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テラシマユウカの映画コラム Vol.138『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』

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シンメトリーにこだわりがある。

部屋のインテリアの配置も、洋服のちょっとした折り目も、カバンにものを詰める時も、何気ない文字や数字の羅列にも、生活の端々に左右対称ではないとなんだか落ち着かないこだわりを小学6年生の頃から持っていました。

そんな執着心を密かに隠しながら生きていたなかで、スタンリー・キューブリックやウェス・アンダーソンの映画に出会った瞬間は衝撃的でした。

独創的な世界観の中で一際存在感を放っている1ミリたりとも狂いのない緻密なシンメトリーの映像に、心が震えた記憶があります。

徹底された潔癖的な映像美の追求に、何度この世界で生きたいと願ったことか、数え切れません。

Vol.138『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』

☆4.2/☆5.0点中

https://searchlightpictures.jp/movie/french_dispatch.html

 

物語の舞台は、20世紀フランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部。米国新聞社の支社が発行する雑誌で、アメリカ生まれの名物編集長が集めた一癖も二癖もある才能豊かな記者たちが活躍。国際問題からアート、ファッションから美食に至るまで深く斬り込んだ唯一無二の記事で人気を獲得している。
ところが、編集長が仕事中に心臓まひで急死、彼の遺言によって廃刊が決まる。果たして、何が飛び出すか分からない編集長の追悼号にして最終号の、思いがけないほどおかしく、思いがけないほど泣ける、その全貌とは――?

 

映画・フランス・活字カルチャーへ愛をささげる、機知とセンスに満ち溢れた、ウェス・アンダーソン監督作品。

監督の記念すべき長編第10作目を飾る最新作の舞台は、20世紀フランスの架空の街にある『フレンチ・ディスパッチ』誌の編集部。

仕事中に急死してしまった編集長の遺言により廃刊がきまったフレンチ・ディスパッチ誌。最終号には追悼文と共に、4つの記事が掲載されることに。一体どのような記事が載せられるのだろうか、エピソードが記者の回想で語られる物語です。

ビル・マーレイ、オーエン・ウィルソン、エドワード・ノートン、ティルダ・スウィントン、レア・セドゥ、ウィレム・デフォー、シアーシャ・ローナンといったウェス・アンダーソン映画でお馴染みの顔ぶれに、ベニチオ・デル・トロ、ティモシー・シャラメなど加わり、名優たちと共に作り上げる独自のウェス・アンダーソンワールドへと誘われ、極上の映像体験に酔いしれる。

ウェス・アンダーソンといえば特徴的なシンメトリー構図。

今作はより完璧に近いシンメトリーな映像であり、それによって生まれる圧迫感をカラフルなパステルカラーで中和させています。

登場人物の身に纏う鮮やかな色彩の衣装に、それよりも少しだけ色の濃い背景をおくことによって生み出される濃淡が抜群のセンスであり、場面ごとの統一感を感じさせ、美術館を練り歩きながらじっくりと絵画を眺めている気分が味わえる。

また、ひとつひとつの台詞も詩的であり、発せられる言葉のイントネーションの心地よい耳触りと、字幕で読む独特な言い回しの文字の羅列はまるで、よく映画のワンシーンで目にする、昼下がりパリのカフェのテラス席で詩集を読んでいるかのよう。

物語と、映像と、言葉。一度で全てを理解するのは不可能なくらいの凝縮されたとんでもない濃度の情報がひしめきあっており、ひとつずつどの情報を取り入れるか分けて少なくとも3回は観ておきたいと願ってしまう。

無限に出てくるキャストだが1ピースでも欠けてしまったら歯車が一瞬にして狂ってしまいそうな緻密さと、1ミリたりとも狂いのない映像と色彩は何重構造にもなった時計の中身を覗いたかのように難解で、目がまわる。

完璧すぎる芸術作品に頭の中がトリップし、錯乱した状態から娯楽へと結びつく幸福感は堪らない。

ミニチュアのように作り込まれたウェス・アンダーソンの世界観の住人になりたいと願わずにはいられない。

『フレンチ・ディスパッチ』には映画を観る喜びと興奮のすべてがつまっている。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノンの10人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。 2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、 2020年3月よりGO TO THE BEDSとPARADISESの2グループに分裂し活動開始。精力的にライブを実施し、2021年には両グループ合わせて270本ものライブを敢行。 2022年1月1日、満を持して再結成を果たす。 多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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