「人生やり直したい」と思ったことはありますでしょうか?
私は何か後悔してしまった時、ママのお腹の中から出直したいと頻繁に思ってしまいます。
ですが、いざ後悔があったその1日をやり直せて、自分が失敗した部分をクリアできたとしても新たに不服な点が登場したりして理想通りの完璧な1日にはならず、結局またやり直したいな〜となってしまう気がします。
後悔しない様に生きる事は大切ですが、後悔があるからこそ前に進めるし、もっとこうしたい!なんてチャレンジ精神が生まれているんだろうなと感じます。
過ぎた時間には戻れないからこそ、明日が愛しく思えるし、その場で初めて直面する出来事や一度きりの感情だったりを大切にしたい。今週はそんな、明日への元気をくれる映画をご紹介します!
Vol.95『パーム・スプリングス』
☆4.3/☆5.0点中
公式サイト:https://palm-springs-movie.com/
https://www.youtube.com/watch?v=tugkReK45P4&t=1s
舞台は砂漠のリゾート地、パーム・スプリングス。
妹の結婚式で幸せムードに馴染めずにいたサラは、一見お調子者だが全てを見通したようなナイルズに興味を抱く。いい雰囲気になる2人だが、謎の老人が突如ナイルズを襲撃に!負傷したナイルズは近くの奇妙な洞窟へ逃げ込んでいく。ナイルズの制止を聞かずサラも洞窟に入ってしまい、一度眠りに落ちると結婚式の日の朝にリセットされる“タイムループ”に閉じ込められてしまった!しかもナイルズはすでにループにハマっていて、数え切れないほど同じ日を繰り返しているという。
2人で過ごす無限の今日は最高に楽しいものに思えたが、明日がこない日々は本当に大切なものを気づかせていく。果たして2人は、永遠に続く時間の迷宮から抜け出し、未来を掴むことができるのか!?
“毎日”が退屈な全ての人へ贈る、”明日”を生きるためのハッピームービー!
砂漠のリゾート地での結婚式を舞台に11月9日をひたすら繰り返すタイムループに陥り、永遠に続くバカンスを呑気に過ごしている主人公のナイルズと、突如ループに巻き込まれてしまったサラの2人が織りなすタイムループ・ラブコメディ。
タイムループにラブコメ、数多の映画作品で用いられた王道の題材でストーリーを走らせながらも、終始ゆる〜い空気感で日常の大切さを気づかせてくれる、一風変わった斬新な作品となっています。
本作の監督を務めるのは、長編映画初監督のマックス・バーバコウ。
主人公ナイルズには「ブリグズビー・ベア」のアンディ・サムバーグ。ヒロインであるサラは「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のリスティン・ミリオティ。
そして突如として現れ弓矢で主人公を殺しにくるおじさんことロイをJ・K・シモンズが演じました。
「ハッピー・デス・デイ」や「恋はデジャ・ヴ」、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」などといった他のタイムループ作品とは違った雰囲気を作り出したのはアンディ・サムバーグ演じるナイルズの存在がキーとなっています。
物語の始まりからループの渦中にいる状況であり、そんな日々から抜け出そうともせず、どうせならお気楽にハッピーに過ごそうとヘンテコなダンスを踊り出す、ノリのいい彼の演技とハワイアンな音楽が相まって『パーム・スプリングス』の特徴的な心地よさを作り出しています。
今日が終われどまた同じ日が始まる世界に閉じ込められ、こんな人生は嫌だとサラは結婚式場から逃げたり自ら命を絶ったりしますが、目覚めればまた同じ日の始まり。どんな事をしても、どんなに頑張っても、お金を使おうが人を轢こうが元通りになってしまう何も残らない世界で開き直った2人は、毎日童心を取り戻したかの様に無邪気に、時にブラックジョークを織り混ぜながら楽しく遊び始めます。ループすることで知る事実に声が思わず吹き出すほど笑ってしまったり、時に生々しく、時に切ないことも知ってしまったり、タイムリープだからこその醍醐味も盛りだくさん。
ずっと同じ”今日”を繰り返していてもいいと思わせてくれながらも、やがて気楽に生きていくだけでなく、昨日までのこと、明日からのこと、仕事や人間関係への不安も抱かずに何度も同じ日を経験することによって、今まで見えなかった様な問題に気づき、目が覚めれば何もかもが無意味になってしまう世界を生きるなかで誰を、どんな事を大切にすべきなのか、孤独や愛について、今一度向き合い、観客へも深い問いを投げかけてくる。
誰もが沢山の人と関わる中で、ああ言えばよかったとか、こんな事すべきじゃなかったとか、今日をやり直せたらと思うことなんて度々あるはずです。
コロナ禍で自粛が求められ人と人との関わる時間も以前と比べて減ってしまった世界ですが、世界が変わり果ててしまうまではもっと人との関わりで失敗をしたり、後悔してしまう事だって沢山あったはず。そんな、やり直せない事があるからこそ愛しい日々がきっとあっただろうなと、タイムリープでなくともいつも来ていた”明日”が来なくなって新たに気づけたこと、感じたことが沢山あります。
「1人で生きるより、2人で死んだ方がマシ。」というナイルズの言葉。
ただひたすらに11月9日を繰り返し続けた彼が、儚いかもしれない未来へと変化を望んだ意思であり、明日が来ることが怖いと感じてしまうこともありますが、それでも進まなければ新しい自分にも新しい出会いにも、たった一度きりの特別な感情や出来事にも巡り会えない。
『パーム・スプリングス』は、明日を迎えられることがどれだけ特別で素晴らしいことなのか、そして日々の生活の中での希望を教えてくれる、素晴らしい作品です。
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