【連載】カウンセリング入門Vol.21 精神科医とカウンセラー、サイコセラピーとカウンセリングの違い

アーティストが抱えている、アーティストならではの悩み。メンバーやスタッフに相談するのは気まずかったり、カウンセリングに足を運ぶことができないアーティストも少なくないんじゃないでしょうか? 同じように、アーティストを支えるスタッフや関係者においても、どうやって彼らをサポートしたらいいのかわからないという状況もあるかと思います。

そんなアーティストや彼らに関わる人たちに向けた連載がスタートです。

アーティストたちが抱える「生きづらさ」を探った書籍『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』で、現役精神科医師の本田秀夫とともに創作活動を続けるためにできることを執筆した、産業カウンセラーでもある手島将彦が、カウンセリングについて例をあげながら噛み砕いて説明していきます。

アーティストが抱える悩みが解消される手助けになることを願っています。


Vol.21 精神科医とカウンセラー、サイコセラピーとカウンセリングの違い

これまで20回にわたり「カウンセリング入門」というテーマで書いてきましたが、では実際に精神科やカウンセラーにかかるとなったときに、その違いがよくわからなかったり、イメージしていたものと違ったりすることがあるかもしれません。

まず、精神科医と臨床心理士やカウンセラーの違いはどこにあるのでしょう。

精神科医は、「医師」ですので、「病気を治療する」ことが仕事になります。

すごくシンプルに言うと、患者さんの容態を診て、たとえば「あー、この人はドーパミンが出過ぎているんだな」「セロトニンが足りないんだな」とか判断し、それに適した投薬を行なう、といった形になります。

一方で臨床心理士カウンセラーは、クライアントの話を傾聴して、ときには心理アセスメント(検査)を行ない、支援していきます。

つまり、アプローチが違うのです。

精神科医は、医師の資格を持っていて、「治療」や投薬ができますが、大学の医学部カウンセリングや臨床心理学を体系的に学ぶわけではありません。中には、個人として臨床心理士の資格を併せ持っていたり、カウンセリングの技術を身につけていたりする精神科医の方もいらっしゃいますが、必ずしも多くはありません。

もちろん、患者さんの話は聴きますが、まず病状を把握して治療することが目的になりますので、はじめての診察の時以外は、5〜15分程度の診察となることが多いようです。

一方で、臨床心理士カウンセラーは、カウンセリングに関する専門的な訓練を受けていますが、医師ではありませんので、医療行為や投薬はできません。そのかわり、カウンセリングに関する専門的な技術と知識で、その技法にもよりますが、およそ50分程度を基準に、しっかりとクライエントの話を傾聴し、クライエント自身が解決・改善していけるように支援していきます。

メンタルに問題を抱えて、なんとか頑張って病院まで来たのに、ほんの5分10分くらいしか話を聴いてくれず、薬を出されただけだった、というような不満を持ったという話もよく耳にします。そのように感じさせてしまうこと自体、決して良いことではないのですが、それは、前述したような違いにも原因があるのです。

ところで、ラモーンズには『サイコセラピー』という曲がありますが(歌詞の内容はちょっと不穏なのですが)、

 

「サイコセラピー」という言葉と「カウンセリング」という言葉にも、重なり合うところがありつつ、意味合いが少し違うところがあります。

サイコセラピー(心理療法・精神慮法)はヨーロッパで生まれ、フロイトの精神分析等の手法によって発展し、現在ではどちらかといえば主に病理的な問題に対し治療的に働きかけていくものですが、一方でカウンセリングはVol.18で触れたように、20世紀初頭のアメリカのパーソンズ等の活動を起源にしていて、人々が人生において遭遇する多種多様な問題への対処や自己成長・生涯発達を目的としている、という違いがあるとも言えます。

いずれにせよ、メンタルの病的な問題と人生の問題は切り離せないことも多く、本来ならば、精神科医の医療行為と、カウンセラーによる支援という両輪がうまく働くことが望ましいのですが、必ずしもそうはなっていないのが現状のようです。

精神科にせよカウンセリングにせよ、特に日本ではまだまだ敬遠されがちな風潮があると思います。さらに、カウンセリングに関しては保健がきかないことも多く、その場合50分で5000円〜1万円程度の費用がかかってしまい、それが更に敬遠されてしまう原因かもしれません。

ただ、先述のとおり、精神科医のアプローチとカウンセリングのアプローチは両輪である方が望ましいですし、とくにカウンセリングに関しては、もっと気楽に「肩や腰が痛いからマッサージに行く」「ちょっとすっきりしたいからジムに通う」という程度の気持ちで受けてかまわないのです。

店にもよりますが、ちょうど料金も同じくらいではないでしょうか? メンタルも、肩や腰、筋肉と同じ、人間の体の一部なのですから、痛くなったらひどくなる前に解しておく方が良いのです。

また、お洒落のために美容院に行くように、メンタルを整えるためにカウンセリングを受けてみても良いと思います。どんなに外を綺麗にしても、内側が乱れていては、表情も曇り、態度や言葉にも現れてしまいますから。

とはいえ、とくに駆け出しのミュージシャンなどは、やはりお金に余裕がないことも多く、経済的な理由で二の足を踏んでしまうこともあると思います。

そうした問題を克服できるうまい方法はないか考えたいです。

何か良いアイデアをお持ちの方がいらっしゃったら、ぜひご提案頂けると嬉しく思います。


Vol.1 レジリエントな人(回復性の高い)とは?
Vol.2 「俺の話を聞け!」〜『傾聴』が大事
Vol.3 「バンドをやめたい」と言われた!
Vol.4 うつ病と双極性障害
Vol.5 とにかく「休む」! 不安や絶望はクリエイティヴに必須ではない
Vol.6 「人はどこまで環境に左右されず意思決定できる?」
Vol.7「現在」と「事実」を重視、視点を変えてみる
Vol.8「I Love Myself」自己肯定感を持て!
Vol.9 睡眠は大切!不眠の悪循環から抜け出す方法
Vol.10 LGBTについて LGBTと音楽
Vol.11 発達障害(1)自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
Vol.12 発達障害(2)ADHD(注意欠陥・多動性障害)
Vol.13 発達障害(3)LD(学習障害)
Vol.14 発達障害(4)「個性と障害」
Vol.15 防弾少年団(BTS)の国連でのスピーチ
Vol.16 アイデンティティとは?
Vol.17 2つの革命と音楽の関係
Vol.18 アメリカの発展とジャズ&ブルースとカウンセリング
Vol.19 これからの音楽業界が考えなければならないこと
Vol.20──フロイトから繋がるカウンセリング理論の5系統

※「【連載】「アーティストのためのカウンセリング入門」は毎週月曜日更新予定です。

手島将彦(てしま・まさひこ)
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライヴを観て、自らマンスリー・ライヴ・ベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。アマゾンの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり産業カウンセラーでもある。
https://teshimamasahiko.com

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