こんにちは、テラシマユウカです。
先日、初めて岐阜県でライヴをさせて頂いたのですが、帰り道に昭和名作シネマ上映会というとても素敵なシアターを発見しました。
いそいそと東京へ帰ってしまったのでちゃんと見ることは出来なかったのですが、こういうものがある街ってとても素敵だなあとほっこりした瞬間でした。
いつかゆっくり訪れてみたい場所です。
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
☆3.7/☆5.0点中
公式HP:
孤独な税関職員のティーナは、ある日、謎の男に出会う──。
スウェーデンの税関に勤めるティーナは、違法な物を持ち込む人間を嗅ぎ分ける能力を持っていたが、生まれつきの醜い容姿に悩まされ、孤独な人生を送っていた。
ある日、彼女は勤務中に怪しい旅行者ヴォーレと出会うが、特に証拠が出ず入国審査をパスする。ヴォーレを見て本能的に何かを感じたティーナは、後日、彼を自宅に招き、離れを宿泊先として提供する。次第にヴォーレに惹かれていくティーナ。しかし、彼にはティーナの出生にも関わる大きな秘密があった──。
心が張り裂けるほどの衝撃! 北欧から、新たな傑作現る──。善悪、美醜、性別、貧富、国籍、宗教…… 誰がこの世界の境界線を引いたのか?
第71回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、俳優のベニチオ・デル・トロら審査員を驚嘆させ、見事グランプリを受賞した北欧ミステリー。
2008年に公開されたスウェーデンのホラー映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作者である作家ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編『Border』を基に映画化した作品です。
各国で”ショッキング過ぎる”と大きな話題を呼ぶシーンがありましたが、製作者の意向を汲み修正は一切無し、ノーカット完全版での日本公開が決定されました。
陰鬱で気味が悪くて生々しくて醜くもどこか美しい、予想の斜め上を行く衝撃ファンタジー。
ほぼ前情報無しで鑑賞したのですが、冒頭シーンから奇妙な雰囲気が漂い、でも淡々とそこには日常があって混沌としています。”感情を嗅ぎ分けられる”という嗅覚を持ちながらも醜い容姿のせいで孤独を強いられるティーナが、ある男の匂いに本能的に何かを感じ取り惹かれていくという大方の序盤のあらすじでどう展開していくのかと思いきや、思わぬ角度から意表をつかれるような先の読めない衝撃的なものになっていました。ティーナとヴォーレの容姿に戸惑うだけで手一杯なのにさらに展開に引き摺り回され困惑します。
『ボーダー 二つの世界』というタイトルが多くの意味を秘めていて、男と女、美しさと醜さ、善と悪、人間と動物など奥深く、更に北欧の独特の雰囲気と合わさり神秘的かつ何とも言えない不安な気持ちが後味として残る。
醜いティーナ達と美しい北欧の風景がコントラストとなり素晴らしい映像を生み出しています。
また、衝撃的なストーリーやティーナの出生の秘密など完全にファンタジーなのですが、それをファンタジーとしてだけでは終わらせない普遍的なテーマ性も感じさせられます。
私たち自身も感じる事があるであろう自分の存在意義や居場所、自分とは一体何なのか。世界の生きづらさや時たま感じる違和感。
様々な”ボーダー”が曖昧になり観る者にも重くのしかかる作品になっているのではないでしょうか。
個人的にとても好きな種類の映画でした。
好き嫌い別れるかも知れませんが、生々しい気持ち悪さが好きな趣味が悪い人にはオススメしたい作品です。
『ぼくのエリ 200歳の少女』も合わせて是非。
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テラシマユウカ
2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。