こんにちは、テラシマユウカです。
最近はちょこちょこオンライン試写で頂いたものをコラムとして書かせて頂いているのですが、どれも素敵な作品ばかりで家のPCの画面に収まった物語よりも、映画館というシチュエーションでその作品の世界観にどっぷり浸かりたいと欲がでて、劇場公開されてからまたおかわりしてしまうことが増えています。
今週もオンライン試写で頂いた、恋を知らない美しい人魚と心優しくも恋を捨てた男の、儚くキュートな美しい愛の物語をご紹介します。
Vol.86『マーメイド・イン・パリ』
☆4.4/☆5.0点中
公式サイト:https://mermaidinparis.jp/
記録的な雨による大増水で、浸水してしまったパリ。
セーヌ川に浮かぶ老舗のバー“フラワーバーガー”のオーナーの息子で、ウクレレを持って歌うパフォーマー“サプライザー”として働くガスパールは、ある夜、傷を負い倒れていた人魚を見つける。
彼女の名前はルラ。ルラは、美しい歌声で出会う男性を例外なく虜にし、恋に落ちた男性の心臓を破裂させ命を奪っていた。
歌によって人間から身を守ってきたルラは、ガスパールの命も奪おうと歌をうたうが、過去の失恋の経験から、恋する感情を一切捨て去ってしまったガスパールには、その歌声が全く効かなかった。
ルラを懸命に看病するガスパール。その彼の献身的な優しさに、ルラは次第に心惹かれていくが、人魚であるルラは2日目の朝日が昇る前に海に帰らねば、命を落としてしまうという。と同時に、ガスパールの体に異変が起こる。胸がギュッと締め付けられるように苦しいのだ。
そんな中、ルラに夫を殺された女医のミレナがルラを探しあて…。
パリで出会ったふたりは、無事に恋を成就させることが出来るのか−?
恋を知らぬまま、美しい歌声で男性を魅了し、恋に落ちた男性の命を奪ってきた人魚ルラ。失恋から恋を捨ててしまった心優しい男性ガスパール。人間と人魚という交わるはずのないふたりが運命に翻弄されながら紡ぐ切なくもキュートな愛の物語。
主演のガスパール役には、リーバイスやヒューゴ・ボスのモデルとしても活躍し、『パリ警視庁:未成年保護部隊』、『ダリダ〜あまい囁き〜』などに出演しているフランスを代表する人気俳優ニコラ・デュヴォシェル。人魚ルラを演じるのは、『青い欲動』で鮮烈なデビューを果たした新進女優マリリン・リマ。
次世代のティム・バートンと呼ばれるフランスのカリスマアーティスト、マチアス・マルジウ監督が初めて手がける長編実写映画。
まさに”芸術的”な一作であり、監督の類稀なる才能が音楽、映像、脚本、どこをとっても発揮され尽くしています。
オープニングから可愛らしいストップモーションアニメに、飛び出す絵本、魅力的な歌や踊り、個性豊かなキュートなキャラクターたち。緑を基調としたガスパールの部屋のバスルームと、ピンクを基調とした隣人ロッシのバスルーム。劇中の多くのシーンがバスルームを舞台とし、間取りも不思議な形になっており、そこにも監督の芸術へのこだわりが強く見えます。
歌声で相手を虜にし心臓を破裂させてしまう恋を知らない人魚ルラと、優しくも壊れた心を持つ恋を捨てたガスパール。ふたりが徐々にお互いを意識し始め不器用ながら愛し合うまでの純粋な心理描写が繊細に描かれています。
人間と人魚の恋物語といえば、童話「人魚姫」の王子と人魚姫は結ばれず泡になって消えてしまう物語があり、ルラも2回朝日が昇るまでに海に帰らなければ死んでしまいます。
ですが、ただ悲しい愛の物語になるのではなくきっとガスパールとルラにはこれから素敵な未来が訪れるんだろうなと、ラストにまた訪れるアニメーションに、OPからEDまでどこか現実味があるけれど心地良い魔法にかけられたかのような時間に包まれてしまいます。
古くから描かれてきた人間と人魚のラブストーリーに、新鮮味のある儚く幻想的でまるで絵本に入り込んだかのような創造性に満ちた映像美。フランス語の耳触りの良さと、ガスパールの隣人のロッシのコミカルさがまた良い味を出しています。
現代のおとぎ話かのような世界観に一瞬で心を奪われる、恋の美しさを教えてくれる素敵な作品です。
映画『マーメイド・イン・パリ』、2021年2月11日(木)より公開です。
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