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StoryWriter

こんにちは、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

ただでさえ暖かくなったかと思えば急に寒くなったりと温度差に翻弄される中、最近はまあ色々と大変な世の中なので癒しを求めている方は多いのではないでしょうか?

これは常日頃から考えていた事ではありますが、もし世の中の情勢がグラついた時に医療や生活に関わることは必要不可欠なので、まずエンターテイメントなど娯楽の世界からダメージを受けてしまうのは仕方のない事ではありますが、なんだかなあ…… と寂しく思う気持ちも抱いてしまう今日このごろです。

映画もいくつか公開延期になったりとしている中、今週はどこか心の安らぎを求めながら優しい空気を漂わせた作品に辿り着きました。

Vol.37『架空OL日記』

☆4.2/☆5.0点中

公式ページ:https://www.kaku-ol.jp/

 

憂鬱な月曜日の朝。銀行員OLの“私”(バカリズム)の1週間が始まった。眠気に耐えながらもきっちりメイクして家を出る。ストレスフルな満員電車に揺られ、職場の最寄り駅で合流するのは社内で一番仲良しの同期=マキ(夏帆)。私と価値観の近いマキとの会話は、時に激しく不毛ながらも不思議に盛り上がる。会社の更衣室で後輩のサエ(佐藤玲)と入社8年目の小峰(臼田あさ美)、10年目の酒木(山田真歩)が加わり、いつものように就業前のおしゃべりに華が咲く…。

お笑いは勿論のこと、脚本・小説・イラストとマルチな才能を発揮し続ける唯一無二の芸人、バカリズムさんが‪2006年から3年間、銀行に勤めるOLになりきり、日々のあれこれをこっそり綴っていたブログ。‬鋭い観察眼によるリアルな日常は多くの読者を「本物のOLだ」と信じ込ませ、著者の正体が分かった時は騒然、一躍話題となりました。

そのブログを書籍化した『架空OL日記』‬を原作とした連続ドラマが2017年に放送され、2020年についに映画化。夏帆・臼田あさみ・佐藤玲などと錚々たる女優陣の中でバカリズムさんがそのままの姿で不思議と違和感無く溶け込み、主人公のOL”私”役を演じています。

とあるOLの何の変哲もない日常を描いた終始ゆるい会話劇でこれといった展開もありませんが、とにかく面白い。「こういうやり取りやっちゃうわ〜」や「そういうタイプの男の人いるよね〜」と勝手に”あるある”と頷きながら、気付けばゲラゲラと声を出しながら笑っていました。

朝の起きた瞬間から、化粧中、通勤途中、休日の過ごし方、更衣室の会話やランチタイムの会話までいちいちリアルでOLでなくても当てはまる普遍的な女性の生態が詰め込まれていて、バカリズムさんの鋭い観察眼に思わず小さく拍手してしまいそうになります。

この作品は男女で笑いどころに差が出そうなのも面白いポイント。大雑把に言えば男性視点では、更衣室など見えないところでの女性の裏側に「怖っ(笑)」という笑い。女性視点では「めっちゃ分かる〜」といった共感性の笑い。性別問わず楽しめる作品でありながらも、女性のありふれた日常を何も飾らずに描いているからこそ、男女によってはっきりと捉え方が変わるのではないでしょうか。

そして終わらせ方にもバカリズムさんのセンスが光り、流石としか言いようがない締め括り。

“映画”という何か事件が起こるであろうという固定概念を捨てて、映画だからって何も起こらないし、なんてことない平凡な日常を何も考えずにひたすらぼーっと観る。そんな時間こそ今、私たち日本人に必要なのではないかと気付かされ、ぽかぽかと心が解れるような感覚に癒されました。

映画館全体が笑いに包まれとてもゆるくてあったかい、まるで実家かの様にリラックスして家族でテレビを観ているような空間が出来上がる。

“なんてことない日常”を極めた、特に何も起こらない、そんな素晴らしくゆる〜い映画です。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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テラシマユウカ


2014年に結成され、現在10人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

テラシマユウカ Twitter

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