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StoryWriter

10月16日に劇場版「鬼滅の刃」が公開されましたが、皆さんは観に行きましたでしょうか?

私は元々根っからのヲタクなので数年前までは毎日引くほどアニメに溺れる日々を過ごしていたのですが、上京してから映画館に通いまくる様になってアニメを毎週観るという習慣がいつのまにか無くなってしまい、LiSAさんが前々から好きなので「紅蓮華」は聴きまくってはいるもののすっかり乗り遅れてしまう事となりました……。

だからと言って気にならない訳もなく、メンバーにどんな内容なのかを聞きなんとなくキャラクターとストーリーを知ってはいるのですが、劇場版公開前からTOHOシネマズ新宿では1日に40回以上も上映回数があったりなどと記事を目にして、その勢いに流石に驚きを隠せません。

ソーシャルディスタンスで前後左右に誰も座らない席の売り方に快適さを感じてはいましたが、元々深刻だった映画館への客足もコロナ禍でさらに減ってしまいどんどん映画館で映画が公開されなくなってしまうのではという不安も感じていたので、ここまでの社会現象が今の状況下で起こっていることはとても喜ばしい事なのかもしれません。

なかなか映画館へ行かないというメンバーや友人も、ワクワクしながら初日から劇場へ行っている姿を見るとその気持ちめちゃくちゃ分かるよ〜〜!! と滅茶苦茶ニコニコしてしまいます。

Vol.70『マティアス&マキシム』

☆4.1/☆5.0点中

公式サイト:https://phantom-film.com/m-m/

 

30歳のマティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマキシム(グザヴィエ・ドラン)は幼馴染。その日も一緒に仲間のパーティへ向かうが、そこで彼らを待ち受けていたのは友達の妹からの、あるお願い。

彼女の撮る短編映画で男性同士のキスシーンを演じることになった二人だが、その偶然のキスをきっかけに秘めていた互いへの気持ちに気付き始める。美しい婚約者のいるマティアスは、思いもよらぬ相手へ芽生えた感情と衝動に戸惑いを隠せない。

一方、マキシムはこれまでの友情が壊れてしまうことを恐れ、想いを告げずにオーストラリアへと旅立つ準備をしていた。迫る別れの日を目前に、二人は抑えることのできない本当の想いを確かめようとするのだがー。

 

19歳で監督・脚本・主演・製作を務めた「マイ・マザー」で鮮烈なデビューを飾り、圧倒的なカリスマ性と才能で一貫して”母と子”というテーマを描き続けてきたグザヴィエ・ドラン。30才を迎えた彼が最新作で描いたのは、「ずっとやりたかった」という純粋なロマンス。

短編映画でキスシーンを演じたことをきっかけに友情の中に秘めていた恋心に気付き戸惑う2人の青年と彼らを見守る仲間たちの痛いまでの純愛を真正面から描き、グザヴィエ・ドラン自身が監督・脚本・編集・衣装・製作を務め、マキシム役も演じています。

今作で登場するのはドランと日常的に関わりのある実生活での仲間達。実際の友人同士によって交わされる何気ない会話やシーンは、まるで日常の様な自然体であり、マティアスとマキシムの間に近しい人間が立っている事で2人の距離を感じさせられる。また、周囲が騒々しい事によりマティアスとマキシムの繊細な心の揺れが際立ち、複雑な感情を細やかな目線で訴えかけてきます。

そして、感情を代弁するかの様な音楽や色鮮やかな景色の美しさ、喧騒の中の静寂。マティアスとマキシムの青と赤のコントラストやマキシムの頬のアザ。視覚も聴覚も刺激するドラン流の芸術作品の様な映像表現はどこを取っても溜息しかでません。

マティアスのマキシムを遠ざけてしまう行動や、自分の感情を隠すために周囲に攻撃的になってしまう姿、葛藤に揉まれながらも相手を一途に求めてしまう様子は静かに胸が締め付けられ、主人公2人を取り巻く仲間やマティアスの恋人、周囲の人々が薄々彼らが思い合っている事に気づきながらも核心に触れる事なく2人の行く末を見届ける様子はとても優しく心揺すぶられるものでありました。

オーストラリアへ旅立ち、マキシムがそこで働くために必要な父の推薦状をマティアスは渡さなかったり、幼い頃にマティアスが描いた2人の絵を偶然見て涙するマキシム。そろそろ旅立ちの時間、外で待っている友人の車へと家を出ると……と、ラストシーンまで終始核心には触れず、言葉にする事もなく2人がこの先にどういう選択をするのかも観るものに委ねられる。

性格も育った環境も見た目も”青と赤”の様に対照的なマティアスとマキシム。お互いが不器用に、でも真っ直ぐに強く惹かれ合う姿は甘酸っぱくセンチメンタルでほろ苦い。セクシュアリティーの枠に縛られない美しい愛の物語を是非、劇場で。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
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テラシマユウカ

テラシマユウカ、月ノウサギ、ナルハワールドの3人からなるアイドルグループ、PARADISESのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、2020年4月からはグループが分裂。PARADISESのメンバーとして活動中。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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