皆さんには、「この人の演技に心を奪われてしまった」という瞬間はありますか?
私は小学生の頃あまりテレビを観なかったのですが、たまたま親と観ていたドラマ『チームバチスタの栄光』に麻酔科医役として出演していた城田優さんの演技に、幼いながらも衝撃を受けたあの瞬間がいまだに鮮明に思い出せます。
そんな瞬間ってなかなか出会えるものでもなく、ずっと大切にしていきたい感情だなって思います。
最近、ある邦画をみてからずっと頭から離れず思い出してしまう演技をする方に出会ってしまったのですが、今週はその方が主演を務めている最新作をご紹介します。
Vol.118『うみべの女の子』
☆3.8/☆5.0点中
公式サイト:https://umibe-girl.jp/
海辺の小さな街で暮らす中学生の小梅(石川瑠華)は、憧れの三崎先輩(倉悠貴)に手ひどく振られたショックから、かつて自分のことを好きだと言ってくれた内向的な同級生・磯辺(青木柚)と関係を持ってしまう。
初めは興味本位だったが、何度も身体を重ねる二人。やがて、磯辺を恋愛対象とは見ていなかったはずの小梅は、徐々に磯辺への想いを募らせ、一方、小梅に恋焦がれていたはずの磯辺は、その関係を断ち切ろうとしてしまう。二人の気持ちはすれ違ったまま、磯辺は過去にイジメを苦に自殺した兄への贖罪から、ある行動に出ることとなる……。
『ソラニン』『おやすみプンプン』『素晴らしい世界』など大ヒット作を次々と発表し、『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』が第66回小学館漫画賞を受賞し、更なる活躍が期待される漫画家・浅野いにお。
思春期のセンシティブな題材に真正面から挑んだ作品として、2009年に発表した『うみべの女の子』 がソラニン以来11年ぶりに実写映画化されました。
主人公の小梅役と磯辺役は、浅野いにおもオーディション審査に参加し、『猿楽町で会いましょう』のヒロインを務めた逸材・石川瑠華と『14の夜』や『暁闇』など子役から話題作でキャリアを重ねてきた青木柚の大注目の2人に決定しました。
海辺の田舎町を舞台に、恋と性にもがき悩む思春期の少年少女の、自分の中だけでは処理できず言葉にも言い現し様のない複雑な感情が素晴らしいほど繊細に描かれています。
大人になればなるほど忘れかけてしまう、些細なことでもあの頃には堪えきれないほど大きな心の揺れであった切なく苦しい青春の1ページが大人になってしまった私たちの胸をキュッと締め付けます。
『猿楽町で会いましょう』を観た人であればもう忘れられなくなってしまったであろう”あの子”。
みればみる程、ヒリヒリと擦りむけた様に胸が痛んでしまうけれど、でも目を離したくない。そんなイタい女の子を演じれば右に出る者はいないであろう石川瑠華さんは、またもや私たちの脳内にべったりとこびりつく様に存在を残していく。
正直、自分が共感する部分はあまりないけれど、これ程に心を鷲掴みされる魅力的な彼女に出会ってしまったからにはもう目を離したくないと願ってしまいます。
無知だからこそ欲望に対して素直であり、好きでもないけれど身体を重ね、少しでも思春期のなんとも言えない満たされない隙間を埋めようとする。
そんな特有の青臭さから生み出される痛みに、忘れかけてしまっていた想いが膨らみ、なんだかそっと愛おしくなる物語です。
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