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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

皆さんは自分が善いと感じた考えに対してその意志を貫けますか?

主観だけでは視野が狭く、個人的には自分自身テキトーなところがある人間だと自覚しているので、自分の言葉や思考は半分くらい嘘だと思っていた方がなんだか楽な気がしてしまいます。

己の正義を絶対的だという風に振る舞う人もたま〜にいますが、それによって衝突が生じているのを見ると、絶対的正義なんて絶対的に存在し得ないものなのかなと考えてしまいます。

今週はそんな、絶対的な存在とは何か、正義に相反するのは果たして悪であってしまうのか、答えの出ないような事を考えさせられる作品をご紹介します。

Vol.88『聖なる犯罪者』

☆4.3/☆5.0点中

公式サイト:http://hark3.com/seinaru-hanzaisha/

 

少年院で出会った神父の影響で熱心なキリスト教徒となった20歳の青年ダニエルは、前科者は聖職者になれないと知りながらも、神父になることを夢見ている。仮釈放が決まり、ダニエルは少年院から遠く離れた田舎の製材所に就職することになった。製材所への道中、偶然立ち寄った教会で出会った少女マルタに「司祭だ」と冗談を言うが、新任の司祭と勘違いされそのまま司祭の代わりを任された。司祭らしからぬ言動や行動をするダニエルに村人たちは戸惑うが、若者たちとも交流し親しみやすい司祭として人々の信頼を得ていく。一年前、この村で7人もの命を奪った凄惨な事故があったことを知ったダニエルは、この事故が村人たちに与えた深い傷を知る。残された家族を癒してあげたいと模索するダニエルの元に、同じ少年院にいた男が現れ事態は思わぬ方向へと転がりだす…。

 

聖人か? それとも悪人か?

本作が3作目となるポーランド出身のヤン・コマサ監督によるヒューマンドラマであり、ポーランドで実際に起こった事件を基に、過去を偽り聖職者として生きる男を描いた衝撃の実話。

ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』やペドロ・アルモドバル監督『ペイン・アンド・グローリー』と肩を並べ、第92回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネート。

また、2020年3月にワルシャワで行われたポーランドのアカデミー賞とされる”2020 ORL Eagle Awards”では監督賞、作品賞、脚本賞、編集賞、撮影賞ほか11部門を受賞しました。

殺人を犯した青年ダニエルは、少年院で出会った神父の影響で熱心なキリスト教徒となり、神学校に入学することを夢見ていましたが、前科者は聖職者になれないと告げられる。ですが、少年院を出たばかりのダニエルはたまたま司祭服を持っていたことである田舎町で司祭として次第に一目置かれ称賛されていき、物語は動き出します。

犯罪歴を持つ偽司祭であるダニエルが村人たち。信仰によって導いていきますが、この作品において彼が本物の司祭ではないことが村人にバレてしまうか否かという点に関してはまったく重要ではありません。

本物の神父の説教よりも彼の放つ言葉の方が重みを持ち、村人たちの心を動かし精神的に救われていく。ダニエルには人を騙そうという気持ちなどなく、そこにはただ神に仕え、彼の信じる正しい行いを全うしたいという純粋な気持ちだけが存在していました。

“被害者”とされている交通事故により子を亡くした6人の親たちと事故を起こし”加害者”とされている男の妻に対してもダニエルは手を差し伸べますが、そんな中で次第に浮かび上がってくる悪意と嘘の存在。自らを善良だと思い込んでいた6人の親たちも被害者であると同時に加害者でもあり、絶対的なものなんてないのだと気付かされます。

信仰とは一体何なのか? 人間は目に見えてわかりやすく象徴的なものに縋ることでしか物事を判断することが出来ないのだと、絶対的な悪も正義も存在しないのだと、最初から最後まで観る者へ問いかけ、突き放し、試され続けます。

“善”と”悪”、”真実”と”嘘”。人間の持つ両面性の曖昧さを冷たく淡々と映し出した傑作です。

主人公ダニエルを演じるバルトシュ・ビィエレニアは瞳の奥に優しさを感じさせたかと思えば悪魔を宿し、まるで別人かのような表情を魅せる。その目からあなたは何を感じるか。簡単には読み取らせてくれないのもこの作品の見どころのひとつです。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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テラシマユウカ

テラシマユウカ、月ノウサギ、ナルハワールド、キラ・メイ の4人からなるアイドルグループ、PARADISESのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、2020年4月からはグループが分裂。PARADISESのメンバーとして活動中。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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