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StoryWriter

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平成最後の日ですね。

皆さんいかがお過ごしでしょうか。

時代の変わり目に直面するのはもちろん初めてのことなのですが特に何か変わる気がしない私です。

これは私の中だけの平成あるあるかもしれませんが、年号が変わると言われてから今が一体平成何年なのか分からなくなる現象に襲われます。

昭和から平成、平成から令和。

馬鹿みたいですが名前的にもバージョンアップしてる気がしてなんだかんだワクワクしています。

年号が変わるだけで特に何も変わる気がしてない自分に悔しいので、令和は今よりも更に自分の人生を良い方向に変化させ続けれるように生きたいと思っています。

皆さん今後とも何卒宜しくお願い致します。

今週はGANG PARADEのメンバー、ハルナ・バッ・チーンのオススメ映画をご紹介します。

Vol.24『万引き家族』

 

街角のスーパーで、鮮やかな連係プレーで万引きをする、父の治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)。肉屋でコロッケを買って、寒さに震えながら家路につくと、団地の1階の廊下で小さな女の子(佐々木みゆ)が凍えている。母親に部屋から閉め出されたらしいのを以前にも見かけていた治は、高層マンションの谷間にポツンと取り残された平屋に女の子を連れて帰る。母の初枝(樹木希林)の家で、妻の信代(安藤サクラ)、彼女の妹の亜紀(松岡茉優)も一緒に暮らしている。信代は「もう少し金の匂いのするもん拾ってきなよ」とボヤきながらも、温かいうどんを出してやり名前を聞く。「ゆり」と答える女の子の腕のやけどに気付いた初枝がシャツをめくると、お腹にもたくさんの傷やあざがあった。深夜、治と信代がゆりをおんぶして団地へ返しに行くが、ゆりの両親が罵り合う声が外まで聞こえる。信代には、「産みたくて産んだわけじゃない」とわめく母親の元に、ゆりを残して帰ることはできなかった。

翌日、治は日雇いの工事現場へ、信代はクリーニング店へ出勤する。学校に通っていない祥太も、ゆりを連れて”仕事”に出掛ける。駄菓子屋の”やまとや”で、店主(柄本明)の目を盗んで万引きをするのだ。一方、初枝は亜紀を連れて、月に一度の年金を下ろしに行く。家族の皆があてにしている大事な〝定収入”だ。亜紀はマジックミラー越しに客と接するJK見学店で働き、”4番さん(池松壮亮)”と名付けた常連客に自身と共鳴するものを感じ、交流がはじまる。

春の訪れと共に、「荒川区で5歳の女の子が行方不明」というニュースが流れる。両親は2ヶ月以上も「親戚の家に預けた」と嘘をついていたが、不審に思った児童相談所が警察に連絡したのだ。ゆりの本当の名前は「じゅり」だった。呼び名を「りん」に変え、髪を短く切る信代。戻りたいと言えば返すつもりだったが、じゅりはりんとして生きることを選ぶ。信代は、「こうやって自分で選んだ方が強いんじゃない?」と初枝に語りかける。「何が?」と聞かれた信代は、「キズナよキズナ」と照れながらも、うれしそうに答えるのだった。

時は流れ、夏を迎え、治はケガが治っても働かず、信代はリストラされるが、それでも一家には、いつも明るい笑い声が響いていた。ビルに囲まれて見えない花火大会を音だけ楽しみ、家族全員で電車に乗って海へも出掛けた。だが、祥太だけが、”家業”に疑問を抱き始めていた。そんな時、ある事件が起きる──。

第42回日本アカデミー賞では最優秀作品賞を始めとし、最優秀監督賞「是枝裕和」や最優秀主演女優賞「安藤サクラ」、最優秀助演女優賞「樹木希林」、最優秀音楽賞「細野晴臣」など多くの部門で受賞している作品です。

脚本段階では子どもに「お父さん」「お母さん」と呼んでほしいと願う主人公の想いが重点的に描かれており、撮影中につけられていた映画のタイトルは『声に出して呼んで』だったそうです。

公開されてすぐに映画館へ観に行き、しばらく余韻を引きずった記憶があります。

是枝監督の映画といえば”海街diary”や、”そして父になる”など、様々な見方で家族というものをスクリーンに映し出し、素晴らしく心に残る作品ばかり。2018年6月8日に公開されたこの作品もすぐに世間で話題に上がっていました。

誰がどう観ても心に響くものがある作品と言っても過言ではない。

明確な状況説明などは一切なくストーリーが進むにつれて小出しにされていく描写からこの家族が一体何なのか、家族として繋がっている背景などを読み解いていく、正に映画の面白さが存分に堪能できる作品です。

一つ屋根の下で暮らす6人の家族、血縁関係は一切ありません。万引きをして生活するという、真っ当とは言えない暮らしをしている中でも彼ら6人は切実に”家族”というものを求めている事が伝わってきます。傷ついて集まってきたからこそ、傷ついた人を思うことができる。そんな家族の中で幸せを感じれる事が、とても温かくて、でもなんだか切ない気がしてしまいます。

それぞれが幸せを求めたどり着いた”万引き家族”という居場所。その家族の在り方に疑問を抱きあらゆる方向へそれぞれの気持ちが動き出していきますが、心の奥底から互いの存在を大切に思い続けているが故の行動である事が見て取れます。血の繋がりなんてものを超越した関係を築き上げることに少しの希望を感じました。

こんな奇妙な家族だからこそ、海水浴場へ家族6人で出かけるという夏休みとしては当たり前かもしれない思い出がすごく深く意味のあるものに感じ、この幸せな光景が長くは続かないと予感できてしまう様子に寂しさを覚えたり。

そして、ストーリーに加えキャスト陣も神がかっておりリリーフランキーさんや安藤サクラさん、樹木希林さんなど日本の映画界を代表する方々ばかり。この素晴らしいキャスト陣が演じるごく自然すぎる日常を切り取ったようなシーンがある事によって、より感情移入してしまいます。

また、この作品は家族についてだけではなく現代社会の問題についても細かく描かれています。貧困による格差や虐待、年金不正受給、そんな全ての社会問題に直面している都会の片隅の生活、言うなれば”底辺の生活”に焦点が当てられている。警察の取り調べで治が言った「他に教えてやれる事が何もないんです。」という言葉も、そんな底辺で何とか生き延びてきたからこその言葉だったと思います。

治や信代がどれだけ愛を持って父親母親代わりとして祥太達を育てようとしても、社会的に見ればただ子供の教育の場を奪い将来を潰してしまっているだけという現実が無惨に突き刺さりました。

最後まで治の事を父ちゃんと呼ばなかった祥太が、バスの中で小さく”父ちゃん”と呟くシーンは堪らず涙してしまいます。

あらゆる方向から”家族”という概念について考えさせられる万引き家族、愛だけでは戦えない社会の厳しさを見せつけられました。はっきりとした最終的な答えを出してこない是枝監督の作品は、余韻が深く楽しめる気がしてとても好きです。

平成が終わる前に是非とも観て欲しい映画のひとつです。

* * * * * * * * *

そして次回は私の父のオススメ映画をご紹介します!

それでは、また来週。

※「それでも映画は、素晴らしい。」は毎週火曜日更新予定です。

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【連載】Vol.7『はじまりへの旅』(推薦者:ランタン 村上真平)
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テラシマユウカ


2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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