ついに、新元号が発表された。
「同伴元年」
いや。私がこの玉稿を執筆しているのは、新元号の発表前夜、3月31日(日)23時。この時点では、まだ新元号は発表されては、いない。
私は、考える。
もし、私がかねてから提案してきた新元号案「同伴」が採用されたなら。政府はすぐに「同伴」に対する法律を制定するだろう。
そう、通常の同伴では、3,000円がお会計に加算される。嬢と待ち合わせ、高級な食事を奢り、さらに店でも同伴料を徴収されるという、キャバクラウォーカーにとって厳しい負荷。その負荷が、軽減される可能性がある。定率減税に続く政府の景気対策の核として期待される、同伴減税である。
私は、考えながら、TBSテレビをつけた。今日の「情熱大陸」は、TWICE。そう、韓国人と日本人の混成ガールズグループの、初の日本でのドームツアーにおけるドキュメントが取り上げられていた。
9人いるメンバーの何人かは、きっと整形手術を施しているのだろう。あまりにも顔が整いすぎている。しかしながら、韓国では整形は当たり前。後ろめたい気持ちなど、誰も持ってはいない。
そんな整形のビッグウェーブは、日本にもやってきた。歌舞伎町「ロザーナ」のエリカ嬢が、送って来たLINE。
「しばらく、店休むから」
日曜日以外、ほぼ休みなく出勤を続ける、エリカ嬢。いきなりの休養宣言に、私は動揺した。これでは、同伴どころでは、ない。いったい、何があったのか。
「カスタマイズ、してくるから」
カスタマイズ。どうやら、整形をするため、しばらく休むらしい。
「カスタム済んだら、会いに来てくれよな!」
悟空の次回予告の言い方で、私への招集をかけるエリカ嬢。よく考えたら、整形前と整形後を知る嬢など、会ったことがない。そもそも、整形をカミングアウトしてくれることなど、普通の関係ならば、ない。
私は、エリカ嬢がいかに私のことを信頼し、心を寄せているのかを、知った。もしかしたら、整形が済んだと同時に、私に逆プロポーズをするつもりなのかもしれない。
戸惑う私。なぜならば、いまだに地方の嬢、アキちゃんからも毎日LINEが届いているのだから。できることなら、体が2つ欲しい。「平成の火野正平」こと、罪深い私。しかし、その平成ももう終わり。新元号となり、私は「同伴の火野正平」となってしまう。
そんな苦悩の中、整形休暇中のエリカ嬢からのLINEが届いた。
「目が、めっちゃゴン腫れなんだけど、ヤバい」
そこには、すっぴんでマスクをかけ、こちらを見つめるエリカ嬢の姿。
深く刻まれた二重瞼、どでかい目玉。尖った鼻筋、そして巨乳。
どう見ても、カスタム前の方が、いい。しかし、整形後の嬢のセンシティブな心に対して、デリカシーのない言葉はタブー。私は、最大限の言葉を、かけた。
「大原麗子に、似てるって、ホント!?」
昭和、平成を駆け抜けた女優、大原麗子。これ以上にない賛辞を送った私に対し、信じられない嬢のリアクションが返って、きた。
「てか、誰だよwww」
奥ゆかしいエリカ嬢。あまりの褒められように、照れているのだ。私は、夏目雅子にも似ているという、第二の矢として用意していた言葉を飲み込んだ。
「4月になったら、完全復帰するから、ニューエリカに会いに来てね」
新元号の発表は、4月1日。ニューエリカ嬢お披露目も、4月1日。
私は、第二希望の新元号案を「整形」として、眠りに、就いた。
〜シーズン3 第19回へ続く〜
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※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
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