いつ頃、どんなきっかけでLINEやTwitter、Instagramを始めたんだっけ? と掘り返しても戻ってない記憶をたまーに考えることがあります。
幼い頃は、ただ塾で夜遅くなるからと親と連絡を取るためだけに持っていた携帯電話が、いつしか様々なSNSが発達して世の中と繋がっているのが当たり前の日常に変化していました。
同級生たちよりネットに手を出すのが比較的遅かった私は、周りがみんなやっていたブログやTwitterなど未知の世界に飛び込むことに対する面倒臭さと、自分の日常をシェアするという目的に対しての執着のなさに周囲とのギャップを感じていたなぁと微かに記憶が残っています。
月日をかけて、当時異質だったものが今や存在しないなんて考えられない習慣化したものとして強く根付いていることに、文化の発達の凄さを感じつつ、そんなものがまだなかった時代を恋しく思う気持ちもちょっぴり芽生えます。
Vol.130『ボクたちはみんな大人になれなかった』
☆3.5/☆5.0点中
公式サイト:https://www.bokutachiha.jp/
1995年、ボクは彼女と出会い、生まれて初めて頑張りたいと思った。「君は大丈夫だよ。おもしろいもん」。初めて出来た彼女の言葉に支えられ、がむしゃらに働いた日々。1999年、ノストラダムスの大予言に反して地球は滅亡せず、唯一の心の支えだった彼女はさよならも言わずに去っていった――。
志した小説家にはなれず、ズルズルとテレビ業界の片隅で働き続けたボクにも、時間だけは等しく過ぎて行った。そして2020年。社会と折り合いをつけながら生きてきた46歳のボクは、いくつかのほろ苦い再会をきっかけに、二度と戻らない“あの頃”を思い出す……。
さまざまな世代の心を掴み、絶賛された作家・燃え殻のデビュー作品『ボクたちはみんな大人になれなかった』。
ウェブ連載中から話題を呼び、2017年に書籍化されると瞬く間に大ベストセラーとなった半自伝的恋愛小説がついに映画化となりました。
メガホンをとったのは、ミュージックビデオやCMの映像作家であり、今作が長編映画初監督作となる、森義仁。
主人公の”ボク”、佐藤を演じるのは『モテキ』『怒り』などの作品や、映画にとどまらずダンスパフォーマーとしても世界で活躍し、唯一無二の存在感を放つ森山未來。佐藤の21歳〜46歳まで姿を表現者として繊細に演じ分けており、また、”ボク”の初恋の女性かおり役は、数々の映画・ドラマ・CMなどで大活躍中の伊藤沙莉が演じています。
2020年、コロナ禍の現在46歳の主人公”ボク”が、ほろ苦い再会を機に、90年代の「あの頃」を思い出し回想していく青春映画。
46歳の今が結果としてある中で過去にあるその原因を回顧し、観客それぞれへ”オトナになれなかった”何故を問い、原点に立ち帰る物語が描かれています。
仕事はうまくいかず、過去の甘酸っぱい思い出を引きずる日々。フツーじゃないオトナになりたくてがむしゃらに頑張ってきたが、社会と折り合いをつけて生きる現代の姿に、境遇が近い人には共感の深い作品なのではないでしょうか。
普通の仕事、普通に結婚すること、夢を諦め現実を受け入れることが”オトナになる”ということなのだろうか?
“フツー”や”オトナ”の定義とは?
わずか25年の時を経てネットやスマホなどが目まぐるしく発展・普及したことで、人との繋がりは激しく変化し、言葉や心にも変化をもたらしていたことに気づかされる。
移り変わる時代の空気とそこに生きる人々を描きながら、懐かしいあの日、あの街の景色、あの時の感情、ずっと忘れてしまっていたもの全部を思い出させてくれます。
今を葛藤しながら生きる人に贈る、人間讃歌であり、「オトナとは?」を問う物語でした。
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