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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

先日、舞台「プレイハウス」に『愛がなんだ』の今泉力哉監督が観に来てくださいました。初めてご挨拶させて頂き、作品の感想や色々な事をお話ししたかったのですが、緊張と感激でほぼ何も喋れずでした、、

今泉監督の最新作、伊坂幸太郎作品の『アイネクライネナハトムジーク』が9月20日に公開されるのでとても楽しみにしています。

Vol.11『ゴーストランドの惨劇』

☆4.2/☆5.0点中

公式HP:http://ghostland-sangeki.com/

僻地に佇む家で、母と双子の娘を襲った凄惨な事件。 それから16年後―。 姉は精神を病み家に囚われ、妹は家を出て幸せを手に入れた。 姉妹がその家で再会した時、あの惨劇が再び幕を開ける―。

などという、ありきたりのホラーでは終わらない―。

人里離れた叔母の家を相続し、そこに移り住むことになったシングルマザーのポリーンと双子の娘。姉のヴェラは、奔放で現代的な少女。一方妹のベスは、ラヴクラフトを崇拝する内向的な少女。双子の姉妹ながら、性格は正反対だった。新居に到着したその日の夜、突然の惨劇が一家を襲う。2人の暴漢が家に押し入ってきたのだ。しかし、娘を守ろうとする母は必死に反撃し、姉妹の目の前で暴漢たちをメッタ刺しにする―。あの惨劇から16年後。ベスは小説家として成功したが、ヴェラは精神を病み、今もあの家で母と暮らしていた。久しぶりに実家に戻ったベスを母は迎え入れるが、ヴェラは地下室に閉じこもっていた。そして、ベスに向かって衝撃の言葉をつぶやく―

鬼才パスカル・ロジェが6年ぶりに放つ、映画史上最も不快なトラウマ映画。姉と妹。過去と未来。事実と虚構。全ての“対比”に罠が張り巡らされている。

パスカル・ロジェといえば、2009年に公開された、あの世界にトラウマを植え付けたホラー映画『マーターズ』。あの衝撃を忘れられず、パスカル・ロジェ監督の新作が公開されると知り、夏に入る前からずっと心待ちにしていました。

“2度と見たくないけど、2回観たくなる”という謳い文句の通り、鑑賞後は襲い来る絶望感と疲労感に呆然としてしまいますが、一体あれはなんだったのかともう一度確かめたくなる、よくあるホラーとは全く違った本当の恐怖がありました。

幼い頃に、ある壮絶な事件に巻き込まれた双子の姉妹の妹が、事件で精神的に傷を負った姉を訪ねるところから始まり、一筋縄ではいかない予想外の展開を見せます。細々と伏線は貼られているものの、まんまとトリックに引っかかり驚きと恐怖とともに感動まで沸き上がってきます。序盤で得た情報やセリフが終盤になって次第に噛み合っていく様が楽しく、ワクワクが止まりません。

ベス役のクリスタル・リード、10代のベス役エミリア・ジョーンズが大変に美しく”ある者”によって無残な姿になっていく様は思わず顔を覆ってしまうほどに鬼畜でした。

また、シーンによって持つ意味を変える人形が入っている鏡など、これはこういう事だったのかー! と謎解きの様な感動も生まれたりします。

“ゴーストランド”というタイトルから連想できるホラーではなく、想像していたものとは違いびっくりさせられましたが構成がとにかく素晴らしかったです。この衝撃を存分に味わう為に、出来るだけネタバレに触れることなく鑑賞して頂きたい作品です。描写としての残酷さはそんなに多くはないと感じたのですが、精神的にずっと参らせてこられるのでなかなかにしんどい。

辛い過去からやっと逃れたかのようにみえた妹のベスはある理由により再び忌まわしき場所に戻り、また恐怖のどん底に突き落とされるという、物語の入りはごく普通ですが、中盤辺りにくるある大きな仕掛けで一気に引き込まれる。

姉と妹、過去と現在、現実と妄想との全ての対比がパズルの様にはまっていくストーリー展開がここ最近のホラーで断トツで面白く、型にはまる怖さではないのでそれなりの心持ちがあれば普段ホラーを観ないという方でも是非観て欲しい作品です。

本当にネタバレ厳禁すぎる作品なので書けないのがもどかしいですがこの作品は直接的なグロテスク描写に頼っていない分、物語の展開に目を向けやすく姉妹の絆や心情の変化、自立していく様などが鮮明になぞられていきます。

一味違ったホラー映画、夏の終わりにいかがでしょうか。

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テラシマユウカ


2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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