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産業カウンセラーの手島将彦による新連載『こころの本〜生きづらさの正体を探る、産業カウンセラー手島将彦のオススメ本』。

『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』(2016年/リットーミュージック)、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』(2019年/SW)の著者であり、音楽業界を中心にメンタルヘルスの重要性を発信し続けた手島がオススメする本を不定期連載で紹介していきます。

Vol.30『あの時も「こうあるべき」がしんどかった〜ジェンダー・家族・恋愛〜』

メンタルヘルスや心理学などに関して比較的読みやすい本を紹介しているこの連載、30回目は『あの時も「こうあるべき」がしんどかった〜ジェンダー・家族・恋愛〜』(パレットーク・著/ケイカ・マンガ/シンコーミュージック)です。

著作者の「パレットーク」は実話に基づくストーリーでLGBTQやフェミニズムについてSNSで紹介する編集部で、「性にまつわるモヤモヤをマンガで読み解く」をテーマに、年間約100作品を制作していて、SNSの総フォロワーは2021年10月時点で12万を超えているそうです。

マンガを中心に「こうあるべき」による生きづらさの様々なエピソードが描かれていて、コラムなどの丁寧な解説と合わせて、とても分かりやすく重要な提案がなされています。個人的にも、自分が過去そして現在でも感じたことのあるしんどさや、子育てなどを通じて抱いた違和感などと重なることが多く、それには「そうそう!」と頷きながら読み、また一方では「まだまだうっかりやらかしてしまうかも」とも思わされました。

本書で取り上げられるテーマは「男/女」の問題だけでなく「同性婚」「LGBTQ・SOGI」「家父長制とミソジニー(女性軽視)」「多様な家族の存在」「ホモソーシャル」「無意識の偏見」など多岐にわたります。以下参考に目次を引用しておきます。ここに取り上げられていることだけでも自分のこととしてピンとくる方も少なくないのではないでしょうか。

もくじ

幼少期で

1 男の子の色、女の子の色
2 子は親を見て男女の役割を学ぶ
3 「女の子のおもちゃ」は恥ずかしい?
4 視界に入る家庭の単一化
column 1 同性婚と自己肯定感と自殺率

学校生活で

5 「違い」はおかしい! 仲間はずれ遊び
6 マイノリティが感じる性自認や性的指向のズレ
7 性別による決めつけの違和感
8 トップに立つのは男の子だけ?
9 男子の文系、女子の理系
10 奇抜な個性に関する偏見
column 2 「こうあるべき」へのプレッシャーは人の可能性への足かせ

大人になったら

11 職種や肩書でのラベル
12 男子のヒエラルキー
13 恋愛観の押しつけが「呪い」になるかも
14 女の幸せ≠ゴールイン
15 子どもを持ってこそ一人前
16 父、母の「こうあるべき」

何かの提案がなされるとき、これまでの自分の生き方や価値観を否定されたり、脅かされたりするように感じて身構えてしまう方もいるかもしれません。しかし、本書で提案されていることは、そう感じる人も含めて「どんな人も」より生きやすくなるための提案なのです。

そもそも、基本的に人は一人一人違った存在なのですから、人対人で向かい合う時には、単なるバイナリー(二項対立)だったり、単純なカテゴライズだったり、なんらかの「普通」「当たり前」という、大きく雑なくくりを当てはめたりするのではなく、それぞれ個別のあり方や特性を尊重すべきなのでしょう。そうして皆が生きやすくなるように、本書で取り上げられているようなことへの理解が少しずつでも進んでいくことを望みます。とても読みやすく、「やさしい」ので、ぜひご一読ください。


「こころの本〜生きづらさの正体を探る」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』
Vol.2 「発達障害」に関する基礎知識を得るための2冊
Vol.3 『ニューロダイバーシティの教科書』
Vol.4 『ジェンダーと脳〜性別を超える脳の多様性』
Vol.5 『はじめて学ぶLGBT〜基礎からトレンドまで』
Vol.6 『ポップスで精神医学〜大衆音楽を“診る”ための18の断章』
Vol.7『世界一やさしい精神科の本』
Vol.8『居るのはつらいよ〜ケアとセラピーについての覚書』
Vol.9『野の医者は笑う〜心の治療とは何か?』
Vol.10『心理学[第5版]』
Vol.11『情報を正しく選択するための〜認知バイアス事典』
Vol.12『サブカルチャーの心理学』
Vol.13『うつ病と双極性障害に関する2冊』
vol.14『統合失調症がやってきた』
Vol.15『相方は、統合失調症』
Vol.16『疾風怒濤精神分析入門』
Vol.17『すずちゃんののうみそ』
Vol.18『オチツケオチツケこうたオチツケ こうたはADHD』
Vol.19『ありがとう、フォルカー先生』
Vol.20『<叱る依存>がとまらない』
Vol.21 『夜と霧』
Vol.22 『ハブられても生き残るための深層心理学』
Vol.23 『格差は心を壊すー比較という呪縛』
Vol.24 『もっと!〜愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』
Vol.25 『親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育』
Vol.26 『多様性の科学〜画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』
Vol.27 『わたし中学生から統合失調症やってます。』
Vol28.『これからの男の子たちへ〜「男らしさ」から自由になるためのレッスン』
Vol.29 『事実はなぜ人の意見を変えられないのかー説得力と影響力の科学』

手島将彦(てしま・まさひこ)
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライヴを観て、自らマンスリー・ライヴ・ベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。アマゾンの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり産業カウンセラーでもある。
https://teshimamasahiko.com

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