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StoryWriter

あけましておめでとうございます!
テラシマユウカです。

お正月はいかがお過ごしでしたでしょうか?

1月1日が金曜日で新作が沢山公開になったこともあり、私は年明け早々に映画初めをしてきました。

2021年、コロナで先行きが不安でまた一年前と同じように色々なエンターテイメントが奪われてしまうのではないかと気分が落ち込んでしまいそうになりますが、心身ともに健康でただ笑って過ごせたらいいなと願っています。

今年も多くの素晴らしい映画との出会いを楽しみに生きていきます。

2021年も『今日はさぼって映画をみにいく』、日進月歩でステップアップしていけたらと思いますので、何卒宜しくお願い致します!

Vol.81『Swallow/スワロウ』

☆4.0/☆5.0点中

公式サイト:http://klockworx-v.com/swallow/

 

完璧な夫、美しいニューヨーク郊外の邸宅、ハンターは誰もが羨む暮らしを手に入れた。ところが、夫は彼女の話を真剣に聞いてはくれず、義父母からも蔑ろにされ、孤独で息苦しい日々を過ごしていた。そんな中、ハンターの妊娠が発覚する。待望の第一子を授かり歓喜の声をあげる夫と義父母であったが、ハンターの孤独は深まっていくばかり。ある日、ふとしたことからハンターはガラス玉を呑み込みたいという衝動にかられる。彼女は導かれるままガラス玉を口に入れ、呑み下すのだが、痛みとともに得も言われぬ充足感と快楽を得る。異物を“呑み込む”ことで多幸感に満ちた生活を手に入れたハンターは、次第により危険なものを口にしたいという欲望に取り憑かれていく…。

 

主演かつ製作総指揮を務めたヘイリー・ベネットによる、異食症をテーマとした、生きづらさを抱えるひとりの人間の美しくも恐ろしく衝撃的なスリラー。

監督カーロ・ミラベラ=デイヴィスは、祖母が強迫性障害により手洗いを繰り返すようになったという実際のエピソードから、結婚生活のストレスにより孤独に息苦しく日々を過ごす主人公が、異物を呑み込むことで自分を取り戻していくというショッキングな物語を描き出しました。

父親の会社で最年少で常務取締役になった夫、金持ちの義理の両親、ガラス張りの大豪邸。

一見、ガラス張りの無機質な大豪邸や冷たい空気感、息の詰まる閉塞感など描写の雰囲気が似ており、束縛の激しい夫から解放されようと逃げる女性の物語を描いた「透明人間」(2020年7月公開)を彷彿とさせますが、全く違ったものとなっています。

非の打ち所がなく、何不自由ない生活を手に入れたかのように見えるハンターだが、彼女の存在や話に義父母は興味を持たず、ハンターが妊娠した時には彼女の身体は彼女自身のものでは無くなってしまう。やがてビー玉や安全ピン、電池などを呑み込む充足感や、その異物を外に出すことによって伴う痛みで自分自信を取り戻そうとし、次第に彼女が抱えてきた深い心の傷、生い立ちの呪縛が浮き彫りになっていきます。

ハンター演じるヘイリー・ベネットは、生活の中でのほんの些細な出来事から積み重なり自信のなさや耐えかねる孤独感、壊れゆく心の揺れを一瞬の眼差しの歪みによって繊細に語り、声にならぬ心の叫びを訴えかけてくる。

彼女の最初に映る眼差しと最後に映る眼差しの違いは一目瞭然あり、この作品の全てを物語っています。

彩度が高く妖艶で儚い映像美に、随所に潜む異様な質感や冷たさ、ただならぬ存在感を放つヘンリー・ベネットの圧巻の演技に、”呑み込まれ”てみてはいかがでしょうか。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


「今日はさぼって映画をみにいく」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
Vol.46『エディ・レッドメイン特集』
Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
Vol.50『映画と音楽』
Vol.51『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』
Vol.52『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
Vol.53『アングスト/不安』
Vol.54『ANNA/アナ』
Vol.55『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
Vol.56『透明人間』
Vol.57『ダークナイト』
Vol.58『劇場』
Vol.59『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
Vol.60『ダンケルク』
Vol.61『ハニーボーイ』
Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
Vol.64『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
Vol.65『インターステラー』
Vol.66『TENET テネット』
Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
Vol.68『ミッドナイトスワン』
Vol.69『悪魔はいつもそこに』
Vol.70『マティアス&マキシム』
Vol.71『シカゴ7裁判』
Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
Vol.80『ソング・トゥ・ソング』

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テラシマユウカ

テラシマユウカ、月ノウサギ、ナルハワールド、キラ・メイ の4人からなるアイドルグループ、PARADISESのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、2020年4月からはグループが分裂。PARADISESのメンバーとして活動中。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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