こんにちは、テラシマユウカです。
個人的に洋画を観る頻度の方が圧倒的に高いのですが、ふと邦画を観ると自分のすぐそこで存在しているような、その物語がまるで身近で起きているような感覚に陥って涙が出てしまう事が最近多くなってきたこの頃です。
自分が初めて映画で涙したのはなんだったのかな〜と記憶を辿るのですがなかなか思い出せなかったりします。
今週は、思わず映画館で大泣きしてしまった究極の愛の物語をご紹介します。
Vol.68『ミッドナイトスワン』
☆4.4/☆5.0点中
公式サイト:https://midnightswan-movie.com/
新宿のニューハーフショークラブ〈スイートピー〉では、メイクしステージ衣装に身を包み働くトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。洋子ママ(田口トモロヲ)が白鳥に扮した凪沙、瑞貴、キャンディ、アキナをステージに呼び込み、今夜もホールは煌びやかだ。
「何みとんじゃ!ぶちまわすど!」
広島のアパートでは、泥酔した母・早織(水川あさみ)が住人に因縁をつけていた。
「何生意気言うとるんなあ!あんたのために働いとるんで!」
なだめようとする一果(服部樹咲)を激しく殴る早織。心身の葛藤を抱え生きてきたある日、凪沙の元に、故郷の広島から親戚の娘・一果が預けられる。
「好きであんた預かるんじゃないから。言っとくけど、わたし子供嫌いなの」
叔父だと思い訪ねてきた一果は凪沙の姿を見て戸惑うが、二人の奇妙な生活が始まる。
凪沙を中傷したクラスの男子に一果が椅子を投げつけ、凪沙は学校から呼び出しを受ける。
「言っとくけどあんたが学校でなにをしようと、グレようとどうでもいいんだけどさ、私に迷惑かけないでください。学校とか、謝りに絶対行かないって先生に言っといて」
バレエ教室の前を通りかかった一果はバレエの先生・実花(真飛聖)に呼び止められ、後日バレエレッスンに参加することになる。バレエの月謝を払うために凪沙に内緒で、友人の薦めで違法なバイトをし、警察に保護される一果。
「うちらみたいなんは、ずっとひとりで生きて行かなきゃいけんけえ…強うならんといかんで」
凪沙は、家庭環境を中傷され傷つく一果を優しく慰める。やがて、バレリーナとしての一果の才能を知らされた凪沙は一果の為に生きようとする。そこには「母になりたい」という思いが芽生えていたー。
女性として生きる凪沙と、親から虐待されてきた少女・一果。片隅に追いやられ生きてきた孤独な二人が寄り添う世界で一番美しいラブストーリー。「下衆の愛」や「獣道」、「全裸監督」を手掛けた内田英治監督がトランスジェンダーの生き様を描いた作品。
15分越えの予告映像もYouTubeにて公開されています。
ヒロインの凪沙を演じたのは、草彅剛さん。これまで「日本沈没」や「任侠ヘルパー」「BALLAD 名もなき恋のうた」などと変幻自在に役を演じ、その度に優しさや弱さの表現が特に印象的で目を離せなくなる繊細な表情を魅せてくれる役者さんです。ですが今作では今までとはまた更に違った姿がスクリーンに映し出されており、凪沙のひっそりとした佇まいや目線の運び方などふとした繊細な動きのひとつひとつが、確かにそこに凪沙が存在しているとスッと心に入ってくる自然さがあり、また彼女の優しさやこれまでの人生の中で感じてきた痛みや苦悩、覚悟が突き刺さるかのように伝わってきます。
そして一果役として凄まじい存在感を発揮している新人女優の服部樹咲さん。物語の序盤ではほとんど言葉を発しません。ですが、無表情・無口で何も無しなのではなく、それが彼女の感情や意志としてこちら側に伝えてくる様子が衝撃でとても魅力的でした。そんな痛みを感じながら生きてきた2人の佇まいと表情が観る者の心臓を鷲掴みにして込み上がってくる想いに胸が苦しくなります。
綺麗事ばかりではない世界と頻繁に描かれる美しいバレエとの対比が強烈な印象を残し、単にLGBTがテーマなのではなく愛や痛み・理想と向き合う姿を描き出しており、バレエを通して社会から孤立していた2人が強い絆で繋がっていく。世間から見たあるべき親子の姿はなくとも、お互いがお互いを受け止める様子は、こんなにも愛を感じる映画は初めてかもしれないと思ってしまうほど。
生きづらさやマジョリティからはずれ、陽の当たらない場所にいるのではないかと感じて生きている人々にも共感できる想いが存在し、感動を与えてくれる、母と娘という関係をも超越した人間のラブストーリー。
言葉では表せないほどの愛を是非、劇場で。
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テラシマユウカ
テラシマユウカ、月ノウサギ、