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産業カウンセラーの手島将彦による新連載『こころの本〜生きづらさの正体を探る、産業カウンセラー手島将彦のオススメ本』。

『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』(2016年/リットーミュージック)、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』(2019年/SW)の著者であり、音楽業界を中心にメンタルヘルスの重要性を発信し続けた手島がオススメする本を不定期連載で紹介していきます。

Vol.35『ひとりひとりの個性を大事にする〜にじいろ子育て』

メンタルヘルスや心理学などに関して比較的読みやすい本を紹介しているこの連載、35回目は『ひとりひとりの個性を大事にする〜にじいろ子育て』(本田秀夫著・講談社)です。

「子育て」とタイトルについていますが、これは今子育てにあまり関係がないという人でも、何らか指導的な立場にいる人や、人との関わり方について何らかの悩みを持っているという人にとってもたくさんのヒントが詰まっている本です。

本書の冒頭で本田秀夫先生はこのように書かれています。

物事には、普遍的な要素と個別的な要素が必ずあるものです。子育てでも、普遍的にみんなが知っておきたいことややっておきたいことと、それぞれの個性に応じた個別的なことと両方のバランスが必要だと思います。最近は子育てや教育に関する情報が書籍やインターネットを通じてたくさん得られるようになりました。でも、その情報の多くは「どんな子どもでもこのように育てるとよい」という書き方になっているように思います。普遍的というより、画一的という表現のほうが正確かもしれません。

その画一的な考え方や方法を無理に押し付けられることによって、あるいはそれに無理して適応しようとして、メンタルヘルスに問題を生じさせてしまうことも少なくありません。子どもは特にですが、この社会で生きていると、こうしたことはいろんな場面であると思います。自分が押し付けられる側にも、押し付ける側にもなってしまいがちです。また、著者は次のように提案します。

ひとりひとりの子どもの好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、苦手なこと、色眼鏡なしでよく知る必要があります。子育てにおいても、親や先生の希望や期待を押しつけず、子どもの個性に合わせて「遊び」や「接し方」「相談の仕方」「ほめ方」などを見直していくことが重要です。

これは子どもに限ったことではなく、どの世代にとっても重要な、基本的な考え方だと思います。誰もが一度は子ども時代を過ごし、何らかの教育を受けているわけですが、逆にその「自分には経験がある」ということによって「子どもとはこういうものだ」とか「子育て・教育とはこういうものだ」という思い込みも生じやすいかもしれません。一度その思い込みを外して、新しい視点や、これからの世代に対してより良い社会を提供するためにも、ぜひご一読をお勧めします。またつい最近、著者の本田秀夫先生によるYoutubeチャンネル「にじいろ子育てチャンネル」が開設されたようですので、こちらも併せて紹介しておきます。

■「にじいろ子育てチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCoigDRWlwUvQhKNBN7kX5jQ


「こころの本〜生きづらさの正体を探る」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』
Vol.2 「発達障害」に関する基礎知識を得るための2冊
Vol.3 『ニューロダイバーシティの教科書』
Vol.4 『ジェンダーと脳〜性別を超える脳の多様性』
Vol.5 『はじめて学ぶLGBT〜基礎からトレンドまで』
Vol.6 『ポップスで精神医学〜大衆音楽を“診る”ための18の断章』
Vol.7『世界一やさしい精神科の本』
Vol.8『居るのはつらいよ〜ケアとセラピーについての覚書』
Vol.9『野の医者は笑う〜心の治療とは何か?』
Vol.10『心理学[第5版]』
Vol.11『情報を正しく選択するための〜認知バイアス事典』
Vol.12『サブカルチャーの心理学』
Vol.13『うつ病と双極性障害に関する2冊』
vol.14『統合失調症がやってきた』
Vol.15『相方は、統合失調症』
Vol.16『疾風怒濤精神分析入門』
Vol.17『すずちゃんののうみそ』
Vol.18『オチツケオチツケこうたオチツケ こうたはADHD』
Vol.19『ありがとう、フォルカー先生』
Vol.20『<叱る依存>がとまらない』
Vol.21 『夜と霧』
Vol.22 『ハブられても生き残るための深層心理学』
Vol.23 『格差は心を壊すー比較という呪縛』
Vol.24 『もっと!〜愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』
Vol.25 『親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育』
Vol.26 『多様性の科学〜画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』
Vol.27 『わたし中学生から統合失調症やってます。』
Vol28.『これからの男の子たちへ〜「男らしさ」から自由になるためのレッスン』
Vol.29 『事実はなぜ人の意見を変えられないのかー説得力と影響力の科学』
Vol.30 『あの時も「こうあるべき」がしんどかった〜ジェンダー・家族・恋愛〜』
Vol.31 『もしも「死にたい」と言われたら〜自殺リスクの評価と対応』
Vol.32 『「助けて」が言えない〜SOSを出さない人に支援者は何ができるか』
Vol.33 『第四の生き方―「自分」を生かすアサーティブネス』
Vol34. 『管理される心〜感情が商品になるとき』

手島将彦(てしま・まさひこ)
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライヴを観て、自らマンスリー・ライヴ・ベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。アマゾンの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり産業カウンセラーでもある。
https://teshimamasahiko.com

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