皆さん、お元気ですか?
SNSが普及している現代、コロナ禍で溜まったストレスによって気付かぬうちに生えてきたトゲを無意識に他人に突き刺してしまっている事が目に見えて多発していて、世界がどんどん歪み始めている気がしているこの頃です。
無意識に吐いた言葉ひとつで人を死に追い込む力を持ってしまうことを頭の片隅にでも置いておけたら、少しは世界は変わるのではないでしょうか。
言葉や思想は自由だからこそ無責任になるのではなく、改めて自分が発信しようとしている言葉ひとつひとつを客観的に見つめ直す時間をこの期間に色々な人間が作っていかなきゃいけないと感じます。
ということでステイホーム期間、昼夜逆転してしまっていたり憂鬱で夜眠れなくなってしまったりする人も多くなってきていると思うので、そんな時に観たい映画をご紹介します。
1. 『I am Sam』
父親役を演じたショーン・ペンがアカデミー主演男優賞にノミネートし注目されたヒューマン・ドラマ。7歳程度の知能しか持っていないことから、娘を引き離されてしまった父親が裁判で娘を取り戻すべく奮闘する。
ユーモラスで心温まるハートフルムービー。
障害を持つ父親が娘を育てられるのかという問題について、愛があれば乗り越えられると言葉だけで言うのはありきたりかも知れないけれど、それを心から信じ奮闘する純粋な親子の愛情にほろりと涙を流してしまいます。
親子に必要なものは何か。お金や知能を持っているに越したことは無いけれど、そんな理屈よりも愛情に代わるものはないのだと、人を否定せずひたむきに思いやりを持って向き合うサムと、そんなサムの愛情を側に感じ優しく育っていくルーシーの姿がそう教えてくれます。
セリフひとつひとつに愛がこもっていて胸がほっこりと暖かくなる素敵な作品です。
2.『RAW〜少女のめざめ〜』
https://www.youtube.com/watch?v=dx39U168iLQ
16歳のジュスティーヌは厳格なベジタリアンの獣医一家に育ち、両親、姉と同じ獣医学校に入学。初めて親元を離れ、見知らぬ土地の大学寮で学生生活を送ることになった彼女は、新しい環境で不安に駆られる日々を過ごす。新入生通過儀礼として生肉を食べることを強要されると、どうしても学校に馴染みたいという思いから家族のルールを破り、人生で初めて肉を口にする。その行為によってジュスティーヌの本性が露わになり、次第に変貌をとげていく。彼女が本当に求めるものとは..。
人肉を食べることに目覚めるというテーマとしてはショッキングでありながらも、1人の少女が大人になっていく過程で誰でも通るであろう道を踏み外してしまったりする”青春”ストーリーを「カニバリズム」という性のめざめとしてユーモアに描かれています。
目を背けたくなる様なシーンもありますがいつの間にか独特な雰囲気に魅入ってしまい、伏線の働き方も巧妙で、映像も絵画の様に美しく暗い音楽とマッチしていて耽美的。
大学という新しい世界に触れたことにより自分の奥底にある知りたくないものに気付いてしまった目覚め、少女の不安や抑えきれない衝動、儚い危うさ、カニバリズムなのに青春映画という二面性に生々しさをより感じる、グロテスクでスタイリッシュな美しい衝撃作です。
3.『20センチュリー・ウーマン』
1979年、サンタバーバラ。シングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、思春期を迎える息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)の教育に悩んでいた。ある日ドロシアはルームシェアで暮らすパンクな写真家アビー (グレタ・ガーウィグ)と、近所に住む幼馴染みで友達以上恋人末満の関係ジュリー (エル・ファニング)「複雑な時代を生きるのは難しい。彼を助けてやって」とお願いする。15歳のジェイミーと、彼女たちの特別な夏がはじまった。
シングルマザーと思春期真っ只中の少年のぶつかり合いながらも互いを理解し共に生きようとしていく様子を描いたヒューマンドラマ。
母と子の日常を映したものであり、大事件は起きないものの、その”日常”というものを繊細に描き出しており他人事には捉えられない様な、自分にも重ねて観てしまう部分が多い作品でした。
母から見た息子と息子から見た母。自分の気持ちを簡単に理解されてたまるかと思ったり、相手のことを理解しきれなかったり。
生きることの難しさを感じる中で、歳は離れていてもただの親子という関係の中だけで終わるのではなく、1人の人間としてそれぞれの個性に向き合っていく姿に価値観をグッと広げられた様な感覚になった作品でした。
個人的に母親が息子の好きな音楽に向き合おうとする所がグッときました。もし自分が母親になる時が来れば、その時にまた観たいと思う映画です。
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