こんにちは、テラシマユウカです。
みなさんには理想の部屋というのはありますか?
部屋選びをする時に、これだけは絶対! みたいな条件って少なからずあると思うのですが、いざ理想がそろった場所に住んでみるとプラスで「こうすれば良かった……」「ここはいらなかったな……」みたいなポイントって沢山出てきますよね。
個人的にも、今住んでいる部屋は上京してきて2軒目で、ある程度広さもあって新築で、収納スペースが大きかったり、アクセスが最強だったり、当時の私の絶対条件が完全に揃っていてめちゃくちゃに満足しているのですが、強いて言うなら宅配ボックスあるとこにすれば良かった〜なんて欲が出てきてしまっています。
夢見ていた理想を揃えてそれを持続させるのって、生きる中で特に難しいことなのかもしれません。
Vol.91『ビバリウム』
☆3.7/☆5.0点中
公式サイト:https://vivarium.jp/
新居を探すトム(アイゼンバーグ)とジェマ(プーツ)は、ふと足を踏み入れた不動産屋から、全く同じ家が並ぶ住宅地<Yonder(ヨンダー)>を紹介される。内見を終え帰ろうとすると、ついさっきまで案内していた不動産屋が見当たらない。不安に思った二人は、帰路につこうと車を走らせるが、どこまでいっても景色は一向に変わらない。二人はこの住宅地から抜け出せなくなってしまったのだ― そこへ送られてきた一つの段ボール。中には誰の子かわからない生まれたばかりの赤ん坊。果たして二人はこの住宅地から出ることができるのか―?
世界騒然! 精神崩壊!
極限のラビリンス・スリラー。
新居を探す若いカップルが不動産屋に紹介された住宅地は脱出不可能な迷宮だったという、マイホームを持つという夢が、悪夢に変わってしまう、不条理映画『ビバリウム』。
今作を手掛けたのは、カンヌ国際映画祭で話題沸騰となった新鋭ホラー監督ロルカン・フィネガン。若いカップルを演じるのは『ソーシャル・ネットワーク』主演のジェシー・アイゼンバーグと、『グリーンルーム』などに出演する今後の活躍に注目の女優イモージェン・プーツ。
規則正しく無機質に建物が立ち並び、可愛らしくも不気味なミントグリーン色で統一された空間、同じ形の雲ばかりが浮かぶ絵に描いたような空。かつての理想だった夢の風景は奇妙で違和感しかなく、なんでも揃っているのになにもかもが虚無。映像全てに個人的に好きな世界観がつまっていました。
不動産屋の男の貼り付けたような笑顔や言動の間合いなどの奇妙さ、住宅街の屋根から見る絶望の景色、太陽に向かってひたすら同じ庭を超えて歩き続けるシーン、段ボールで送られてきた異質な子供、どこをとっても気味が悪くて理解不能でどこまでもシュールと謎を終始重ねてくる前半の展開はスリラーとして、これから何が起こるのかと期待が高まるソワソワ感が堪らなく素晴らしかったです。
ですが後半になるにつれてファーストインプレッションにインパクトがあった分、その個性的な設定の中でワンシチュエーションの閉鎖的な景色が続いてしまって変化に乏しく、伏線だと思っていたものがあまり回収されぬままでその後の展開もなんとなく読めてしまい、捻りがもう少し欲しかったなと感じてしまいました。
この映画がなにを伝えようとしているのか、良い意味で意味不明な箇所が多く、結局何もなかったように思えてきてとても難解な作品ですが、郊外に家を持ち子供が産まれ、一見理想的な状況の中でも、毎日どこにも行かずにただただ同じ景色の中で同じことの繰り返し。夫は家事育児に興味を示さず仕事に忙しく、妻は次第に精神的に疲弊して擦れ違っていく様子は結婚生活の理想と現実を風刺しているかのようでした。
タイトルでもある『ビバリウム』とは、”生き物の住む環境を再現した空間”を意味しているそうですが、冒頭に現れるカッコウの性質を比喩したストーリーであり、初めにジェマが少女に説いた言葉通り、我々が生きる現代社会の問題を”自然の摂理”に投影させて描き出しているのもしれません。
終始独特な雰囲気が漂い、エンドロールが流れる時間のなんとも言い表し難い感情や、何が起こったのか考えてもまた振り出しに戻ってくる感覚は、ハマる人はめちゃくちゃにハマる見応えのある作品です。
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テラシマユウカ
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