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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

ここ1ヶ月ほど自炊を続けているのですが、何気なくこれまで食べてきた料理でも意外と自宅で作ってみると手間がかかったりして、色んな料理をぽんぽん出せるお店ってすごいなぁ…… と改めて飲食店の素晴らしさを思い知らされている日々を過ごしています。

緊急事態宣言が解除されたらすぐに自炊を辞めてしまう気がしますが、ゆる〜く料理を楽しんでいきたいと思います。

今週はそんな食にもまつわる、現代の格差社会を分かりやすく風刺した作品をご紹介します。

Vol.87『プラットフォーム』

☆3.6/☆5.0点中

公式サイト:https://klockworx-v.com/platform/

 

ある日、ゴレンは目が覚めると「48」階層にいた。

部屋の真ん中に穴があいた階層が遥か下の方にまで伸びる塔のような建物の中、上の階層から順に食事が”プラットフォーム”と呼ばれる巨大な台座に乗って運ばれてくる。

上からの残飯だが、ここでの食事はそこから摂るしかないのだ。同じ階層にいた、この建物のベテランの老人・トリマカシからここでのルールを聞かされる……。

1ヶ月後、ゴレンが目を覚ますと、そこは「171」階層で、ベッドに縛り付けられて身動きが取れなくなっていた! 果たして、彼は生きてここから出られるのか!?

 

スペインの新鋭、ガルダー・ガステル=ウルティアの長編初監督作品。

トロント国際映画祭ではミッドナイトマッドネス部門・観客賞を受賞。シッチェス・カタロニア映画祭でも最優秀作品賞を含む4部門での受賞を成し遂げました。

・1ヶ月ごとに階層が入れ変わる
・1つだけ建物内に好きなものを持ち込める
・食事が乗せられて降りてくる「プラットフォーム」と呼ばれる巨大な台座が自分の階層にある間だけ食事が摂れる

というシンプルなルールだけがある不思議な建物。

そんな刑務所のような閉鎖的な空間の真ん中にぽっかりと穴が空いた部屋が何百層も連なる建物に閉じ込められた人々。エレベーターで上の階から下の階へと食事が運ばれ、定期的に階層は変わり、下層であればあるほど残飯を貪ることしかできない。まるで現代社会を風刺したかの様なスペイン発サスペンススリラーとなっています。

設定的にトラウマ映画『CUBE』や『SAW』を彷彿させる作品でもありましたが、建物の中だけを舞台とし、限定されたシチュエーション内で比較的展開が少なく単調だったのでもう少しゲーム性が欲しくなってしまいました。

上層から下層へのヒエラルキーは資本主義の格差社会をストレートに映し出しテーマ性は強く汲み取れますが、後半になるにつれこの建物は一体何なのか?階層が入れ替わる仕組みは? 最下層で何故生きられているのか? 等、伏線が回収されず謎を多く残したまま終わってしまう作品でありスッキリ度は低めでした。

縦構造の格差社会での究極の生き残りサバイバルで露わになる人間の醜さ。今の現実世界も同じで、1ヶ月後にはどん底に落ちているかもしれない恐怖。

今、何階にいるのだろうか?

来月は何階にいられるのだろうか?

受け取り方は自由。

考察するのが好きな人向けの作品です。

映画『プラットフォーム』、2021年1月29日(金)より公開中です。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
Vol.46『エディ・レッドメイン特集』
Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
Vol.50『映画と音楽』
Vol.51『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』
Vol.52『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
Vol.53『アングスト/不安』
Vol.54『ANNA/アナ』
Vol.55『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
Vol.56『透明人間』
Vol.57『ダークナイト』
Vol.58『劇場』
Vol.59『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
Vol.60『ダンケルク』
Vol.61『ハニーボーイ』
Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
Vol.64『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
Vol.65『インターステラー』
Vol.66『TENET テネット』
Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
Vol.68『ミッドナイトスワン』
Vol.69『悪魔はいつもそこに』
Vol.70『マティアス&マキシム』
Vol.71『シカゴ7裁判』
Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
Vol.80『ソング・トゥ・ソング』
Vol.81『Swallow/スワロウ』
Vol.82『ヒッチャー ニューマスター版』
Vol.83『恋する遊園地』
Vol.84『ズーム/見えない参加者』
Vol.85『ダニエル』
Vol.86『マーメイド・イン・パリ』

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テラシマユウカ

テラシマユウカ、月ノウサギ、ナルハワールド、キラ・メイ の4人からなるアイドルグループ、PARADISESのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、2020年4月からはグループが分裂。PARADISESのメンバーとして活動中。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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