2019年のWACK合宿オーディションに参加し、WAggへの加入を果たしたセントチヒロノイモウトこと、ナアユ。話を訊けば、足を負傷していたにも関わらず苦手な毎朝のマラソンを言い訳せずに走っていたという。これまでの人生で一度も最後までやりきったことのなかったというナアユは、どのような人生を歩み、そしてどんな想いで合宿に臨んだのか。WAggのお披露目ライヴ翌日、ナアユに話を訊いた。
インタヴュー&文:西澤裕郎
写真:外林健太
内に秘めたネガティブがあります
──合宿のときから髪の色も雰囲気もだいぶ変わりましたね。あれから約2ヶ月しか経ってないですけど、自分でも変わったなと思うんじゃないですか?
ナアユ:お披露目ライヴのMCでも言ったんですけど、今まで知らなかったこととか、できなかったことをたくさん手に入れたし、見た目も変えたんですけど、まだネガティブに考えすぎることが多いです。
──合宿の最終アピールでも「自分はネガティブで…」って話していましたけど、そんなにネガティブな感じは伝わってこなかったですけどね。
ナアユ:めっちゃ内に秘めたネガティブがあります。
──(笑)。初インタビューなので、そこらへんについても訊いていきたいなと思います。小さい頃は、どんな子どもだったと言われることが多いですか?
ナアユ:親からは「昔は元気で走り回ったりしていたのにね」って言われることが多いです。でも、記憶にある自分はあまり元気じゃなくて(笑)。走るのは大嫌いだったし、体力も全くなくて。小2ぐらいの頃にスイミングを1回やったきり、体育以外では運動もしていないし、中学校では美術部に入りました。高校もデザイン系の学校に進んだので、運動は全然しませんでした。
──学校生活はどんな感じだったんでしょう。
ナアユ:小学校時代は楽しい記憶がないです。中学校ではズル休みを知って休みまくったんですけど、ビビリだからギリギリ単位が取れるくらいの日数行っていて。小中学校って先生ぐらいしか関わる大人がいないから、大人が無理ってなったときがあって。友達に関しても、一生一緒にいたいと思う子はここにはいないとずっと思っていました。絵が好きで絵を描いていたので、中学校で美術部に入って「絵上手いね」って褒められて。高校はデザイン科に進んだんですけど、専門の学科だから美術の授業の数が多くて、だんだん楽しくなくなってきて……。
──楽しかった絵が勉強になってきて嫌になってきてしまったと。
ナアユ:絵って自分で好きなように描けるし、やり方も自由なものだと思っていたんです。でも、描き方の方法にもいろいろあって、美術系の専門デッサンとかは自分に向いていないと思ってしまい、友達関係もうまくいかず。
──友だちとは何が上手くいかなかったんでしょう。
ナアユ:相手との距離が近くなりすぎると慣れて適当になっちゃうんですよ。それでお互いイライラすることが増えていったんだと思います。でも、それがあったことで、友達との適度な距離感の保ち方を学べたのかなって。
──よくも悪くも仲良くなったら全部さらけ出せるってことでもありますよね。腹を割って話せる子もいたんじゃないですか。
ナアユ:美術系の高校だからか分からないんですけど、真面目な人が多くて。その中で友だちになれたのが2、3人ぐらいしかいなくて。その人たちも1回、もう付き合うのがダメだと思ったことがありました。今は仲良いんですけど。
──何かに縛られているみたいな気持ちが強かったんですかね。
ナアユ:親は今まで私がやりたいってことを全部やらせてくれていて。だから親に縛られていたとかじゃなくて、何をやっても自分に自信がなかったんです。例えば、褒められても「絶対、嘘だ!」と思っちゃう。授業で絵を自由に描いていても、先生が横で見ていたら、下手なのに描いているのを見られていると思って描けなくなっちゃって。本当に自信がないんだと思います。
言い訳をしないようにしようと思って、言わなかった
──そんな自信がないと語るナアユさんが〈WACK合宿オーディション〉を受けることになったきっかけはなんだったんでしょう?
ナアユ:2、3人しかいなかった友だちの中の1人から「(BiSHのセントチヒロ・)チッチさんに似ている」って言われたのがきっかけでBiSHさんを知ったんです。そこからWACKグループを全部好きになって。あと、その友だちが別のオーディションを受けていたのを見て、受ける勇気がすごいなと思ってオーディションの動画を観たら、審査員の人たちが肯定してくれていて。それが普通に羨ましかった。そこから興味を持って、去年の〈WACK EXHiBiTiON〉の動画を観たら、全然詳しいことはわからなかったけど泣いちゃったんですよ。キラキラしていると思って。そこから動画を見たりして、少しずつ好きになっていって、自分も受けてみたいなと考えているうちに、本当に受けたいと思い始めて。書類審査が通るか分からないけど受けました。
──応募するのに勇気は必要だったんじゃないですか?
ナアユ:ちょっと迷っていたときもありました。友だちに受けるって言ったあとで、もし落ちたら恥ずかしいなとか考えて。迷っていたときに、渡辺(淳之介/WACK代表)さんがTwitterで「めっちゃ応募が来ているので、早めに送らないと不利ですよ」ってつぶやいていたのを見て、書類一次締め切りを諦めたんです。そのあとで追加募集しますって告知があったとき、深夜に気まぐれみたいな感じで送りました。書類ぐらいなら別に落ちても誰にも言わなきゃいいかなと思って。そしたら合格メールが来て、発狂して親に言いました。
──オーディションを受けることは、ご両親も理解してくれた?
ナアユ:はい。でも、表向きには親も応援してくれていたんですけど、絶対受かると思ってなかったと思うんですよ。私も「適当にやってくるよ」みたいな感じで言っていたし。だけど、実際に面接で渡辺さんと話したら、本気で入りたくなっちゃって。そのまま親にはごまかして話していたんですけど、本当は落ちたらめっちゃショックだと思っていたし絶対に受かりたいと思ってました。
──合宿には毎年早朝マラソンがあるじゃないですか。運動があまり好きじゃなかったナアユさんは、何か対策をしたんでしょうか。
ナアユ:合宿が決まってから、今まで全くやってなかったのに急に毎日走り始めました。そしたら、合宿1週間前ぐらいに左足がめっちゃ痛くなって。ダンスも踊れないぐらい痛くなっちゃったんです。病院に行ったら、シンスプリントというやつで、ひどくなったら疲労骨折するらしいんですけど、治すには安静にするとかしかなくて。親は受かると思っていなかったので、こんな状態なんだから辞めておけば? って言われたけど、ここまで来たしと思って薬をもらって合宿に行きました。毎日朝に痛み止めの座薬を入れていたんですよ(笑)。
──それぐらい強い気持ちを持って合宿に臨んでいたんですね。
ナアユ:薬のせいなのかアドレナリンなのかは分からないんですけど、最初のほうは全然痛くなくて。全然いけると思っていたら、後半になってやばくなっちゃって。最終日は走りきれなかったんですけど、痛いからマラソンを休むとは絶対に言いたくなかった。この業界は何を言っても言い訳になるじゃないですか? だから言い訳をしないようにしようと思って、言わなかったです。
自信が全部無くなった
──合宿中、挫けそうになることとかはなかったですか?
ナアユ:めっちゃありました。ムロ(パナコ)さんたちが来た3日目のダンス発表後、絶対に落ちると思っていました。「EMPiRE is COMiNG」の間奏のところが踊れないまま時間が経っていくし、みんなの足を引っ張らないようにしなきゃと思っていろいろ考えていたら本番もひどいことになってしまって……。絶対その日に脱落すると思ったし、救済も受けないで帰ろうと思っていました。Twitterで絶対に叩かれると思ったら、いろいろ怖くなっちゃって。でも、その発表が終わった後のグループがムロさんのチームで、「Don’t miss it!!」を踊ることになって。全然踊れなかったんですけど、ムロさんが輪になってしゃべってくれたんですよ。そのときに完全に気持ちを切り替えられたわけではないんですけど、もっと頑張ろうと思えました。
──合宿が進むにつれて、自信はついていったんじゃないですか?
ナアユ:スタッフ票で落ちた日(※合宿3日目、タワレコWACKSHOP票1位を獲得したことで無条件で明日に進める権利を得て復活)に自信が全部無くなって。その日たまたまタワレコ票で運良く残ったんですけど、壱岐にいるスタッフさんは全員、私と仕事したくないんだと考えちゃって。
──スタッフが一緒に働きたくない票は、あの場にいないと伝わりづらいけど、嫌な雰囲気が醸しだされるシステムでしたよね。正直、スタッフもそこまで候補生と話す機会もなかったから、些細なことでしか票を入れることができない。全部マイナス評価なんですよね。
ナアユ:私たちも一緒に働きたくないWACKのメンバーの名前を毎日書かなきゃいけなくて。今は、それと同じような感覚だったのかなと思うんですけど、落ちたときは本当にいらないから帰れと言われたようにしか感じられなくて。
──精神的に揺さぶられた合宿でしたよね。それでも最終日まで残ったわけで、やりきったという気持ちはあったんじゃないですか。
ナアユ:これまでの人生、最後までやり通したことがなかったんですよ。小学校のときの水泳も、中学校から続けていた絵も辞めてきたので、合宿だけは最後までやりきろうと思っていて。毎日絶対落ちると思っていたんですけど、最後のほうは、これで落ちたらWACKとは縁がなかったという意味で落ちたんだろうなと捉えられるくらい全力を出し尽くせていました。最終日は、めっちゃ候補生の人数が少なかったじゃないですか。みんなダンスも歌もできる子ばっかりだったし、なんで自分も残っているんだろうと思って立っていました。
自分はWAggが大好きなんだろうなと思った
──最終日の〈WACK EXHiBiTiON〉のステージで、WAggへの加入者として名前が呼ばれました。どんな気持ちだったんでしょう。
ナアユ:呆然でした。緊張していたのもあって、あまり覚えていなくて。名前を呼ばれたから、早くWAggのメンバーのところに行かなきゃって。頭ではあまり考えられていなかったです。でも、私はBiSに入りたかったから、入りたかったところに入れなかったという意味でのショックはあって。呼ばれた瞬間はあまり頭が動いていなかったです。
──そこから約2ヶ月の期間を経て、5月26日のお披露目ライヴを迎えたわけですけど、2ヶ月間、どんな風に過ごしたんでしょう?
ナアユ:めっちゃ、いろいろありました。最初の方は足が痛くて全然動けなくて。合宿で実力がないことを実感したので、人一倍練習しないといけないのにやろうにもやれないし、めっちゃ焦っていました。5月19日(ナルハワールド卒業公演)まではナルちゃんもWAggで活動していたので、あまり溶け込めないなと思った時期もあって。足が治りかけて自主練をするためにスタジオを取って、1人で振りとフォーメーションを必死で覚えました。みんなで一緒に踊ったり練習をしたのは最近なんですよ。
──ナルハさんの卒業公演から、ナアユさんのお披露目公演まで1週間しかなかったですもんね。他のメンバーもどちらも練習しなきゃいけないというスケジュールで動いていたわけで。
ナアユ:愛ちゃんにも言われたんですけど、WAgg自体でも卒業と加入は初めてのことだからメンバーも分からないことだらけだって。4月にスタッフさんに動員の話をされたことがあったんです。よく考えたら、これからWAggでやっていくんだから、どのグループに昇格したいって気持ちだけでやっていたら、たぶんWAggは大きくならないだろうなとか、いろいろ1人で考え込んじゃって。ムロさんやユユ(GANG PARADE/テラシマユウカ)さんにアドバイスもらったりして考えたんですけど、実力もないのに私が言っても説得力がないし、新人なのにうるせえよと思われたらどうしようと思って。そしたらスタッフさんが、みんなに言った方がいいよって言ってくれたので、そこで初めて積極的に伝えたり、みんなに意見を言ったりできるようになりました。みんなでいっぱい話し合って、グループに入れたってことを実感しました。これまで、1つのことを死ぬほど考えたり悩んだりしたことがなかったので、たぶん自分が思っている以上に自分はWAggが大好きなんだろうなと思ったし、大きくしなきゃって思いました。
めっちゃ泣いちゃったんですよ
──初めてWAggとして立ったライヴはどうでしたか?
ナアユ:緊張しすぎていて、ステージに立った瞬間「せーの、WAggです!」って言うんですけど、めっちゃ泣いちゃったんですよ。体力がないので普通にしんどくなったときもあったし、息が切れて振りやフォーメーションを間違えたり失敗もしたけど、いっぱい練習をしたから間違えても絶対にずっと笑っていようと思っていました。途中、ダンスとかやばかったんですけど、ずっと笑顔でいようと歌って踊りました。
──BiSの曲が多めだったのは、嬉しかったんじゃないですか?
ナアユ:嬉しかったです。セトリが送られてきたときに曲数を数えたんですよ。BiSH何曲、BiS何曲って。BiS多い! ってなったし、BiSが解散した後だって意味でも気が引き締まったというか。
──今、BiSの曲ができるのはWAggしかいないですからね。
ナアユ:そうなんです。
──今後、WACKグループへの昇格の可能性もあるし、WAggとしてのグループの目標もあると思うんですけど、現時点でどんな目標を持っていますか?
ナアユ:WAggとしては、まだまだ動員も少なくて。渡辺さんは忙しいから、観に来てもらえる機会も少ないので、数字で表さないといけないとは思っていて。分かりやすく数字がガーンって上がったら、みんなや私の昇格にも繋がると思うんです。WAggで大きくなることが自分たちの昇格にも繋がると思うので。具体的に言ったら、動員を増やすとか、もっと有名になるとか、研究生だけど堂々とアイドルとしてやろうと思っています。自分としての目標は、WAggは研究生と言うけど、他のメンバーと比べて私は本当にダンスも歌もまだ足りないことばかりなので、まずはそこに追いつかないとと思っています。
これまでのWAggインタビューをあわせてチェック!
WACKを揺るがす8人の女の子たち──アイドル育成プロジェクト“WAgg”初インタビュー
Vol.1──ナルハワールド「素直さや元気さを出していきたい」
Vol.2──マリン・バ「WAggで1番になりたい」
Vol.3──ウルウ・ル「WAgg8人で、いいねって思われたい」
Vol.4──アンズピア「今の目標は、楽しむこと」
Vol.5──ウタウウタ「一体感を作りながら個性を乗せていけるグループにしていきたい」
Vol.6──愛「もっともっと意識を高く持ちたい」
Vol.7──サアヤイト「8人の個性が伝わるようなグループにしたい」
Vol.8──ハナエモンスター「8人で会場を埋められる存在になりたい」
Vol.9──マリン・バ「人に必要とされる存在にならなければいけない」
Vol.10──ナルハワールド「ギャンパレに新しい何かを与えられる存在になりたい」
Vol.11──ア・アンズピア「WAggのグループとしての結束を固めて突き進んでいきたい」
Vol.12──ハナエモンスター「上に行かないといけないなという気持ちは変わらない」
Vol.13 ──ウルウ・ル「WAggでデビューさせたいと思われるぐらいいいグループにしたい」
Vol.14 ──愛「今のWAggを最強にして、次は新しい最強を作っていきたい」
Vol.15 ──サアヤイト「いろいろな事を吸収して、殻を破った自分を楽しみにしている」
Vol.16──ウタウウタ「もっとWAggを良いものにしたいという気持ちが強くある」
WAgg PROFILE
マリン・バ / ウルウ・ル / ウタウウタ / ア・アンズピア / 愛 / サアヤイト / ハナエモンスター / ナアユ
■WAgg Official HP
http://www.wagg.tokyo/
・WAgg Official Twitter
@WAggidol
・WAggメンバー Twitter
マリン・バ : @MARiN_WAgg
愛 : @L0VE_WAgg
ア・アンズピア : @ANZU_WAgg
ウタウウタ : @UTA_WAgg
ハナエモンスター : @HANAEMON_WAgg
サアヤイト : @SAYA_WAgg
ナルハワールド : @NARUHA_WAgg
ウルウ・ル : @URUURU_WAgg
ナアユ:@NAYU_WAgg
WAgg「WAggs」
2019年6月2日(日)名古屋 CLUB 3STAR IMAIKE
2019年6月16日(日)大阪 club MERCURY
2019年6月23日(日)東京 TSUTAYA O-Crest
2019年6月30日(日)仙台 LIVE HOUSE enn2nd
料金:4,000円(tax in.)(オールスタンディング/入場整理番号付/入場時にドリンク代別途必要)
※未就学児童入場不可
※ダイブ/サーフ/モッシュ/リフト禁止
チケット:http://w.pia.jp/t/wagg/