うつもりなのだ。

しかしそれは、決して叶うことのない、ネバーエンディングストーリー。嵐に会えることなど、百恵ちゃんの現役復帰と同じくらい、ありえない。

嵐に会わせるなどと一度も言っていないものの、プロデューサーと偽ってしまった以上、私にも責任はある。悩む、私。

「今度きたとき、シャンパンで乾杯しよっか?」

エリカ嬢が、私を追い詰める。

「嵐の好物って、何かなあ?」

地元の名産品を持参しようと思っている様子の、アキちゃん。嵐をなんだと思っているのだろうか。

先ほどから次々とLINEが届く私のモテ男ぶりに、隣の黒船嬢は拗ねたらしく、ふて寝してしまった。すまない、黒船嬢。私は今、二人の嬢で、揺れている。鎖国を解くことは、できない。

二人の嬢への対応に煮詰まった私。こんなときは、そうだ、エトウさんだ。ガサガサボイスのエトウさんに、相談しよう。いざというときは、年相応の知恵を絞り出してくるエトウさん。意外と、頼りになるのだ。

私はまず、アキちゃんが暴走を続ける嵐問題に決着をつけるべく、エトウさんに、その旨をLINEで相談した。このままでは、アキちゃんは、嵐に会うために、上京してきてしまう。どうすれば、いいのか。エトウさんの答えは、秒速で帰ってきた。

「オレ、松潤、やりますよ」

私は一瞬芽生えた殺意を抑え込み、寝た。

〜シーズン3 第17回へ続く〜

シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第1回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第2回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第3回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第4回
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アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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