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【連載】こころの本〜生きづらさの正体を探る Vol.25『親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育』

StoryWriter

産業カウンセラーの手島将彦による新連載『こころの本〜生きづらさの正体を探る、産業カウンセラー手島将彦のオススメ本』。

『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』(2016年/リットーミュージック)、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』(2019年/SW)の著者であり、音楽業界を中心にメンタルヘルスの重要性を発信し続けた手島がオススメする本を不定期連載で紹介していきます。

Vol.25『親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育』

メンタルヘルスや心理学などに関して比較的読みやすい本を紹介しているこの連載、25回目は先週出版されたばかりの『親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育』(構成・文/上村彰子 監修/田代美江子 まんが&イラスト/大久保ヒロミ 講談社)です。「1時間で一生分の『生きる力』」というシリーズのひとつで、その言葉通り、マンガも交えてとてもわかりやすく書かれています。そして「安全、同意、多様性、年齢別で伝えやすい! ユネスコから学ぶ包括的性教育」という言葉もタイトルに添えられているのですが、この「包括的性教育」という言葉は僕も本書を読むまで知りませんでした。大袈裟に聴こえるかもしれませんが、特に日本で暮らし育ったすべての人は、この言葉を知って学ぶべきだと思いました。

これはユネスコが発表している「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」で使われている言葉なのですが、その枠組みは、「人間関係」「価値・権利・文化・セクシュアリティ」「ジェンダーの理解」「暴力と安全確保」「健康と幸福のためのスキル」「人間のからだと発達」「セクシュアリティと性的行動」「性と生殖に関する健康」と、文化や社会全体にわたっていて、子どもや若者だけでなく全ての人の生き方に関わる内容になっています。実際読んでみて、性教育を入り口としながらとても大切な多くの考え方・ものの見方に触れることができました。そうした意味で子どもがいてもいなくても、全ての人にお勧めしたい本です。

詳しい内容は、「1時間で」読めるようになっていますので、ぜひ実際に読んでいただければと思いますが、印象に残った点をひとつ取り上げるなら、「ふつう」と言っていることを疑う、ということです。それは単に、無意識に多数派を良しとしているだけだったり、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)だったりするかもしれません。そうした「ふつう」という固定観念から離れて性を学ぶことから、他者との違いを尊重すること、それぞれの意思や身体を守ることの大切さを意識できるようになり、皆がより生きやすく、幸福な人生を追求していくことにつながっていくのだろうと思いました。

ちなみに筆者の別の本の『お騒がせモリッシーの人生講座』(イーストプレス)の中で、モリッシーの「残念ながら、私はホモセクシュアルではない。厳密に言うと、私はヒューマセクシュアル(humasexual)ということになる」という言葉が紹介されていて、「彼の歌は、特定の性に向けられたものではなく、『人間』に向けられている」「モリッシーは、この世の中でまかり通っている陳腐な性区分に、耐えられないのだろう」と指摘しています。このように単純な性区分ではなく「人間」を単位として考えるのも、とても大切なことだと思います。


「こころの本〜生きづらさの正体を探る」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』
Vol.2 「発達障害」に関する基礎知識を得るための2冊
Vol.3 『ニューロダイバーシティの教科書』
Vol.4 『ジェンダーと脳〜性別を超える脳の多様性』
Vol.5 『はじめて学ぶLGBT〜基礎からトレンドまで』
Vol.6 『ポップスで精神医学〜大衆音楽を“診る”ための18の断章』
Vol.7『世界一やさしい精神科の本』
Vol.8『居るのはつらいよ〜ケアとセラピーについての覚書』
Vol.9『野の医者は笑う〜心の治療とは何か?』
Vol.10『心理学[第5版]』
Vol.11『情報を正しく選択するための〜認知バイアス事典』
Vol.12『サブカルチャーの心理学』
Vol.13『うつ病と双極性障害に関する2冊』
vol.14『統合失調症がやってきた』
Vol.15『相方は、統合失調症』
Vol.16『疾風怒濤精神分析入門』
Vol.17『すずちゃんののうみそ』
Vol.18『オチツケオチツケこうたオチツケ こうたはADHD』
Vol.19『ありがとう、フォルカー先生』
Vol.20『<叱る依存>がとまらない』
Vol.21 『夜と霧』
Vol.22 『ハブられても生き残るための深層心理学』
Vol.23 『格差は心を壊すー比較という呪縛』
Vol.24 『もっと!〜愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』

手島将彦(てしま・まさひこ)
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライヴを観て、自らマンスリー・ライヴ・ベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。アマゾンの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり産業カウンセラーでもある。
https://teshimamasahiko.com

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