watch more
StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

紫陽花が咲く季節になり、ふと街中で足を止めてしまう瞬間が多くなったと感じるこの頃です。

梅雨は憂鬱ですが、実家の玄関先に毎年咲く紫陽花のことを思い出すとちょっとだけ気持ちがマシになる気がします。

子どもの頃は母親が花を育ててることに関して何が楽しいのだろう? と疑問を抱いていましたが、一人暮らしを始めて3、4年目あたりから部屋に花を飾るようになり、少しずつそんな気持ちを理解できるようになったのかもしれません。

Vol.103『猿楽町で会いましょう』

☆4.3/☆5.0点中

公式サイト:http://sarugakuchode.com/

 

駆け出しのフォトグラファーの小山田は、撮影で読者モデルのユカと出会う。
ピュアなユカに惹かれ、彼女を被写体に次々と作品を撮り始める小山田。
ユカに惹かれた小山田が猿楽町で撮った写真は周囲に認められ、やがて二人は付き合うことに。
次第に距離を縮めていく二人。
しかし決してユカは小山田を自分の部屋に入れようとはしなかった。
ユカは決して小山田に体は許さない。
そして一枚の写真が二人の運命を変えることに。

 

まだこの世に存在しない映画の予告編を制作し、グランプリは制作費3000万円で本編を映画化する「未完成映画予告編大賞」。応募のルールは”3分以内の予告編映像”と”作品の舞台となる地域名をタイトルに入れる”ことの2つ。200以上もの応募作から満場一致で第2回グランプリを獲得した、児山隆監督の『猿楽町で会いましょう』が映画化。

『劇場版 おっさんずラブ』『殺さない彼と死なない彼女』など注目の若手実力派俳優の金子大地演じる駆け出しのフォトグラファー・⼩⼭⽥と、今作が映像デビュー作品である石川瑠華演じる純朴そうに⾒えて嘘だらけのヒロイン・ユカ。

渋谷・猿楽町を舞台に男女の夢と欲望が交錯する、青春とは一味違い人間の痛々しさが突き刺さる衝撃のラブストーリーとなっています。

chapter1:2019年6月~2019年7月
chapter2:2018年3月~2019年7月
chapter3:2019年8月~

と3部構成に分けられるストーリー展開が巧妙で、関わりのないように見えていた人間達がどのように交わっていたか、チャプターを追うごとに自然と解き明かされる構成は単純ながらも面白く、どことなく心地よさを感じました。

小山田とユカ、元カレ、交錯する恋愛模様とそれぞれの人間性に加えて、鳴かず飛ばずのカメラマンとモデルで映し出されるシビアな世界。

先の見えない将来と、何度も失敗を繰り返し「自分とは」と問い続け、どんな関係性であれど他人の全てを知ることはできず踏み込めず、激しくぶつかり合い揺れ動く感情はなにもかもが人間のリアルであり、自分の都合の良いように誤魔化しながら空回りを続けていく痛々しさは凶器のように観る者の胸を抉ります。

夢を追うことの美しさや努力を続ければ報われるとかそんなキラキラしたものなんてなくって、嘘に嘘を重ね偽りの自分に塗れたユカを見ていると息が詰まる思いになってしまいますが、自己防衛ばかりでどうしようもなくて素直にもなれず、やり方は間違い続けているけれど今を必死に生き抜こうとする様子はなんだか気持ちが分かる面もあったり、自分の痛いところを突かれてるような気がして、嫌いにはなれない存在でした。

石川瑠華さん演じる田中ユカのごく自然で情熱に溢れてるわけでもなく、なんとなくふわっと浮世離れしていて、その奥に複雑な心の内側が見え隠れする絶妙な空気感と瞳にとても心惹かれ、いつまでも余韻が尾を引き続けています。

「自分の色」が分からなくて、見つけたくて、でも知りたくない。

自分も抱えているであろうドロドロした歪なところを全て集めてぎゅっとして投げつけられたような感覚になり、そして、どうかみんな幸せになってほしいと願ってしまう映画でした。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


「今日はさぼって映画をみにいく」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
Vol.46『エディ・レッドメイン特集』
Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
Vol.50『映画と音楽』
Vol.51『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』
Vol.52『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
Vol.53『アングスト/不安』
Vol.54『ANNA/アナ』
Vol.55『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
Vol.56『透明人間』
Vol.57『ダークナイト』
Vol.58『劇場』
Vol.59『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
Vol.60『ダンケルク』
Vol.61『ハニーボーイ』
Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
Vol.64『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
Vol.65『インターステラー』
Vol.66『TENET テネット』
Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
Vol.68『ミッドナイトスワン』
Vol.69『悪魔はいつもそこに』
Vol.70『マティアス&マキシム』
Vol.71『シカゴ7裁判』
Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
Vol.80『ソング・トゥ・ソング』
Vol.81『Swallow/スワロウ』
Vol.82『ヒッチャー ニューマスター版』
Vol.83『恋する遊園地』
Vol.84『ズーム/見えない参加者』
Vol.85『ダニエル』
Vol.86『マーメイド・イン・パリ』
Vol.87『プラットフォーム』
Vol.88『聖なる犯罪者』
Vol.89『ベイビーティース』
Vol.90『花束みたいな恋をした』
Vol.91『ビバリウム』
Vol.92『ガンズ・アキンボ』
Vol.93『トムとジェリー』
Vol.94『BLUE/ブルー』
Vol.95『パーム・スプリングス』
Vol.96『街の上で』
Vol.97『ザ・スイッチ』
Vol.98『SNS-少女たちの10日間-』
Vol.99『ノマドランド』
Vol.100『ファーザー』
Vol.101『くれなずめ』
Vol.102『クルエラ』

「それでも映画は、素晴らしい。」のバックナンバーも合わせてチェック!!

【連載】Vol.1『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.2『ライフ・アクアティック』(推薦者:渡辺淳之介)
【連載】Vol.3『そこのみにて光輝く』(推薦者:ココ・パーティン・ココ)
【連載】Vol.4『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(推薦者:沖悠央/SCRAMBLES )
【連載】Vol.5『ライフ・イズ・ビューティフル』(推薦者:GANG PARADE マネ 辻山)
【連載】Vol.6『ヘアスプレー』(推薦者:花柄ランタン ぷき)
【連載】Vol.7『はじまりへの旅』(推薦者:ランタン 村上真平)
【連載】Vol.8『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(推薦者:松隈ケンタ)
【連載】Vol.9『シカゴ』(推薦者:ユイ・ガ・ドクソン)
【連載】Vol.10『トイ・ストーリー3』(推薦者:T-Palette Records 古木智志)
【連載】Vol.11『青春の殺人者』(推薦者:岩淵弘樹)
【連載】Vol.12『時計じかけのオレンジ』(推薦者:BiS ムロパナコ)
【連載】Vol.13『トレインスポッティング』(推薦者:蒲鉾本舗高政高政社長)
【連載】Vol.14『ドリーマーズ』(推薦者:美容室code+LIM ワタロー)
【連載】Vol.15『トゥルー・ロマンス』(推薦者:UGICHIN)
【連載】Vol.16『メリー・ポピンズ』(推薦者:ヤママチミキ)
【連載】Vol.17『ハイスクール・ミュージカル』(推薦者:アヤ・エイトプリンス)
【連載】Vol.18『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(推薦者:平賀哲雄)
【連載】Vol.19『天使にラブ・ソングを…』(推薦者:テラシマユウカの母)
【連載】Vol.20『少年は残酷な弓を射る』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.21『ローマの休日』(推薦者:エビナコウヘイ)
【連載】Vol.22『湯を沸かすほどの熱い愛』(推薦者:セントチヒロ・チッチ)
【連載】Vol.23『あの日々の話』
【連載】Vol.24『万引き家族』(推薦者:ハルナ・バッ・チーン)
【連載】Vol.25『クレイマー、クレイマー』(推薦者:テラシマユウカの父)
【連載】Vol.26『プラダを着た悪魔』(推薦者:LEBECCA boutique ブランドディレクター、赤澤える)
【連載】Vol.27『ザ・マジックアワー』(推薦者:ごんちょく)
【連載】Vol.28『下妻物語』(推薦者:キャン・GP・マイカ)
【連載】Vol.29『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(推薦者:ナルハワールド)
Vol.30『ホラー映画オススメ10選』
vol.31『きみに読む物語』(推薦者:ももち)

テラシマユウカ

テラシマユウカ、月ノウサギ、ナルハワールド、キラ・メイ 、ウタウウタ、キャ・ノンからなるアイドルグループ、PARADISESのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、2020年4月からはグループが分裂。PARADISESのメンバーとして活動中。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

テラシマユウカ Twitter

PICK UP